第77話 チェックイン機能にまたひとつ
藍葉はスマホの使い方でひとつ、思いついたことがあった。
正確にはユーザーとしてポイ活を使うにあたっての疑問点に過ぎないかもしれないが。
「スクショを使って、チェックインの固定ポイントとか出来ない?」
その日は成樹の家でご飯を作る約束をしていたので、ふいに思いついたそれを告げたのだが。成樹もびっくりしたのか、グラサンが少し傾いたように見えた。
「なん、それ?」
「えーっと、ほら。ゲームで拠点とかあるように、自宅を固定させるのは今もしているでしょ? それを複数使うの難しいかなって。Wi-Fiとかないと、GPSの通信料すごいからスクショでAIに覚えさせるとか」
「……」
「あ。もしかして、誰かもう提案してた?」
「違う。なんつー、盲点。ほかの連中より何倍もええ発想じゃ……」
「使えそう?」
「スクショじゃと、地図アプリの方が個人情報がまだ漏洩しにくい……。俺のでちょっとやってみるか」
「じゃ、ご飯仕上げても大丈夫?」
「すぐ終わるき。はよ、食いたい」
「はーい」
開発部門担当者が近くにいると、言いやすいことも言えるもんだと思った。発想力はともかく、実行力がすぐにあるのも成樹の利点だ。藍葉はふいに思いついたことを言っただけなのに、どうやら意外性があったのか役に立って嬉しい。
今日の夕飯は成樹のリクエストで『揚げだし豆腐』なので、揚げ物に注意する以外はそこまで難しくない。杖を滑らせないように注意して、脇に固定させるのも慣れたものだから自宅よりは慎重に作るくらいだ。
「よっし。こんなもんか」
そして、ものの数分くらいの感覚で試作が出来上がってしまうのも、またすごいとしか思えない。
料理も出来たことを告げれば、成樹がトレーに乗せたものを順番にローテーブルに置いてくれた。出来上がった料理を見て、すぐに『美味そうじゃ』と言ってくれる優しい目がとても愛おしい。
まだ数回しかここで料理していないが、もう少し凝ったものも作れるようになりたいと思うくらい作り甲斐がありそうだ。
「もう出来るの?」
「食べる前に、ちょい実行してみよか? 藍葉の端末限定にアプデしてみんしゃい」
「はーい」
分単位もかからずに更新が終わり、まずは地図アプリを連携させて開く。そして、成樹の家にチェックポイントのピンを立てたら、普通にスクショ。それをポイ活アプリの方に登録させて、小鳥遊家との距離が出現する。
「藍葉んちとの距離が出たじゃろ?」
「ここを……下にある『回収BOX』って押せばいいの?」
「ん」
言われた通りに押してみると、駅距離が数駅くらいなので1500ptが加算された。バグに見えた高速道路の各名所がいっしょくたに出たときよりは断然マシな数値なので、少しほっと出来た。
「これなら、ほかのモニターも安心して使えるんじゃないかな? もうちょい贅沢言うなら、好きな風景とかを画像登録したときの……えーと、カーナビの履歴とか?」
「車使うやつは連携出来てそれも面白いな? 男やと特にそうじゃろ」
「シゲくんがまず試し?」
「そうじゃな。藍葉とどっか行くときまでに何度か試すわ。……しっかし、藍葉の発想力には脱帽じゃ」
「逆の発想ってわけじゃないけどね?」
そこから夕飯が冷めないうちに食べ始めたが、今日も今日で美味いと成樹はきちんと料理を手放しで褒めてくれた。あと、クリスマスは今年どうするか聞かれたときに、お互いしまったと思ったことがある。
藍葉の足の手術が十二月に入ってから、執刀医との受診が増えることが決まったのをふたりそろって忘れていたのだ。
「今年だけちゃう。俺には藍葉だけじゃ。入院中もお見舞いたくさん行くからな?」
「……うん」
悲しいクリスマスにならないように、そこはほかの患者を気遣っての個室プランをわざわざ打ち合わせしてくれたほど。本当に、いい彼氏を持てて幸せだと思えた。
次回はまた明日〜




