ある銃撃事件に感じた違和感
あなたがもし人を殺したいと思った時、銃を選択しますか?それとも賛美歌13番をリクエストするとか駅の伝言板にXYZと書き込みますか?
安倍晋三氏銃撃の一報を聞いて「右翼か暴力団関係者かな」と感じたが、「41歳の元自衛隊員」「宗教団体に恨み」「自作銃」等々の情報がすぐに出てきて違和感を感じた。「どうして銃を使ったんだ」と。
銃がスーパーマーケットや通販などで手軽に入手できる国ならその選択はわかる。しかし今の日本は「手軽には」入手できない。
やろうとすればたぶんできる、年間の銃器押収400件前後(警察庁調べ)だから密輸されている銃、それを入手している人はいるだろうから。小説漫画にあるような米軍ルートはたぶんない(と信じたい)が、暴力団ルートロシアルートやモデルガンの改造もありえるし、猟銃ならば審査をパスすれば正規に入手できる。
日本で銃が犯罪に使われるのはほぼ暴力団絡み。政治家へのテロや行政対象暴力でも1990年の長崎市長銃撃事件(拳銃で背後1mから銃撃)と1992年の金丸信自民党副総裁狙撃発砲事件、1994年細川護煕元首相襲撃事件は右翼関係者、2007年の長崎市長射殺事件は暴力団幹部だった。1960年の浅沼稲次郎社会党委員長暗殺事件は右翼少年、1975年の三木武夫総理大臣殴打事件、2002年の石井紘基衆議院議員刺殺事件は右翼関係者、1990年の丹羽兵助元労相刺殺事件は(現場が自衛隊駐屯地であるが)部外者(精神疾患で入院加療中)だった。ちなみに暴力団員が銃を使うのは「ドスの延長」「1〜2mから撃つ」(懲役太郎氏)だそうだ。
それでも拳銃の場合、近距離で撃っても肋骨で弾かれて貫通、致命傷を避けた、なんて事例がある(1990年の長崎市長銃撃事件、など)。報道された自作銃の構成から考えると、今回は、たまたま主要な動脈を金属球(またはプラスチック片)が損傷し、死に至ったと言える(それでも一人死んだのだけど、偶然の要素が高い)。
不思議なのは「元海上自衛隊員」という情報が最初期から報道されたことだ。マスコミさんは「元職だから銃の取り扱いに慣れている」とでも誘導したいのかもしれないが、他国の軍とは違い、海上自衛隊に一任期(2年9ヶ月)いただけでどれだけ射撃の経験があるんだろうね。米海兵隊の日本語版ニュース「海上自衛隊員がライフル訓練」https://www.mcasiwakunijp.marines.mil/News/Article/505009/ に「海上自衛隊員は、この(伏射の)訓練を3ヶ月に一度、受けなければならない」とあり、定期的に経験するのが精一杯で技量向上どころか維持も難しいことが窺える。それに軍なら基本的に小銃であって、拳銃は将校・パイロットの自衛用か特殊部隊用だから(グアムや韓国に私的に撃ちにでも行かなければ)触る機会はないだろう。
多くの日本人にとって銃が身近ではないにもかかわらず、「銃が使われたこと」に違和感を感じにくいのは不思議ではある。ゴルゴ13の影響がそれなりにあるのかもしれない(冗談です)し、昔の小説漫画アニメ映画テレビでは発砲シーンが沢山あったから「銃撃」に違和感が少ないのかもしれない。でも、そうだとしてもテレビの刑事物では西部警察以後(ここ30年以上)はほとんど発砲シーンは無くなったので、41歳で銃を選択する(そして自作する)ってよっぽどのマニアだと思う。仁義なき戦いシリーズとか大藪春彦作品好きなのかな。
さて、
自分がもし人を殺したいと思ったとき、銃を選択するか?と考えると、考慮はしても選択しないと思う。考慮する場合は、ある程度の距離から銃撃して自分は逃走する気の時、ロシアルートなどで銃を入手できる時、かな。後先考えないのなら刃物で直接行くか、爆発物(自作してでも)を使うか、車で突っ込むか。大型のドローンを調達できれば遠隔でも行けるし、猟銃だって時間をかければ正式に許可をとって入手できるから。
自作銃は壁が高い。火薬と弾と銃身とトリガーシステムを用意する必要があるし、試射本番を含め不発や暴発その他の事故のリスクが高いので確実性に欠ける。火薬を作れるなら爆発物の方が容易だし、過激派並みにロケット弾も作れる。同じ火薬量を使うなら、手榴弾かクレイモアを構成した方が殺傷力は格段に上がる。
銃を撃つ自分に、銃撃するって行為に酔っていなければ、自作銃なんて選択しない。
動機や黒幕については触れない。お好きな方がどうぞ。
賛美歌13番をリクエスト〜ゴルゴ13
駅の伝言板にXYZ〜シティーハンター