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ネスタリア大陸放浪記  作者: かとう しゅん
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第七話 お酒を飲むのはほどほどに

 このネスタリア大陸には名剣、魔剣と呼ばれる類の物が数多く存在している。その中には眉唾物や書物でしか出てこない物も数多くあった。

 そんな中、今から七十年前、アルビン・ネイサスという剣士がその生涯の全てをかけ大陸を巡り名剣、魔剣、名槍や魔槍等、あらゆる由来のある武器を探し訪ねた。

 彼はその旅の途中多くの剣士や戦士と立ち合い勝利を重ね、彼の腕に見惚れた者を弟子に取り、旅を続けた。するといつしか剣聖と呼ばれるまで至った。

 そんなアルビンが旅で出会った武器を弟子達と共に書物として書き記した『大陸業物列伝』、通称“業物伝”は剣士達の為に数多く出版され多くの剣士や戦士を魅了した。

 その内容は“神業物”四本、“大業物“十三本、“業物”二十六本の計四十三本の剣について書かれていた。

 その中でも数多の剣士達が一度でもその剣を拝見しようと足を運んだのは神業物の四本であった。

 (あし)き者を倒す為主神が鍛えたとされる“聖剣エクスカリバー”

 次元を斬ることができる“神剣エターナルソード“

 戦神の愛用した武器の一つ“神槍シュトルム”

 異界の神が叡智を授け鍛えさせ、自らの力の一端を与えた“神刀ササメユキ”

 この内三本は現在も所有している国が知られている。

 聖剣と神剣は神聖アルカイラの教皇が管理をしており、神刀は神聖アルカイラより東、アダチの国に祀られていた。しかし、この三本は場所が分かっていても中々に拝めることはできなかった。最後の一本である神槍は現在所有している者が不明である為、槍使い達の中には探している者も多かった。

 そんな剣聖が書き記した業物伝は今も剣士達を魅了しているのであった。



 翌朝、旅の疲労でいつもより遅く起きた二人が食堂に下りるとニックスのパーティーがすでに朝食を食べ終え雑談をしており、他の客は全くいなかった。


「あっ、おはようございます。リードさん、ラックさん」


「おはよう、ニックス殿」


「おはようさん」


 ニックスが二人に気付き挨拶をすると、二人も挨拶を返し席に着いた。そこにリリーナが近づいて来る。


「おはようございます!もう少ししたら呼びに行こうと思いましたよ」


「いや〜久しぶりのベッドで爆睡しちまってよ」


「以外と疲れが溜まっていてな。すまないな」


「いえ、時間に間に合ったから大丈夫ですよ。それじゃ朝食を持ってきますね」


 そう言ってリリーナは調理場へ向かった。

 料理が届くまで暇なバラックはニックスに声を掛ける。


「ニックス君よ、他の客はいねぇのか?」


「他の方々ですか?昨日カウンターで食べてたお二人はすでに食べ終えて外出していますね。ゴルドさん達のパーティーはお二人が部屋に戻った後、結局一人を除いて酒場に繰り出しまして帰ってきたのが遅かったらしいです。だから多分まだ部屋で寝てますね」


「へぇ〜、そうかい。…おっと!ニックス君もう一ついいかい?」


 ニックスは席を立ち二人の席に近付いた。


「ニックスで大丈夫ですよ。それでなんですか?」


「そうかい。それじゃニックス、この辺で腕の良い鍛冶屋は何処にあるんだい?」


「鍛冶屋ですか?それでしたらゴルドさん達や僕達もお世話になってる(かた)の所がいいですね。今日僕達のパーティーは休みなので丁度行こうと思ってたんですよ。宜しかったら案内しましょうか?」


「おぉ!そいつは悪ぃな。是非頼むよ」


 幸先良く鍛冶屋の目処が立ち喜ぶバラック。そこにフリードも質問をした。


「すまない、私も尋ねたいのだが、昨日ここに来る途中に魔道具屋があったのだが他にも魔道具が売っている所は何処にあるのだろうか?」


「魔道具ですか?それは専門外ですね。少し待ってください。ねぇ、ミリー?」


 ニックスは自分のパーティーの魔法使いミリーネを呼び、他の二人と話していた彼女はニックスの方に体を向けた。


「ん?どうしたのニック?」


「こちらのリードさんが魔道具が売っている場所を探しているらしいんだ。何処か知らないかい?」


「う〜ん、魔道具となるとここから北の歓楽街の近くにある店が結構大きいから色々置いてあると思うけど…」


 顎に人差し指を当て考えるミリーネ。


「ここから南にある魔道具屋はどうなんだ?」


「あぁ、あそこは魔道具屋と書いてありますけど売っているのは回復薬と魔法書ぐらいなんですよね」


「なんだそうなのか。なら回復薬はまだあるので行くことはないな」


 フリードの言葉にバラックは昨日の行動を思い出し、ジト目になる。そんなバラックを無視しミリーネの話に耳を傾けるフリード。


「後は…歓楽街から北東のスラム街近くに魔道具屋があるって話を聞きましたね。けど、あの辺は危ないんですよね」


「なるほど…いや、参考になった。ありがとう」


「いえいえ〜」


 ミリーネは体を返しパーティーの雑談に戻った。

 するとリリーナが料理を持って食堂へと戻って来た。


「お待たせしました〜!」


 リリーナが料理を並べる。その内容は白パンとサラダ、豚鬼(オーク)のソーセージ、それに大雄牛(グレーターブル)のテールスープだった。


「白パンはお代わり自由ですよ〜」


 リリーナそう言うと調理場へと戻って行った。

 二人は早速食事に手をつける。


「むっ、このスープさっぱりしているがしっかりと旨味が出ているな」


「このパンもふわふわで美味ぇな!こんな美味ぇもんが食えるなんて稀人様様だな!」


「あぁ…全くだな。あっ、ニックス殿を待たしているからお代わりは今はお代わりをするなよラック」


「えぇ〜!?…まぁ俺の用事だ。しょうがねぇ」


 そう言うと二人はさっさと食事を食べ終えた。


「ふぅ〜、食った食った。あれ?ニックスはもう準備できてるのか?」


 まだ食堂に残っていた深森の盾の四人を見てバラックは声を掛ける。


「はい。僕はもう準備出来てますよ」


「そいつは悪ぃな。すぐ準備してくるからちょっと待っててくれ」


 二人はすぐ部屋へと戻り準備をすると部屋出た。

 すると上の四階からゴルド達蒼玉の双剣の四人が青い顔をしながら下りて来た。


「うぉ〜、頭痛ぇ〜」


「うっぷ、気持ち悪い」


 飲みに行かなかったのはどうやら唯一の女性だったらしく、彼女はこの場にはいなかった。


「よう、昨日は酒場に行ってたんだって?」


「あぁ、おかげでこのザマだ。」


「まぁ、自業自得だな」


 言い返そうとしたゴルドだったがそんな気力も湧かず、フラフラと四人は食堂へ下りて行き、その後ろを二人もついて行った。

 一階に着き食堂を覗くとニックスはその場にいなかったので二人は受付のカウンターに行くとそこには妙齢の女性が立っていた。


「あら、お出かけですか?」


「あっ、はい。えっと…」


「すみません、昨日はリリーナが応対したんですよね。リリーナの母のイリーナです。この宿を営んでいます」


「初めまして、昨日からお世話なってます。それでニックス殿はもう外に?」


「はい。入口で待っていますよ」


 その話を聞いた二人は鍵をイリーナに返し外へと出る。するとニックスが一人で待っていた。


「すまねぇ、待たせちまった」


「いえ、大丈夫ですよ。それじゃ行きましょうか」


 ニックスの案内により二人は鍛冶屋へと向かう事となった。

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