第80話 果樹園の品種改良
連絡版については、敷地が合併してもそれぞれの管理者に指示が出されるのは相変わらず同じのままだったが。
リーナが言うには、『メモ書き』というのをすればこちらから質問もできるそうだ。今更ながらのスキルかなにかのそれに、クルスは『嘘やろ……』とつぶやくしか出来ない。
「なんも、言われんかったで?」
「うーん。まあ、あたしも落書き程度に書いたら返事できただけだもん」
「ほんなら、なんて?」
「えーっと、『了解』とか『変更しとく』とかかな?」
「……せやったら」
ゴーレムのサナも入れて、三人で分担しなくてはいけなくなった今後のことを考えてみると。
炊き出し用の分担はそれぞれあるとして、『畑』『果樹園』『ゴミ』の方については特に決めていない。気が付いたら、というやり方だと連携が取れていないので、効率が悪いのだ。であれば、クルスの『連絡版』で、ペンを使ってカリカリと書いてみると……。
【Exactly.了解。国民たちへの新たな任務は追って記す。
クルス…畑管理
リーナ…炊き出し以外のまかない担当
サナ…果樹園管理
以上でいいのなら
YES or NO ?
】
「「「……」」」
管理者が少しユニークな回答をしてきたのには、三人とも黙ってしまうのも仕方がないというべきか。もしくは、クルス担当の『女性管理者』だからこその返答の仕方なのか。
今は三人とも共通の敷地にしていても、家が別々だからもともとの担当のままなのかもしれない。とにかく、質問をすれば応えてくれることはわかったので話し合いを始めることにした。
「俺は大丈夫やけど。リーナたちは?」
「あたしもいいよ~」
『問題ナシです。収穫の方はいつでも対応シマス』
「せやったら……」
返事を『YES』と書いておくと連絡版全体が光り、文字があとかたもなく消えてしまった。承認されたということなのだろうか。
「向こうもなにか考えているかもだし? あたしたちも動く?」
「……そんなもんなんか」
「神様だとしても考えない? 一応」
「……神、さまか」
王様よりも上というユニークさが面白くもあるが、たしかに管理者たちも考える時間が欲しいのかもしれない。なら、と、三人はそれぞれ分担された仕事をこなすことにした。炊き出しについては全員なので、つくりたい弁当のメニューを決めてから仕事に取り掛かる。
ちなみに、まかないとやらについてはリーナが炊き出しでも変わりばんこに出したいメニューから適宜選んでくれるようなので、それはとてもありがたかった。今回は『ワフーハンバーグ』というモノらしい。
『ショーユの種。たくさん必要デスか?』
「お願い、さっちゃん」
『リョーカイ』
種族が違えど、女同士という感じから二人は気兼ねない付き合いをしているようだ。クルスの方が少しばかり先なのに、虚しいような寂しい気持ちになるのは『返事』をしていないのに、勝手に思うなと自己嫌悪に陥ってしまう。
しかし、告げようにもサナがなかなかリーナとふたりきりにしてもらえなかったこともあったが。ちょうど今、先に彼女が玄関から出て行ったので、思い切って『あのな!!』とリーナを呼び止めてしまう。
びっくりして振り返ってくれたリーナには、笑顔よりも『怖い』という表情が出ていて……それを安心させてやりたくなり、逃げようと動く前に手を掴んで懐に引き寄せた。数日でも、あの中途半端な時間のやり直しをすべく、きちんと言葉にもしたいが。
受け止めたい気持ちが逸り、思わず抱きしめてしまった。
次回はまた明日〜




