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ネスタリア大陸放浪記  作者: かとう しゅん
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第十話 薬草は役に立つそう

 二人はギルドを出ると魔の森へ向かう為西門を目指し歩く。


「乗合馬車に乗りたいな」


「こんな所で金を使うのは勿体ねえから諦めろ」


 フリードは楽をして西門に行こうと提案するがロイドから受け取った報酬だけでは未だ心許無いのでバラックは提案を跳ね除けた。

 西門へ行く途中、昨日ロイド達と別れた道を通る。


「金に余裕ができたらロイドの旦那の店にも寄ってみないとな」


「ああ、そうだな。…ロイド殿の店が何を売っているか聞いていなかったな」


「そう言えばそうだった。うっかりしてたな」


 そんな事を話しながらも途中で昼食用のパンや干し肉を少し買いがら一時間程歩くと西門の前まで辿り着いた。

 そこに門番をしている衛兵が二人に話しかける。


「君達は冒険者か?」


「はい。そうです」


「依頼か?それともこの町を出るのか?」


「採取の依頼で魔の森へ行きます」


「そうか。それなら戻ってきた時に外の門番にカードを提示してくれ」


 そう言われた二人は衛兵に会釈をすると門の外へと出た。


「こっから森までどんくらいありそうだ?」


「昨日は馬車だったからな。歩くと…一時間ちょっとという所だ」


「そんなもんか。まっ、さっさと行こうぜ」


「はぁ、面倒だ」


 バラックはさっさと前を歩き、フリードは未だ距離がある事を憂いながらその後ろをついて行った。

 二人はそれから一時間、特に何事もなく歩くと漸く魔の森が見えてきた。


「おっ、見えてきた。そう言えばお(めぇ)が選んだ依頼を見てなかったんだが何を採取するんだ?」


「あぁ、リリ草とマリ草だ」


 フリードが言った二つの薬草、リリ草は怪我を治す回復薬の原料であり、マリ草は魔力を回復する魔力回復薬の原料である。


「あぁ、あれか。リリ草はまだ頑張れば見分けがつくんだけどマリ草は中々見分けがつかねぇんだよな。おかげで採取依頼なんてお前と組むまでやらなくなったからな〜」


「まぁ普通は採取のベテランでなければ冒険者だと目視だけではマリ草は見分けがつきにくいだろう」


 そう言いながら二人は森の中へと入って行く。

 森の中には二人と同じく採取の依頼なのか、冒険者らしき人達がちらほら見えた。

 二人は少し奥の方へと歩き、人の気配がない事を確認する。


「それじゃリードさん、よろしくお願いします」


 人がいない事を確認したバラックは頭を下げながら頼み込む。


「ふふふ、任せなさい。この魔力可視化魔道具、通称“ミエール君”でぱぱっと終わらせよう」


 そう言いながらフリードはかけていた眼鏡を片手で軽く持ち上げアピールをする。


「…いつも思うんだが何で“魔技師”ってのはネーミングセンスが絶望的なんだ…」


「能力があれば関係ない。それに分かりやすいだろう?」


 バラックの素朴な疑問に答えるフリード。

 ついでに魔技師とは魔道具技師の略称であり、魔道具を作ることに特化した魔法使いの事である。

 フリードは眼鏡に魔力を込めると辺りを見渡す。


「…ふむ、流石にこの辺りにはないか」


「じゃあもうちょっと奥に行くか」


 お目当ての薬草が見つからなかった二人はさらに奥へと進む事にした。


「それにしても腹が減ったな」


「朝食を食べていたはずなのにもうか!?」


 腹をおさえて元気無くそんな事を呟いたバラックに驚くフリード。


「まだ昼前だぞ。そうだなぁ…おっ、ちょうど良い所に。これでも食べておけ」


 フリードは近くに生えていた小さな果実をバラックに渡した。


「何だこれ?」


「知らないのか?アウベリーという果実だ。食べ過ぎると腹を下すが多少は腹の足しになるだろう」


「ふ〜ん。…ちょっとすっぺぇが美味ぇな」


 アウベリーを食べたバラックは元気を取り戻した。

 それからはフリードが魔道具を使いながら歩くのをバラックが辺りを警戒しながら更に奥へと進んだ。


「……おっ、あれは!?」


 フリードが何かを見つけたらしく小走りで向かうのをバラックはついて行く。

 するとそこはリリ草の群生地であった。


「おお〜見つけたな」


「そうだな、リリ草はここにある分を少し摘めば大丈夫だろう。リリ草がこんなに生えているならばマリ草も近くに生えていると思うが…」


 マリ草は基本的にリリ草の近くに生息している事が多い。更に姿形もリリ草と殆ど変わらない為よく間違われてしまう事が多いのであった。


「取り敢えずリリ草を摘むのでラックは辺りを警戒してくれ」


「へいへい」


 フリードはバラックに指示を出すとリリ草を摘み始め、バラックは魔物の気配がないか警戒をした。

 フリードは眼鏡で群生しているリリ草から質の良いのを厳選し綺麗に抜き、抜いた物を魔力で覆いコーティングをする。

 辺りを警戒しながらもその作業を見ていたバラックはフリードに質問する。


「採取の時に毎回思うんだが、薬草が少し光ってるのは魔力を使ってんのか?」


「ああ。質の良い薬草というのは魔力が多く含まれているんだ。しかし抜いてしまうと少しずつ魔力が抜けていくので、こうやって魔力で覆う事で魔力が抜けるのを阻止する事ができるのだ」


「ほ〜、初めて聞いたぜ」


「薬草学を学ばなければ聞く事もないことだからな」


 そうしてフリードはリリ草十本を一束とし依頼分の数を揃え、鞄の中へしまった。


「…よし。後はマリ草だな」


 そうフリードは呟くとリリ草の周りを探し始める。

 するとすぐにマリ草が生えている場所を見つけ出した。


「…ふむ、魔力の含有量、それに葉の先の形からしてまさしくマリ草だな」


 眼鏡で魔力の確認をし、眼鏡を外し目視で葉先を確認しながらそうフリードは呟いた。

 バラックもフリードに近付きマリ草をよく見た。


「…さっきのリリ草との違いが全然わかんねぇな」


「まず魔力の含有量が違う。この眼鏡をかけてみろ」


 フリードはバラックに眼鏡を貸し、眼鏡をかけたバラックはマリ草を見る。


「…何も変わんねぇぞ」


「まぁ待て」


 フリードが眼鏡のつるから魔力を流す。


「…おぉ!?なんか草が赤く光ってる」


「それがそのマリ草の魔力の量だ。こっちを見てみろ」


 フリードは鞄から先程のリリ草を取り出す。


「こっちはさっきのマリ草より色が薄いし光り方が弱いな」


「そういう事だ。だからこの魔道具があれば薬草を見分けることができる」


 フリードはバラックに眼鏡を返してもらうとマリ草の選別にかかる。

 そこにバラックはとある疑問を投げかける。


「けどお前は魔力感知ができるんだからその魔道具はいらないんじゃねぇの?」


「いや、人や魔物の魔力量というのは草木と違い多いんだ。だから感知の魔法では余程の物でない限り草木の感知はできない。逆にこの魔道具で私や魔法使いなんぞを見てみろ。確実に目が潰れるぞ」


「そいつぁ怖ぇな」


 フリードの言葉に驚くバラック。


「後はこの葉先だ。このリリ草と見比べてみろ」


「…う〜ん、よくわかんねぇな」


 バラック二つの薬草を見比べるが違いがわからなかった。するとフリードはバラックに違いを教える。


「まぁ、本微妙な所だからな。ここだ。マリ草にはここの部分だけ色が少しだけ濃くなっていて尖っている」


 フリードが指摘した所をバラックは凝視する。


「…本当だ。確かに違う。すげぇな、よくこんなの分かるな」


「薬草学は興味があって習ったのだ」


 薬草の知識を披露したフリードは再びマリ草の選別に入った。

 そして魔物の邪魔も無くマリ草も依頼の分を確保する事ができた。

 そこでフリードはバラックに話しかけた。


「依頼分は確保できたがどうする?このまま帰るか

 ?」


「いや、まだ昼になったぐらいだろ。飯食ったらもう少し集めようぜ。追加も受け付けてくれるんだろ?」


「そうだな。薬草採取は常に受け付けているはずだから大丈夫だ」


 この後の予定を決めた二人は昼食を摂るために一度森を出ることにした。

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