第83話 家族たちとクリスマスを
「成樹くんとじゃなくて、いいの?」
「いいの、お母さん」
食材の買い出しを両親にお願いしたあとも、また同じ質問をされてしまったが。
娘にとっての恩人以上に、恋人とのクリスマスを『家族』で過ごすのにわざわざ変更してくれたのが……親としては、少し複雑に思ってしまうのも無理ない。これまでも家族で過ごして来なかったわけではないのに、せっかくの……をいいのかと思っているのだろう。
だからこそ、藍葉は恋人になった成樹を招待したいと思ったのだ。これから先、『家族』と過ごせるようにいっしょがいいのだと宣言しているのと同じように。
「まあ、娘からの提案だと……父さんたちも手伝うしかないかな?」
「……そう、ね?」
父親の方が藍葉への理解が早かったのか、すぐに頷いてくれた。それに相づちを打つかのようにして母も続く。それを見て安心出来たので、杖と手すり棒を持つ手を変え……ゆっくりと、キッチンに向かって歩いていく。
ここ半年、リハビリにも少し力を入れたお陰か。気力もプラスして、以前よりも家の中が歩きやすい気がした。
「おかあさーん、漬け込みのいるものだけ先にしようー?」
「そうね! お父さんと材料運ぶから、道具だけ少し出せそう?」
「やってみるー」
「美晴は成樹くんと仕事なのは仕方ないし、明日来てくれるのを楽しみに待とう」
「ええ」
家族との何気ない会話。これを避けていたのを今更ながら、少し後悔もしたけれど。美晴とのやり取りがきっかけで、成樹とも再会出来た。トラウマを払って、恋人にもなれた。
どちらかというと、両親以上に美晴へのお礼も兼ねたクリスマスパーティーにしたかったのだ。勘のいい兄にはバレてはいそうだけれど、それはそれでいい。左藤にも聞いた、美晴の『モテ度』はなかなかのモノだと聞いてはいても……身内に激甘なところを考えたら、それを『普通』と受け止めていた藍葉自身鈍いと言われて当然。
成樹も似たような箇所が多いので、気づきにくくて普通だ。
そんな功労者のふたりには、小鳥遊家が今年はクリスマスをお祝いしてあげようと意気込んでもいいのではないか。藍葉と成樹のふたりの時間は、これから先いくらでもあると成樹自身が宣言してくれた通り……本当に、問題はない。
父親は少し力仕事になる作業を担当してくれたので、藍葉は母親といっしょに漬け込み作業のいる料理を手分けしてつくることにした。準備しておいて、明日焼けば完成。これもまた、『ポイ活』の宅配レシピに実は入れたいと思っているのは伝達済みなのだ。
「……楽しそうね?」
「うん?」
表情にそれが出ていたのか、母親は久しぶりに嬉しそうな顔になっていた。今日みたいに、両親揃って顔を合わせること自体久しぶりなのに……避けていた藍葉を貶したりしない、優しい両親だったな、と今なら思える。
だから、今は笑って頷くだけにした。言葉にするのはまだまだ恥ずかしい部分が大きいので、ここから少しずつ。
『家族たち』との関係を自分で壊したつもりはないと思っていた。その驕りを、自分自身で『ごめんなさい』と言えるときまで、まだ今の雰囲気を楽しんでいたいのだ。
次回はまた明日〜




