ある日突然カレンダーから声が聞こえるようになった
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今回は男主人公にしてみました。
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主人公の瀬野充は、ごく普通のサラリーマンだ。1度も染めた事のない黒髪に、こげ茶色の瞳。背の高さを除いては平々凡々な人間だ。そんな充に、カレンダーから声が聞こえるという異変が起こった。
事の発端は20歳の誕生日だ。目を覚ますと、誰もいない部屋から声が聞こえて来たのだ。初めは空耳と思っていたが、現実だとはっきり分かる出来事があった。
ある日遊ぶ計画を立てるため、友達の優斗がおもむろに手帳を取り出したときだ。
『うわっ眩しい! ここは窮屈だな』
『本当よね』
『急に暗くなったり、明るくなったりで嫌になっちゃう』
耳を疑った。今のは何だ。
「なぁ今の聞こえたか」
「は? 何がだ」
「今眩しいとか、聞こえなかったか」
「何言ってんだお前。誰もしゃべってねーぞ」
優斗ともう1人の友達である和希が怪訝な顔をする。
「いやーそうかな。ははっ」
「でさーこの日はどうだ」
何事もなかったように、優斗が手帳の日付をなぞる。
『わーくすぐったい』
『ふふふっ』
『オレこの感覚好きだわ』
『えーあり得ない! ゾワゾワするだけじゃない』
まただ……。
「――なぁ本当に何も聞こえないか」
2人には一切聞こえていなかった。しっかりと耳に届いたのに、充だけが聞こえる事実に胸がざわついた。それがまごうことなきカレンダーからの声で、男女様々なのだ。
どうも充の声は奴らには聞こえないが、分かった事もある。個性が存在しているのだ。1年は12ヶ月に分かれているがそれぞれ月別の特徴が現れている。
12月は早口で気性が荒い奴らが多い。まさに師走。いつもは余裕こいてる人も、忙しくなる。
1月は割と静かだ。連休で昼飲みは当たり前の寝正月になる。こんな生活が続けば休みボケでやる気も起きない。
4月は前向きだ。新年度の始まりで、目標を掲げ希望を持って意欲的になる。
5月は後向きの奴が多い。思い描いていた理想と現実のギャップにもがく時期。まさに5月病だ。
2月の奴らはやたらと寂しがり屋だ。閏年で4年に1度しか会えない奴がいるからだ。特に28日は騒がしい。具現化したら生き別れた家族が感動の再会を果たし、抱き合って離さない姿が目に浮かぶ。
『久しぶり〜』
『ようやく会えたね』
と会話しているのだ。そして29日が終わりを迎える23時59分。別れを惜しむように皆すすり泣いていた。何だか人間味あふれる奴らだ。
段々奴らに親近感が沸いてきた。声が聞こえなくなったら、充はきっと寂しく思うだろう。
お読みいただきありがとうございました。
こちらの作品は、応募のために文字数を削ったものになります。
気が向いたらロングバージョンを投稿する予定です。とは言いつつそれでも短編ですが、書いてたら思いのほか文字数オーバーして焦りました。
また別の作品でお会い出来たら嬉しいです。