第62話 宅配弁当の監修
『異世界ファーム』自体はバグの修正が無事成されたことで、通常運営は問題なく出来そうだった。
「じゃあ……次は、衣食をもう少し整えるところからかな?」
それこそ昔、『アバター』育成のためだけのPC版ゲームが盛んだった時代。藍葉は美晴や母とかのそれを横で眺めているだけだったので、『面白い』と思う程度ではあったが。
そのシステムを、今ではAIを通じて好みのアバター作成するゲームがアプリを含めて多く存在している。このアプリにはまだその作成を組み込んでいないので、大学に復帰できるまで出来る範囲をすぐに対応した藍葉は。
冬服の適当なラインナップを成樹に転送し、女性ものは藍葉が大雑把に見繕ったことで成樹からは男性ものを送られた。それぞれ、実は『隣同士』のサーバーに位置させていたことにはびっくりしたが……成樹だと知らずにチャットしていたことには、知ってから恥ずかしくなった。
そこはさておき、恋人関係抜きに打ち合わせを頻繁に繰り返して『衣装』についてのミッションを組み込んでもらい。
藍葉は藍葉で、また別の仕事を美晴経由で頑張ろうとした。
「ほ~? 美味そうやな?」
「だいたい、三か四つくらい種類があると飽きが来ないと思うんだよね?」
美晴の契約先のひとつに、『宅配弁当』を実際に作成可能とする業者があると知ったときは。栄養士の資格は通信で取るにしても、実際に『作成』するとなると伝手もなにもないのでどうしたものかと思ったが。
薄味よりも、『今こう言うのが食べたい』を盛り込んだ宅配弁当の監修に取り組んでみたかったのだ。ちょくちょく広告CMにあるようなこれが、ブランドのひとつになれば藍葉のように炊事が得意でなくてもレンジさえあれば簡単に温かいご飯を食べられる。
コンビニやチェーン店で、ゲームとのコラボメニューがあるように。このポイ活で作らせた『自分のレシピ』が実現されれば、課金システムに組み込むのも有りではないかと思ったのだ。
ちなみに、今回依頼したのは『唐揚げ定食』『塩サバ定食』『クリームコロッケ定食』『グラタン』といった感じだ。細かいレシピについてはプロに任せ、大雑把なレシピの書き出しを藍葉がしただけだが……容器とフィルムが再生素材だと思えないくらいにいい出来栄えでしかない。
「よ。お疲れさん」
そして、試食会に成樹を呼ばないわけがない。スケジュールを立てて今日到着に指定したため、昼間から小鳥遊の家で試食会をすることになったのだ。
「シゲくん、すっごくいい感じだよ!」
「中小企業じゃけど、それなりに人気のとこだからな?」
「藍葉~。一個ずつ温めるんか?」
「そうだね。お兄ちゃん、お願い」
わざわざ進んで調理するなど、よほどお腹が空いているのかと思えば……成樹が、軽く肩を抱いて引き寄せてきたため、そこで理解した。悪友と妹のいちゃいちゃは目に毒なので見たくなかったのだろう。
「体調なんともないか?」
「うん。薬も大丈夫。……毎回聞くね?」
「当り前じゃ。大事な彼女のこと心配するし、ファームは俺んとこAIに任せきりじゃからな」「サポート、頑張るよ」
「お互い様じゃ」
ひとつひとつ、ポイ活アプリに紐づけ出来る『事業』や『プラン』を組み込んでいけれるのに、お互いの仕事をがんばるしかない。ハグ以上の接触は美晴が居るのでやめにしたが、奥からレンジの音が聞こえてきたのでそれまでにした。
取り分けてひと口ずつ食べながら、メモは藍葉がタブレットに記入するなどとして本格的にレビューを書き込んでいくが。この仕事がファームの方へ多大な影響を起こすとはこの時誰も知らないでいた。
次回はまた明日〜




