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ネスタリア大陸放浪記  作者: かとう しゅん
3/13

第三話 野営飯は美味しく感じる

 それからの四人の馬車旅は魔物に出くわすことも無く、順調に街道を進んで行った。

 バラックは途中、街道の北側にある森を見るとロイドに尋ねる。


「旦那、あそこの森はかなり大きいな。どこまで続いてるんだ?」


「あぁ…、“魔の森”のことですか」


「魔の森?」


 バラックが聞き返すとロイドは話を続ける。


「はい。あの森は北と東の隣国まで続く大きな森でして、奥深くに行く程魔物も多く凶暴になるのですが有用な植物が豊富に生えてます」


「なるほど。それならさっきの小鬼(ゴブリン)もあそこから出て来たのか」


「いえ、この間の大討伐で魔の森にも冒険者の皆様が念入りに探索をしたと聞きました。小鬼程度の魔物でしたら暫くはエスカディア側に出てくる事はない筈だったのですが…」


 そう話すロイドは少し不安そうに魔の森を注視していた。


「なるほど。…まっ、俺達が護衛するからそんなに心配しなさんな。なっ、リード」


「そうだな。あの程度の魔物達ならすぐに倒せる」


 後ろで話を聞いていたフリードもロイドの不安を払う為にバラックの話に追従した。


「そういえばさっきから嬢ちゃんの声が聞こえないな」


「クレア殿なら寝ているよ」


 先程までフリードを相手にお喋りをしていたクレアだったが魔物に襲われることは少女にとって大変な出来事だったのであろう、予想より疲れが溜まり寝てしまった。


「まぁ無理もねぇな、あんな目に遭えばよ」


「そうだな」


 それからは度々休憩を挟み、バラックが途中で御者を交代しながらも馬車は日が暮れるまで街道を走り続けた。


「旦那、今日はどこまで進むんだ?」


「もう少し行きますと野営地がありますのでそこまで進みましょう」


 指示に従いしばらく馬車を走らすと目的の野営地に着いた。

 そこには数台の馬車もあり、それぞれが夜営の準備をしていた。

 バラック達四人も少し離れた場所を陣取り、夜営の準備をすることにした。


「私は馬達を柵に繋いできますね」


「わたしも一緒に行く!」


 そう言うとロイドと昼寝をして元気になったクレアは近くの柵に馬を引き連れに行った。


「リード、俺が枝を拾ってくるから、お(めぇ)はテントと食事の準備をしてくれ」


「分かった」


 そう言うとバラックは森の方へと歩いて行き、それを見送ったフリードは鞄の中からテントや大きな鍋を取り出した。

 クレアと共に馬を柵に繋いで戻って来たロイドはその光景を見て驚く。


「リードさん。そ、それはマジックバッグですか?」


「ん?その通りだが」


「そんな素晴らしい物を持ってるなんて、う、羨ましい」


 商人にとって大荷物を持つことができる魔道具“マジックバッグ”は垂涎物であり、ロイドはフリードを羨望の目で見る。


「ふふふ、ロイド殿もいつか買えるといいな」


「そうですね。頑張りたいと思います」


 魔道具を褒めてもらいすっかり上機嫌なフリードはテントを設置し食事の準備を始める。

 ロイドもテントの準備に行ってしまい、暇になったクレアはフリードの元に向かい行動を眺めていた。


「リードおにいちゃんはお料理できるの?」


「簡単なものならできるさ」


 そう言うとフリードは鞄から芋や人参、それとナイフを取り出して、皮を剥き始める。


「うわ〜!すごい綺麗に剥けるね!」


「これぐらいならクレア殿も直ぐに出来る様になるさ」


 そんな話をしていると枝を拾ってきたバラックが戻って来た。


「やっぱ森に魔物の気配は感じられねぇな。」


「そうか」


「だとするとさっきの襲撃も偶然だったのかねぇ」


 話をしながらバラックは焚き火の準備をし、フリードも食材を切り終え、鍋を吊るす三脚を作る。

 焚き火の準備が終わると魔法で火を着けたフリードは鍋を吊るし、そこに鞄から出した水を鍋に注ぎ沸騰させ、さらに干し肉や切った野菜を投入しスープを作る。するとロイドが葉に包まれた粘土のような物を持って来た。


「これ、私の実家が取り扱っている調味料なのですが良かったら使ってみませんか?」


「調味料?それは有り難い。早速入れてみよう」


 フリードはロイドから貰った調味料を適切な量を指示してもらいながら入れるとスープから嗅いだことがない匂いがしてきた。


「ほう、なかなかいい匂いがするな」


「そうだな。美味そうな匂いがする」


「これはアルカイラの一部で売られている“ミソ”と言う名前の調味料で、二百年程前に異世界から来た勇者が食べていた物を再現したのだそうです」


 フリードとバラックは初めて嗅ぐ匂いに腹を空かせ、ロイドが調味料の説明をしながら出来上がりを待った。

 暫くすると出来たスープをフリードが皆に注ぎ、ロイドから黒パンを分けて貰い、全員に配られると食事を始めた。


「おいしい!」


「美味い!」


 クレアとバラックはスープの味を気に入り、ガツガツと食べる。


「ふむ、肉のせいで味が少し塩辛いな」


「そうですか?これでも十分美味しいですよ」


 フリードはスープの味付けに少し納得がいかないのだがロイドには十分満足できる味であった。


「黒パンを浸しても美味いな」


「ねー!」


 バラックとクレアはパクパクと黒パンをスープに浸して食べしまい早々に食べ終わる。


「あぁ…、もう無くなっちまった」


「ざんねん」


 美味しい物を食べ終わってしまい、悲しい表情をする二人であった。

 暫くすると他の二人も食べ終わり、食休みをしているとロイドが二人に尋ねる。


「そういえば、お二人はどうしてカーナーシャへ?」


「ちょっとある物を探しててな。そうだロイドの旦那、カーナーシャの金級冒険者パーティーっ知ってるか?」


 バラックはロイドに尋ねる。


「それはもちろん。“斧の誓い”の皆さんですね」


 カーナーシャに居を構えるロイドは金級冒険者パーティーの事を知っていた。


「おぉ!やっぱり知ってるか!じゃあその中で有名な斧を持ってる人がいるんだか知ってるかい?」


「はい。リーダーのダガンさんが業物の斧を持っていると聞いたことがあります」


「そうか!噂は本当だったな!俺はその業物があると聞いてカーナーシャに訪ねて行くんだ」


「なるほど、そうだったのですか」


 バラックの話を聞いて納得するロイド。


「私はバラックの付き添いとついでに未知の魔道具がないか探しているのだがロイド殿は知らないか?」


「残念ながら私は知りませんがカーナーシャもそれなりに大きな町です。もしかしたらお目に叶う物があるかもしれないですね」


 そう言われたフリードは期待に胸を膨らませた。そして今度はロイドに尋ねる。


「そう言うロイド殿は二人で何処に?」


「私の実家が“ポポイ”の町にありましてね。最近ご無沙汰だったのか親からクレアに会いたいと手紙が来ましたので家族で向かおうと思ったのですが、妻が現在身重でして二人で行くことになったのです。幸い、妻の弟が従業員として働いてくれているので留守を守ってくれますので」


 その後も色々と話をしていたがいつの間にかクレアが船を漕いでいたのでその場はお開きとなり、ロイドはクレアを抱っこしてテントへ運びに行き、二人は後片付けを始めた。

 片付けが終わるとフリードはロイドのテントに近付き鞄からもう一つテントを取り出す。


「この中はトイレになっているから行きたくなったら使うと良いですよ」


「これは…、ありがとうございます」


 ロイドは感謝を伝えるとフリードは満足そうにバラックの元へと戻った。


「…お前あんなの持ってたのか。俺は見たことないぞ」


「あれは女性の為にしか出さない物だ」


 そう言い放つフリードに呆れるバラック。


「まぁ良いや、そんなことより今晩の見張り、どっちが先にやるんだ?」


「それはいつも通りでいいだろう」


 そう言うとフリードは懐から財布を出し、銅貨を手に取ると指で弾き、左手の甲に乗せ右手で隠す。


「どっちだ?」


「…裏で」


 フリードは右手を離すと銅貨は裏側であった。


「…今日は君が先だ」


 そう言うとフリードは懐中時計をバラックに渡すと自らのテントの中へと入って行った。

 バラックはロイドのテントへと行く。


「旦那、見張りは俺達がするから安心して寝てくれていいが一応魔除けの香は焚いておいてくれ」


「はい、わかりました。よろしくお願いします」


 魔除けの香とは魔物が嫌う臭いを出す香草で、ある程度の魔物を寄せ付けなくする道具である。旅をする者には必需品ともいえる物でロイドもちゃんと持っており、テントの周りに香を焚いた。

 それを確認したバラックは他の馬車の方向を見るとそれぞれの護衛が見張りを立てているのを確かめ、一人焚き火の前に座り込み剣の手入れを始めた。

 この日は襲撃も無く夜が更けていった。




適当な設定集③

魔物

魔物には強さにより脅威度がある。また、全ての魔物には魔石があり、その影響で目が赤くなっていることが多い。魔石は加工することにより魔道具の電池になるなど、生活のさまざまな物に役立つ。


魔物脅威度 

脅威度一 角兎 大鼠

脅威度二 小鬼(単体) 狼(単体) など


異世界人

数十年〜百数十年に一度ネスタリア大陸へと喚ばれる。また、アルカイラ国が勇者召喚の秘術で過去に三度異世界から喚び寄せた。異世界人を稀人(まれびと)と呼び、ネスタリア大陸の文化に影響を与える人が出てくることがある。



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