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第21話 暇潰しのゲーム

 順調だった道程も、ここに来て暗礁に乗り上げることになった。


「これはしばらく動かんな」


 キャスティルは渋滞に巻き込まれて車を一時停止させる。

延々と車の列が出来上がっていたところを見ると、どうやら風に煽られて乗用車が一台事故を起こしたらしく、車線は片側一車線に規制されているようだ。


「急ぐ旅でもないですし、ゆっくり構えて行きましょうか」


 ミュースはのんびりした口調で小さく欠伸をしながら上機嫌で持参している飴を口に入れると、私や香苗ちゃんにも勧めてくれた。

 まあ、こうなっては私達にはどうすることもできないので、ここは彼女に倣ってのんびり構えるのが正解かもしれない。


「そうだ。暇潰しに、ちょっとしたゲームでもやりましょう」


「ゲーム?」


 ミュースは思い立ったように、懐から薄っぺらい紙のような物を取り出してゲームをしようと提案する。

 別にゲーム自体はいいのだが、この女神が提案するゲームがどんなものなのか少々不安ではある。


「いいですね。気分転換にやりましょうか」


「じゃあ、私もやるよ」


「よしよし、それではこれを配って簡単なルール説明をしますわ」


 私が身構えている隣で、香苗ちゃんは臆することなく軽い気持ちで参加を表明する。

 しょうがないので、私も後に続いて参加を決めると、ミュースは取り出した紙を私と香苗ちゃんに手渡してルールを説明する。


「ルールは簡単。まずはその紙を両手で掴んで、お題に沿った物を思い浮かべてください。例えば、お題が好きな食べ物だった場合はこのように好きな食べ物を思い浮かべると、結果はこうなりますわ」


 ミュースが両手に手にしていた白紙のモ用紙から絵が浮かび上がり、美味しそうなケーキの絵が描かれている。

 まるで、手品を見ているようだ。


「ふふっ、これには種も仕掛けもありませんわ。お二人も好きな食べ物を思い浮かべて試して見てください」


 ミュースに促されるがまま、私と香苗ちゃんも同じ要領で試すことにする。


(好きな食べ物か……)


 私は色々悩んだ末、絶対にこれは描かれないだろうと言う食べ物を思い浮かべる。


「わぁ、本当に思い描いた通りの物ができた!」


 私より先に、香苗ちゃんは自身の紙に描かれた物を見て驚愕する。

 そこには美味しそうなおでんが湯気を立てて描かれていたのだ。


「さて、楓ちゃんはどうかな?」


 ミュースは興味津々で私の紙を覗き込むと、小鉢に添えられた酒のつまみで定番のアジのなめろうが描かれていた。


「ふふっ、楓ちゃんのチョイスが渋いですわねぇ。おっさん丸出しですわ」


「……悪かったな」


 可笑しそうに笑うミュースに私は罰が悪そうに頭を掻く。

 何かトリックがあるのだろうと半信半疑だったが、これはたしかに私が思い描いた物だった。

 元々、おっさんだったのだから仕方がない。

 この紙が特別な物であるのを確信した私と香苗ちゃんはミュースから新しい紙を受け取ってさらに続ける。


「先程の好きな食べ物は皆見事にバラバラでしたが、三人が一致する物を思い浮かべてゲームクリアを目指す連想ゲームをやりたいと思います。お題は順番に一人ずつ出し合っていきながら、目的地に到着するまでにクリアできるのか。もし、クリアできましたら私から特別なご褒美をお二人に差し上げますわ」


「そんなこと言って、あんたがワザと外すような真似をされたら永遠にクリアできんだろ」


「そんな無粋な真似はしませんわ。私もゲーム中は特別な力は使いませんし、一プレイヤーとして参加しますからご安心を」


 やる気十分なミュースの隣にいる運転席のキャスティルは「不正はしないから安心しろ」と疑り深い私のために呟く。

 まあ、ここまでお膳立てしてくれたのだから、私は女神達の言葉を信じてゲームは開始された。

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