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序章 亡国の戦記 1

融合した世界(ディオ・ガルズ)にある3つの大陸。その一つであるグラズヘイム。その大陸の海に面した小さな国・ウィンディア王国。この国の王城の一角の部屋から産声が響き渡る。

寝台に横たわる女性は疲労しながらも慈愛に満ちた表情で産着に包まれた我が子を抱いている。

其処へドタドタと慌ただしく男が入ってきた。

男はかなり老齢の様だが、豪奢な身なりで、一目で貴族か王族を思わせる。

「産まれたか!」

「クスクス。そんなに慌てなくても赤ちゃんは何処へも生きませんよ」

男の慌ただしい様子に微笑みながら女性は男と話す。

「いや、いや、この子は我が国の柱となるに決まっておるからな。そりゃ、焦るわい。」

「そうですね、この子はいずれこの国に無くてはならない存在に成る筈ですから…。」

女性はそう言うと複雑な表情を浮かべる。

「…済まん。お前を苦しめる様な事をしてしまった事を忘れていた。」

男はそう言うと頭を下げた。

「止めてください。その事は私も同意した事です。言うなれば私も同罪なのですから。」

「…そうか…そうだな…」

「それに…」

「それに?」

「この子はこの子ですから。やっぱり、この子を見ていると嬉しくて」

そう言うと女性は男を見る。

「ありがとう」

男の呟きに女性は微笑む。

男はこの国の王で想王と呼ばれている。女は想王の側室でリナといった。


「おお、そうだ。この子は何と言う名前にしようか?」

「この子の名前は…ユイ。ユイにしましょう。」

「ユイ?変わった名だな。お前の国の名か?」

「ええ…」

「そうか…。お前がそうしたいならユイ…と名付けよう。」



―それから3年後―


(王城・王の間)

…コンコン

想王が雑務をこなしているとドアがノックされた。

「誰だ?」

「父上。私です」

「フィーンか。入れ」

想王が許可するとフィーンと呼ばれた白銀の髪の青年が入ってきた。

「どうした?」

「は、実はオアノス神殿国より書状が参りました。」

「ほぅ、彼の国は我が国を嫌っておったはずだが?」

「はい。我が一族は邪神の使徒が祖先故…」

「うむ…」

「ともかく、この書状をお読みください。」

想王はフィーンから書状を受け取るとすぐに一読した

「オアノスはどのように?」

「来月にあるわしの即位記念祭に両国の親睦の為にラッセル伯が来るそうだ」

「ラッセル伯が!ラッセル伯と言えばオアノス四傑の一人ではないですか!」

「うむ」

「父上、これは罠ではないでしょうか?だいたい、今まで敵対してきたオアノスが親睦を求める事自体おかしな事ですから。」

「うむ…。とはいえ、向こうが親睦を求めるのを断る訳にはいくまい。それに、ラッセル伯はオアノスの中でも親ウィンディアの中心人物だ。」

「…」

「まあ、そう心配するな。念のため警備は厳重にしておくとしよう」「わかりました。全兵士に当日の警備を厳重にするよう通達しておきます。」

「うむ。頼むぞ」

「では失礼します。」

フィーンは軽く会釈すると部屋を出ていった。

想王は視線を窓に移すとほぅと溜め息をついた。



………………

「警戒などいくらしてもこの難を父上は逃れられまい」

部屋を出たフィーンは笑みを浮かべていた。

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