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第28話 眠気

 予定とは違うコースの道を爽快な走りで突き進んで行きながら、急斜面の山沿いの道を辿って車は大きく揺れる。


「おい、もう少しゆっくり進め。カーブを曲がり切れなくて事故ったりしたらどうする」


「仕方ありませんわ。これでもスピードは抑えていますし、あまりノロノロしていると旅館のチェックインが遅れてしまいますわ」


 一応、ミュースも細心の注意を払って運転しているようだが、予定していた道順は土砂崩れで使えず、順当に旅を進めていたら今頃は旅館に到着する頃合いだっただろう。

 まあ、急いでいる旅でもないし、こうして香苗ちゃんと一緒にいられるだけでも旅は十分満喫できている。


「遅れてもいいから、安全運転で頼みますよ」


「もう、キャスティルと楓ちゃんは心配性なんだから」


 私もミュースに念押しすると、ミュースは頬を膨らませて少々ご機嫌斜めの様子だ。

 しばらくは助手席のキャスティルがあれこれ言っていたが、徐々に問題ないと判断していつの間にか読書を始めていた。

 漁港で見た広い海は潮風もあって清々しい気分に浸れたが、窓の外は生い茂った木々しか見えず風景を楽しむには正直飽きてくる。


「ふわぁ……少し眠くなってきちゃった」


「着いたら起こしてあげるよ」


 香苗ちゃんは小さな欠伸を漏らすと、急な眠気に襲われる。

 朝早くから旅の出発をしているし、昼食の時間もずれて遅くなってしまった事もあって、私も少々眠気が付き纏っている。


「でも、ミュースさんは運転しているし、私だけ呑気に寝たりしたら悪いよ」


「ふふっ、私の事は気にしなくていいですわ。お気遣いありがとうございます」


 運転手のミュースを気遣って眠るのを躊躇っていた香苗ちゃんだったが、ミュースは左手の親指を立てて感謝を述べる。


「お前さんも眠っていていいぞ。到着したら起こしてやるからな」


「私は全然平気だよ。それより、居眠り運転とかは勘弁してくださいよ」


「……好きにしろ」


 キャスティルが読書しながら、私にも仮眠を勧めてくる。

 だが、香苗ちゃんを起こす役目は私がやりたい。

 私の想いを汲み取ったのか、キャスティルはそれ以上の事は何も言わず読書に(ふけ)る。


「私も眠ったりしたら、キャスティルが優しく起こしてくださるかしら?」


「とりあえず、一発ぶん殴って車を降りてもらうからな」


 拳を突き出して警告するキャスティルだが、本気で実行に移す気満々だ。

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