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第20話 心情の変化

 旅の記念撮影もそこそこできたところで、全員揃って車を発進させる。


「あまり目立つ真似はするなよ」


「そんなつもりはなかったんですけど、次から気を付けますわ」


 先程の記念撮影の件でキャスティルに咎められたミュースは缶コーヒーを口にしながら反省の色を示す。

 まあ、そんな彼女のおかげで普段はやらないような記念撮影ができたので香苗ちゃんも楽しそうにしていたし、ミュースを咎めるつもりはない。


「ところで、楓ちゃんは今の生活に慣れてきましたか?」


「まあ……少しずつ慣れているかな」


 ミュースは突然、私の生活環境について訊ねると、私は曖昧な返事をする。

 香苗ちゃんと二人っきりの時は夫婦で、それ以外は姉妹として変則的な生活が始まって数日経っている。

 飯島楓として振る舞うのはやはり大変で、この年頃の女の子は三十代のおっさんには未知数なことばかりだ。


「あら、言葉遣いが少々荒いですね。まるで、どこかの不良女神みたいですわ」


 ミュースは運転席のキャスティルに視線を移しながら、彼女に何か言いたげな様子だ。

 そんなミュースをキャスティルは無視して、オーディオ機器を操作して音楽を流し始める。

 たしかにミュースの指摘通り、私の言葉遣いは年頃の少女と比べたら荒い部分はあるかもしれない。

 ミュースのようなお嬢様口調で喋るのは抵抗感があるし、女性の喋り方をするとオネエ感を意識してしまう。


「言葉遣いなんてものは気にする必要はない。重要なのは今後もお前さん達二人が平穏に暮らしていけるかどうかだからな」


 キャスティルは運転しながら、保護者として二人を尊重した言葉を投げかけてくれた。

 今は苦労することは多々あるが、彼女の言う通り平穏に暮らしていけたらどんなに幸せか。


「へぇ……保護者が板についてきたじゃないですか。いつもの貴女は『やりたいようにやれ』とか放任主義なところがあったのに」


「それはお前さんだろ。私はこう見えても部下思いの女神だ」


「ふふっ、今日はエイプリルフールじゃありませんよ」


 軽い冗談を交えながら、ミュースは可笑しそうに笑うと私や香苗ちゃんも釣られて車内は笑いに包まれた。

 そんな私達に腹を立てたキャスティルはミュースの頭をグーの手で小突いて、それまでオーディオ機器から穏やかなクラシック音楽が流れていたのにヘヴィメタルの音楽に変わった。

 まるで、キャスティルの心情の変化を表しているかのようだった。

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