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愛される資格なんてないのに〜無自覚な元妖精女王は、前世の騎士に溺愛される〜  作者: 心音瑠璃


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19/27

19.

「シエル。申し訳ないけれど、私が眠ってしまっている間に一体何が起きていたのか、説明してくれるかしら?」


 私の言葉に、シエルは「はい」と頷くと、嬉々とした表情で語り出した。

 嬉しそうなシエルとは対照的に、私は聞くにつれて今自分が置かれている現状に頭を抱えそうになった。

 そうして全て話を聞き終えた私は、整理するように話をまとめた。


「……えーっと、つまり。私が“祈り”を行ったことをきっかけに、妖精達が呼応して願いを叶えようとこの国に集まり移り住むようになった。

 その結果、私が眠っていた一週間のうちに、水源から綺麗な水が流れ、水質も味も目に見えて良くなっていった……」

「それはもう、見事なものでした。妖精達の姿は人間の目に見えずとも、水面が三日三晩キラキラと眩いばかりに輝いていたのですから」

「……それで、混乱させてしまった民を鎮めるために、貴方自ら“妖精の愛し子が祈りを行ったおかげだ”と触れ回ったと……」

「本当はエレオノーラ様が目を覚まし、公表する内容をご相談した上で決めようと思ったのですが……、念願の貴女からの祈りだと、妖精達が張り切ったようで」

「誤魔化しようがないほど派手なものになったのね」


 私の言葉にシエルが頷く。

 思わず頭を抑えた私に、シエルは慌てたように言う。


「やはりお身体がお辛いですか?」

「いえ、そうでないわ。そうではなくて……、どうして妖精達は、私の願いをそこまでして叶えてくれるのだろうと思って……。

 私は、私がまだ許せないというのに、こんな……」

「エレオノーラ様」

「!」


 不意に私の手にシエルの手が載る。

 無意識にギュッと、爪が食い込むほどに握りしめていた指を、一本一本丁寧にシエルが解いてくれながら、諭すように柔らかな口調で言った。


「そろそろ、ご自分を許して差し上げてください」

「……!」


 シエルの言葉に息を呑み、思わず彼の顔を凝視してしまう。

 彼は私の手を解いてから、代わりにその大きな手で包むように私の手を握り、彼もまた驚く私の姿をその瞳に映しながら言った。


「誰も、貴女のした選択を責める者などおりません。もちろん私も、怒ってなどおりません。

 ……むしろ元凶は私の方だとも思っておりますし」

「っそれは、ちが」

「しー」

「っ」


 シエルの言葉を止めようとしたのに、逆に彼の人差し指が私の口から言葉を奪うように当てられて。

 彼は困ったように笑って言った。


「ね? その話をすれば堂々巡りになってしまうでしょう。

 私も貴女も、頑固ですから。

 過ぎた過去は、水に流してしまえば良いのです」


 過ぎた過去は、水に流してしまえば良い。

 その言葉にドキリと心臓が音を立てたけれど、それ以上深く考えることを許さないと言うように、シエルは私をじっと見つめて言った。


「それよりも、今、目の前にいる私のことを見てください。

 それから、妖精達のことも。

 ……先ほど、他ならない貴女の口から“向き合いたい”と言う言葉が出て、とても嬉しかったのですから」

「……!」


 そう口にしたシエルの瞳は、潤んでいるように見えて。

 言葉を忘れて見つめてしまっていた、その時、コンコンとノックする音が耳に届いた。けれど。


「……あの」


 扉の外にいる人物に対して返事をすると思っていたシエルが、一向に返事をすることなく私を見つめるものだから、思わず声をかけるけれど。


「約束してください」


 なおも扉の外にいる人物には構うことなく、シエルは私から視線を逸らすことなく言葉を続けた。


「もう、黙ってどこかに一人でいなくなったりしないと」

「……っ」


 切実な瞳で訴えられ、一瞬息を呑んだけれど、私も迷うことなくはっきりと言葉を返す。


「えぇ、約束するわ」

「……!」


 そう返事をしたことで、シエルの表情が一気に明るくなる。

 そして、破顔したその姿は、幼い頃の面影と重なって見えて……。


「お取り込み中失礼致します!!」


 もうこれ以上は待てない。

 そう言わんばかりに返事を待たずに扉を開けて入ってきたのは、シエルの従者のダニエルだった。

 シエルはダニエルの方を見やると、低い声音で口にした。


「……見ての通り取り込み中なんだが」


(怒っているわ……)


 視線を向けられていない私でも自然と背筋が伸びると言うのに、ダニエルは慣れているという素振りで「申し訳ございません」と謝りながら、焦った様子で口にした。


「城外に、ファータ王国の妖精の愛し子の服を着用した者が倒れており、低体温から現在危篤状態とのことで……」


 ファータ王国の妖精の愛し子。

 その言葉にハッとし、慌てて詰め寄るように立ち上がって尋ねる。


「容姿は!?」

「髪は肩の長さくらいまでの茶色、瞳の色は分かっておらず……」

「……ルチア……、っ、ルチアだわ」


 彼女が、危篤状態に……。


「シエル、彼女の元へ行きたい。連れて行って!」


 何が起こっているのか分からない。

 確かめなければ。

 その一心でシエルに懇願すれば、シエルは少し躊躇ったような顔をしたものの、「分かりました」と頷き、ダニエルに案内を頼むと長い廊下を走り出したのだった。

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