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ネスタリア大陸放浪記  作者: かとう しゅん
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第八話 鍛冶屋の親方は強面が多い

 バラックの案内で鍛冶屋へ行こうとした矢先、ニックスに声を掛ける人物がいた。


「あらニックス、何処かへお出かけ?」


 声をした方を見ると蒼玉の双剣の女性メンバーであった。


「あっ、フランさんおはようございます。実はこちらのバラックさんが鍛冶屋に行きたいとの事なのでバッソさんの所へ行こうと思いましてね」


 フランは二人の方を見ると微笑んだ。


「ふふっ、昨日顔は合わせたけど話すのは初めてね。私はフランジーナ、フランって呼んでね」


「よろしくなフラン。昨日聞いたと思うが改めて、俺はバラック、こっちはフリード。気軽にラック、リードと呼んでくれ」


「よろしく頼む、フラン殿」


「ええ、よろしくねラック、リード」


 フランは二人の挨拶を受けると握手をする。


「ところでウチの馬鹿どもはもう起きたのかしら?」


「ああ、ついさっき青い顔しながら食堂に行ったぞ」


「あらそう、なら私も朝食を食べに行こうかしら」


「もう食べたんじゃないのか?」


「いいえ、まだ食べてないの。パーティーと一緒に食べよう思ったのだけど、どうせあいつらはまだ起きないと思ったから散歩に出かけたの」


「なるほどね」


「まぁ以外と早く起きてくれて良かったわ。それじゃバイバイ、お三人さん」


 そう言うとフランは宿に戻って行った。


「それじゃ今度こそ行きましょうか。ここから少し北側に歩きます。結構近いんですよ」


 ニックスが先導して歩き、二人はその後ろをついて行く。

 少し歩くとバラックは前を行くニックスに話し掛ける。


「そういえばニックスのパーティーのランクは何だ?」


「この間やっと鉄級になりました。これで護衛の依頼を受けることができるようになりました」


 護衛の依頼は鉄級以上でないと受けることができない為、ようやく依頼を受注できることを喜ぶニックス。


「どうして護衛の依頼ができるのが嬉しいんだい?護衛って結構面倒くさいぞ」


「実は僕とミリーネはこの町の出身で幼馴染なんです。だからこの町の人々の役に立てるのが嬉しくて」


 二人の方を振り向き、頬を赤くしながら指で掻きニックスはそう語る。


「ふぅ〜ん、だったら兵士でも良かったんじゃないのか?」


「僕も最初は兵士に憧れていたんです。でも町の人々により接するのは冒険者だと思ったのでこっちを選びました。それにミリーネが魔法の適正があったので僕が剣士でバランスもいいなと思いましてね」


 ニックスは顔全体を真っ赤にし、モジモジしながら理由を話すとバラックは、


「へぇ〜、そいつぁ冒険者を選ぶわな。幼馴染と一緒にいられるんだからな」


 とニヤニヤしながらニックスを揶揄う。

 ニックスは二人に背を向け、


「さ、さぁ鍛冶屋はもうすぐそこですよ!」


 とさっさと歩き出した。


「あんまり若者を揶揄ってやるなよ」


「へいへい」


 フリードはバラックを窘め、二人はニックスの後を追う。

 少し歩くとニックスは金槌が描かれいる看板が吊るしてある店の前で足を止めた。


「着きました。ここが僕達がお世話になってる鍛冶屋ですよ」


 二人にそう言うとニックスは店の中に入り二人も後を追った。

 するとカーン、カーンと金槌の音が響き渡る。


「バッソさん居ますかー?バッソさーん!」


 ニックスは金槌の音に負けないように大声でバッソの名前を何度も呼ぶ。その間二人は辺りを見渡すと色々な武器が飾られ、置かれている。そして後ろを振り向くと出入口方面にはなぜか鉄板が貼られている。二人が不思議に思っていると、


「はいはーい!ちょっと待ってくださ〜い!」


 と少年の声が聞こえてきて、少しすると店の奥から

 少年が出てきた。


「はいはい、あっニックスさん!おはようございます」


「おはようテルモ君。バッソさんはいるかい?」


「はい、居ますよ!ちょっと待ってください」


 テルモと呼ばれた少年は今し方自分が出てきた方を向き、


「親方ー!!親方ー!!お客さんですよー!!親方ー!!!」


 とニックスより大きな声でバッソを呼んだ。

 するとテルモはその場でしゃがみ込み、両手で耳を塞いだ。ニックスも横にずれているのを見て、嫌な予感がした二人もニックスの方に向かおうとすると店の奥からハンマーが飛んできた。


「うおっ!?」


「おっと!?」


 二人がハンマーを避けるとガイィーンとハンマーが鉄板に当たる音がした。

 更に奥から怒鳴り声が聞こえてくる。


「喧しいぞ小僧!!!一度呼べば聞こえるい!!!」


 と叫びながら男性が奥から出てきた。


「あっ、バッソさんお久しぶりです」


「なんだニックスの坊主じゃないか。ん?なんじゃこの二人は?」


 バッソはニックスに気付き声を掛け、二人を見て訝しむ。

 二人もバッソの風貌をみていた。

 年齢は五十代くらい、身長はフリードと同じくらいか、筋肉隆々で眼光が鋭く、髭を蓄え、頭にゴーグルをかけていた。


「昨日から小鳥の宿木亭で宿泊してるバラックさんとフリードです。こちらのバラックさんが腕の良い鍛冶師を紹介して欲しいとの事だったので一緒に連れて来ました」


「ふ〜む、それでお主はワシに何の用で来たのじゃ?」


 そう言われたバラックは腰に差していたショートソードを鞘ごと抜き、受付のカウンターに置いた。


「いや実はこの剣の状態を見て欲しくてな」


「ふむ、このショートソードをか?」


 バッソはショートソードを手に取ると鞘から抜き、剣身を凝視し、金槌で軽く叩いたりした。


「う〜む、これは大分使い込んだのう。手入れは悪くはないが剣自体がもう寿命じゃな」


「あ〜やっぱりか。使ってから結構長いからな〜」


「親方、どうして分かるんですか?」


 バッソはショートソードを置くと自らの見解を言い、バラックは下された結果に納得する。そこにバッソの投げたハンマーを回収して戻ってきたテルモがバッソに質問する。


「うむ、例えば剣を見てみよ。刃が何度も研がれていて大分薄くなって剣先も少し丸くなっておろう」


 バッソがそういうのでテルモはショートソードを手に取り刃先を見つめる。


「う〜ん、確かに減ってるような…?」


「まぁこれも経験じゃ。しっかり勉強しておけ」


 テルモにそう言うとバッソはバラックに話を戻す。


「それでどうする?これなら打ち直すより新しいのを買った方が安くつくぞ」


「ちょっと色々見せてもらっていいか?」


「構わんぞ」


 バラックはとりあえず店の中にある剣を見に回った。


「それでニックスの坊主は何の用じゃ?」


「僕はこの剣の調整をお願いに来ました」


 ニックスは腰に差してあるロングソードをカウンターに置き、バッソがその剣を手に取ると鞘から抜き調べ始める。


「ふむ、何か固い物でも切ったのか?少し曲がっておるのう。刃こぼれも多少ある。この程度じゃったら大丈夫じゃが…少し待っておれ」


 バッソはそう言うと剣を持って店の奥へと消えた。

 十分もするとバッソが戻ってきた。その頃にはテルモから剣を返してもらったバラックもフリード、ニックスと雑談して待っていた。


「待たせたのう。ほれっ、坊主の剣は新品同様じゃ」


 ニックスの剣をカウンターに置いたバッソ。ニックスはその剣を受け取り、鞘から抜いて確認すると銀貨五枚をカウンターに置いた。


「ありがとうございますバッソさん」


「うむ。それでお主はどうするのじゃ?」


 バッソはバラックに問いかける。


「少し高いが良い剣ばっかだな。けど今は金欠でな。また今度買いにくるわ」


「…そうか。まぁ剣が高いのはワシの腕の料金じゃ。文句は言わせんぞ。…ところでその背に背負っている剣は見なくてよいのか?」


「ああ…これか?これは大切な預かり(もん)でよ。ほとんど使ってねぇし、手入れも、ちゃんとしてるから大丈夫だ」


「…まぁ手入れの仕方は悪くなかったから大丈夫じゃろ。それで用はそれだけかのう?」


「ああ、見てくれて助かったぜ」


 そう言うとバラックは銀貨を一枚カウンターに置き、バッソもそれを受け取る。


「それじゃあ仕事に戻るかのう」


 そう言うとバッソはさっさと奥に消えて行った。


「それじゃ行きますか」


「そうですね。また来るよテルモ君」


「はい。ありがとうございました!」


 バラック達は店に出ようとすると今まで黙っていたフリードが口を開く。


「…これ、私が来る必要はあったのか?」


「まぁそう固い事言うなって」


 フリードの疑問をバラックはフリードの肩を軽く叩きながらいなし、三人は店を出るのであった。



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