第76話 我は『ハル』でもなく『ナツ』
ファーム敷地を共有すべく、ひとつ加わった話せる『ゴーレム』と認識されている『サナ』。
不明な点が多過ぎるゴーレムなのは当然のこと。美晴を連絡版の管理者に指定したのが、サナ自身で。彼女がこのファーム運営の裏業務を担当している『ナツ』神そのものなのだ。
意識だけをゴーレムの『サナ』に繋げ。本体はファームの地中奥深くに潜り、宝の『種』たちから養分を得ることで復活のタイミングを狙っていた。
『ハル』神がいくら表側の狭間になる『関所』で自分を探そうにも見つかるわけがない。『ナツ』の象徴でもある『蝉隠れ』のように何万年分の栄養を得ることで、地中に出て国の栄華を再生していく。
この『コロニー』とも言える『異世界ファーム』はそういう場所なのだ。相対する男女の『神』が別々に仕事を担当し。自分たちが穏やかに過ごせるまでに、外殻も内殻も整えていくのが『仕事』。
決して、地球の『コロニー』を勝手に壊したりとかそういうわけではない。あのコロニーは『何度目かの終わり』が来ただけなのだ。次の始まりを導くのに、『ハル』『ナツ』のような担当区域が、別次元で『コロニー』の育成運営を担当している。これこそが、次世代に起きる『世界災害』と同等の被害なのだと……誰も彼もがわかっていない。
絵空事、預言の無駄などと、探る者はいても実行できる存在が『人間』で担当を割り振るのが難しい。可能にしたのが、小鳥遊兄妹以外に『加東奈月』くらいだ。
(……サナの中で間接的に見てきたけど。ハルお兄ちゃんの妹と弟そっくり)
別のコロニーで生活しているらしい彼らを思い出すが、次にいつ会えるかの約束はしていない。『コロニー同士』の接触は『異世界ファーム』の中がひとつの『国』に発展するまで会えないと規約をつくったのが自分たちなのだ。
『ハル』神がもうそろそろこちらに近づいてくる頃だろう。『リーナ』と『クルス』が地球側の『彼ら』と同じ関係になるのも時間の問題。その繋がりが『恋人』という明確なものになれば……次は神側の自分たちとて同じだが。
(コロニー全体の統括者、『加東奈月』の肉体改造計画と見せた『疑似コロニーの発展計画』。これを成功させないと、地球の表面的なダメージは日本壊滅以外にも多数出るでしょうね……)
『クルス』の管理者である藍葉が愛読している『CCクロニクル=バースト』や『スカベンジャー・ハント』の電子書籍。大幅に脚色はしているが、あれが『未来予知』に関するものだと知れば……彼女たちは耐えられるだろうか。『恋人』たちの覚悟を知りながらも、『ひとり』でしばし待機することに耐えられるか。
成樹らの別事業であるVRMMMOのそれがコロニー開発部門だと、『異世界ファーム』では誰も知り得ない。藍葉を除くほかのモニターたちには既に指示され、異世界ファーム内でそれらしく巻き込んでいるのも気づいていないのだ。
サナだけは、昨日の冒険者の騒ぎで『混乱者』たちがいるのは気づけたが、助はしなかった。体は再生素材にリソースしようにも、意識体だけは自分たちでなんとか確保しなくてはいけないからだ。
今日は今日で、また炊き出しの弁当を作っていると侵入の気配があったのでリーナかと思いかけたが。玄関口にいたのは、歯を見せながら笑う青年が一人。
「よっ。それ使って『起きてた』のかよ」
『……誰、デスか』
「わざとらしくすんなよ。愛しの俺が来てやったのに!!」
『リーナが来たら説明しにくいです。一端出直してください』
「けちんぼ。ま、いいぜ? 管理者の連中にはアップデートの連絡しといてやる」
『ハル』神……本来の『サナ』だった別次元の『美晴』は上機嫌で帰っていったが。サナの中の『ナツ』神は、別次元の自分との情報交換がまったく出来ていないので『起きてくれ』と祈るしかない。
現実側では、特にこころとか魂のダメージが大きい時ほど、こちらとの情報をキャッチ出来ないのだ。藍葉もだが、美晴がその中でもまだマシなパターンだったくらいに。
『……とりあえず、こっちではサポートしか出来ないわよ』
片言をやめてしまうくらい、大きなため息が出てしまうのも無理なかった。
次回はまた明日〜




