アルバとロボット
…
……
………
「ねえ、アルバ、ずっと作りたがってたロボットができたんでしょ?」
私が、椅子に座って両の手に顔を沈めている男に声をかけると、その男はゆっくりとこっちを振り返って、
「……ああ」
とだけ言った。
この人はアルバ=ブレイブ、私———アン=ブレイブ———の夫で、科学者。
ずっと、自立式で、感情があって、まるで本物の人間みたいに振る舞うロボットを作りたがってた。
そしてついに、その夢が叶ったみたい。
なのに、アルバはずっとこんな調子。
よくため息をつくし、手に顔を沈めるし、ちっとも元気じゃないみたい。
実験中に何か失敗したのかな?
うーん、分かんないや。
そういえば、ロボットってどこにあるんだろう?
「ねえ、そのロボットって、どこにあるの?」
アルバは少し時間をおいた後、ゆっくりと指だけを動かして、部屋の隅を指した。
そこには、黒くて、四角くて、人一人くらいなら余裕で入りそうな程大きな、箱があった。
「これ?」
返事はなく、ただ、アルバはゆっくりと頷いた。
蓋を開けると、そこには、私が横たわっていた。
素人からしたら、まあ、つまり私からしたら、それは本物の私とほとんど同じで、確かに関節は私のそれとはちょっと違うけど、ロボットだとは思えないほど精巧に作られていて、やっぱり凄いなって感動した。
でも、それより、アルバが最初に作ったロボットのモチーフが私ってことが、すごく、すごく嬉しかった。
「これ、どうやったら動くの?」
「動か……」
そこで、アルバは一瞬言葉を止めた。
「……いや、まだ、動かない」
充電中ってことかな?
なんにせよ早く動く姿が見たいなあ。
どんな風に動くんだろう。
やっぱり、私みたいに動くのかな?
それから、私たちは色んな思い出について話した。
初めて会った日のこと、ピクニックをした日のこと、付き合った日のこと、湖に行ったこと、結婚した日のこと……
まあ、アルバは聞いてるだけだったけど。
でも、少しは元気になったみたい。
だって、顔色は少し良くなったし、笑うようになったし、なにより、一番アルバの事を知ってる私がそう思うんだもん、間違いない!
そう思ってると、アルバの手が、私の頭のほうに伸びてきた。
「ん?どうしたの?ホコリでもつい———」
「やっぱり、ロボットじゃ、本物には勝てないな」
えっと、どう言うこ———
………
……
…