第82話 本当か嘘か
クルスに引き寄せられ、抱きしめられた。
何か言おうとしていたのはわかる。ずっと引きずるようにして避けていた『告白』への返事かなにかなのは、雰囲気ですぐに察せた。反射的に、逃げる行動を取ろうとしたのに先手をとられた。
サナはもう畑まで出て行ってしまったのか室内にはいなく、リーナとクルスしかここにはいない。力を籠めれば逃げれたかもしれないが、しっかりと抱きしめられたときの優しいぬくもりに……どうにも動けなくなってしまう。これは夢なのか嘘なのかと思うくらいの優しさ。
「……逃げんで、リーナ」
「……クー、ちゃん?」
ちょうど肩のあたりにクルスの胸が当たったのか、緊張している鼓動の速さが痛いほど伝わってくる。それくらい、クルスもこのタイミングを逃したくないと思っているのだろう。中途半端に告白を始めたのはリーナの方なのに、答えをくれるのはクルス。
こんな夢のような現実があっていいのかと思うのに、温もりは相変わらず優しい。嘘でないのがはっきりわかったリーナも、背に回せなかった手をクルスの腕に添えた。それだけで、クルスの腕の力が少しだけ強くなる。
「半端な反応して、ごめんな?」
「ち、違う……よ。あたし、が気持ち勝手に押し付けて」
「それでも、や。リーナがおってくれて……心強いと思ったのは一回や二回ちゃう」
「……ほんと?」
「おん。この間の冒険者連中への対応にも惚れ惚れしたわ」
「……えぇ?」
むしろ、逆ではと思うのだがクルスにはそう見えたらしい。少しだけ、照れ笑いすると髪になにかあたたかいものが触れた気がした。おそらく、クルスの唇に違いない。自覚すると、顔に熱が集まっていく。
「最初から頼もしい相手としても見とったし。……ちょい男勝りなとこも、好きや。俺の……恋人になってくれへん?」
「……いいの? こんなじゃじゃ馬が」
「ちょい、元気以外にじゃじゃ馬見えへんよ」
「……ありがと」
今なら、堂々とできると自分から唇に飛びつき。それ以上のことは仕事が終わってからだとお互いに決め合ってから……作業にとりかかることにした。まかないを作っている途中、サナが『ショーユの実』を収穫したのかでキッチンに来たのだが。
『良かったデスね。リーナ』
「……見てた?」
『クルスが来ないので、ちらっとだけデス』
「……クーちゃんはあげないよ」
『リーナがスキなのはスグにワカリマシタ。ワタシはゴーレムデスよ?』
「……そうだった」
『夜はスグに退散シマショウカ?』
「そこは、クーちゃんに……任せたい」
この土地に来る前の、身分の違いについても自分たちのこれまでを何も明かしてはいない。それを簡単に告げると、クルスの場合……さっき結んでくれた関係を無くすようなきらいがありそうで怖かったが。
彼があんなにも求めてくれるのがわかった今なら……少しは、説明してもいいかもしれない。
祖国の崩壊。
託された宝物の種。
そして、復興支援のために、この配置にと分けられた理由。
最後に、サナの管理者でもある『ハル神』と『ナツ神』についても。
本能的に恋愛しても大丈夫だとは神らから言われていても……結ばれたからこそ、秘密にしておくのはよくないと思った。
言える範囲から、ゆっくりゆっくりと進めていこうと決めたリーナはサナから受け取った実を使ってレシピ通りにハンバーグを作り上げたのだった。
次回はまた明日〜




