小話 スキルと白猫
朝起きると隣にシャーリーがいる。
幸せだ。
寝ているシャーリーにキスをする。
「ん…」
と、言いながらゴソゴソ動いてまた寝る。
もう僕の奥さんは可愛すぎる。
新年から二週間たった。
学校へ行く日々が戻ってきていた。
前と違うのはシャーリーは僕の奥さんになったということだ。朝食も学校行く時も帰る時も宿題する時も夕食も夕食あとの談話もお風呂…あ、いや一回だけ…シャーリーが嫌がるから…夜寝る時もシャーリーと一緒だ。
最近どうも気になることがある。
指先に魔力を貯めてホイっとしてみる。
風が舞う。
何だか以前より魔力が増している。
何故だ?
「魔力って突然強くなったりするのかな?」
変わったことといえばシャーリーがいること。
それだけ。ん…わからないな。別にシャーリーが魔法使っているわけないし…。
寝ているシャーリーをじっと見るがわからない。
「誰だっ!」
ふと横に何かの気配を感じた。
「は?猫?」
いつのまにかベッドの下に白い猫が座っていた。
少し縦縞に模様が入っている。眩しいくらい白い。
「どこから入ってきたんだ?って…お前…魔獣か?」
そいつはすっと立ちあがり近づいてきた。
「その子とずっといてそんなことも知らないのか。」
「なんで魔獣が僕の前にでてくるんだ?」
赤と青の魔法を使うものは魔獣と契約できる。
しかし魔力が強くなければならない。
兄様は銀のライオンがいる。
母上にも綺麗な七つの色に輝く鳥、鳳凰がいる。
姉上はウサギみたいなのがいたな。
僕は養子だから魔力が足りない。
多分父上にいないのは僕と同じ理由だろう。
「オレはいつも彼女の隣にいた。君の魔力が強くなったから見えるようになったんだ。」
「強くなったって…やっぱり、でも何で?」
「ん…ルース?朝?」
「あっ、シャーリー…まだ大丈夫だよ。もう少し寝てて。おやすみ。」
僕はシャーリーの額に軽くキスをして
彼女がまた心地よい眠りに落ちたのを確認してからベッドから出て、秘密の仕事部屋に彼を連れていった。
「で、何なの?」
「あの子の魔力は心地いい。」
「シャーリーの魔力?ってあまり感じないけど…。学校の実技のテストはギリギリなんだよ?彼女に魔獣が懐くほどの魔力はないよね?」
「もうこれだから人間は嫌だ。」
白い猫は首を振った。
「今のお前ならわかるんじゃないか?」
「ん?」
僕は首を傾げた。
僕の魔力が強くなったのはやはりシャーリーのおかげと言っているのか。
「まあ、あいつは自分では魔力は使えない。他人の魔力をあげる力だ。だからそばにいれば魔力が上がる。」
「へっ?使えないの?」
「そうだ。そこに存在しているだけでよい。
あいつの魔力を取り込めば取り込むほど魔力があがるんだ。だからお前の魔力が高くなっただろ。」
「んー。つまりシャーリーが近くにいれば魔力はあがる。僕もシャーリーの側にいたからそこそこの魔力があったってこと?」
「そうだ。もともとは少ない方ではなかったが人より少しあるくらいだった。しかし三年前あいつのそばに居るようになってからお前の魔力はかなり上がったんじゃないか?まあ、相性もよかったんだろう。さらにこの1ヶ月毎日抱いて魔力に絡んでいれば凄まじく力が増したはずだ。」
そうだ確かに最近だ。
魔力が湧いてでてくるように感じたのはこの数週間前くらいからだ。シャーリーを抱いて寝るようになってから少しずつ感じていた。
「えっ?じゃあ君はずっとシャーリーの側にいたの?」
「そう言っているだろう。あんな美味しい魔力はほっとけない。いろいろな魔獣が狙っていたが睨めば去っていった。」
「睨んだ…って君は強いんだ。
シャーリーといれば僕はもっと強くなるのかな?」
「限界はある。器が大きければ大丈夫だ。まあお前はまだまだ余裕はある。もう少し強くなることができる。」
「シャーリーを離すことはないしね。」
「魔力を持つものはあいつの魔力を無意識に欲しがるんだ。
引き寄せられるんだ。」
て、言うとヒロインパワーの原因はそこなのか?
それがシャーリーのスキルなのか?
「魔力には人の心が一番影響する。あいつの魔力は穏やかで包まれていると心地よいのだ。あいつが心優しいからそういう柔らかな魔力になるんだ。」
だからみんなシャーリーに惹かれていくんだ。
僕はそれ以上にシャーリー自身が好きなんだけどね。
「ねぇ、せっかくだから僕と召喚獣の契約しない?」
「悪くない提案だ。」
「そうなんだ。」
「お前と組めばいつでも彼女の側にいれるからな。」
魔獣は本来普通の人には見えないし、触れられない。
しかし召喚獣の契約をすると人との繋がりができて
その存在が見えたり触れたりできるようになる。
ずっとシャーリーの側にいるんだろう?
だったらこの上ない護衛だ。
「じゃあ交渉成立だ。」
魔力が強くなったから契約魔法が簡単に展開する。
魔力を高める。目が少し熱くなり赤くなったのがわかる。
「ルーズローツ=ディ=サー=ザインが命ずる。
偉大なる白の使いムーシェルよ。我に従え。我とともにいる事を誓え。さあ真の姿を我の前に表せ。」
赤い風が吹いた。
小さな白猫は次第に姿を変えていく。
おや?猫じゃなかったんだ。
白い虎か??
赤い風は僕と彼を包み込んで消えた。
「君は白虎だったんだ。ムーシェルって言うんだ。でかいな。」
軽く僕の二倍はある。
先ほどの可愛い猫とは違い白い毛をふわふわさせ
牙がするどく金色の目が輝く。
迫力のある白い虎が目の前にいた。
「まあよろしくな。」
「こちらこそよろしく頼む。」
白虎は母上の鳳凰同様、魔獣の4の指に入るくらい強い。
そんなヤツ手を手に入れてしまった。
シャーリーのヒロインパワーは本当にすごいや。
でもそれも君が優しいからなんだ。
正モードの悪役令嬢のままならこんなことは起きなかっただろう。
まあ本当に感謝してもしきれないな。
「あら、ルース?この子は何?」
朝開口一番はその言葉だった。
「シャーリー、おはよう。愛してる。
朝起きてすぐにその言葉は嫌だな。」
「えっ…あ…ルース…私も…愛してる。」
真っ赤になって可愛い。
すぐにシャーリーの唇を貪る。
言われてみれば何かシャーリーから暖かな物が流れてくるのがわかる。これが彼女のスキルだったのか。
「ムーシェルね!ムーって呼んでいい?」
シャーリーがムーをギュッと抱きしめた。
ちなみに普通は猫サイズだ。
「ルースの召喚獣さんなのね。私ともよろしくね。
可愛い!もうすごく可愛い。白くて可愛い!」
いやいや君の方が何倍も可愛いよ。
彼女の胸に顔を埋めてゴロゴロしているムーシェルに嫉妬しか感じなかった。ペロリとシャーリーの首筋を舐めた。
バリっと剥がしてポイっと捨てた。
「心の狭い人間は嫌われるぞ。」
しかしその後、真の姿に戻ったムーシェルに
「モフモフだ!」
と言ってぎゅうぎゅう抱きついて、昼寝の時にその身に包まれて寝ているシャーリーが幸せそうで何も言えなかった。
「おー!ようやく会えたな。」
「お前には見えてたな。」
「いつもシャーリーにくっついていたよな。
しかしお前白虎だったのか?チビの白猫だと思ってたな。」
「兄様には見えてたんだ…。」
「まあ弟のことよろしく頼むな。」
「仕方ないな〜頼まれてやるよ。」
上から目線かよ!!
「タチヒア!私だけ召喚獣がいない!慰めて〜!」
ヒロインスキル回収させていただきました!




