帰り道
真っ暗な道を歩いていた。独りぼっちだった。
「帰るときはね、振り向いたらいけないよ」
祖母は優しく私の頭をポンポンとした。
「明かりが見えるはずだから真っ直ぐ歩くのよ。寄り道しちゃ駄目よ」
「うん。じゃあね、ばあば」
遠くにぼんやり小さな明かりが見える。
「」
後ろから呼ばれた気がした。振り向いてはいけない。祖母にそういわれている。
「さーや」
振り向いてはいけない。
「待ってよ。置いて行かないで」
明かりはだんだんはっきりとしたものになってきた。
「さーや。さーやってば。ずっと一緒にいようよ。ねぇ、さーや」
私は明かりを目指し、走り出した。
「さやか!」
「お、かあ、さん」
泣いている母の顔なんて始めて見た気がする。知らない天井…。ここは、どこだろう?頭を動かして見ると左腕に点滴、右腕に血圧計等が付いている。病院?私は…?思い出せない。
母が少し冷静になって看護師さんを呼んで医師が診察に来たりして、私は1ヶ月も眠ったままだった事を知った。
1ヶ月も寝ていたのに夜になると眠たいものなのだ。空には満月が輝いている。
「さーや」
後ろから呼ぶ声がした。
「逃さないよ。僕の花嫁」