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その4 先生の部屋にて 

シャーリー視点……長いです。

切れませんでした。すみません。

先生にみんなに配るプリントを渡された。

明日の朝、配って欲しいらしい。


このチャールズ=ボガルノ先生は政治経済を教える人だ。

各科に共通の教科になる。

主に貴族が通うこの学園なら当然か。

先生は現宰相の息子なのだが実の息子ではない。亡くなった友人の子供を引き取ったと聞いた。

これこれ!宰相の養子。よ・う・し!!これ大事。

親切にしてくれるけど自分はやはりこの家族には入れない。どうしてもある目の前の壁に寂しを感じている。

暗い闇を持って暮らしているところにヒロインが太陽のように現れる。ヒロインは彼に同情しやがて恋に落ちる!ってそうよ。彼も攻略対象だわ。チェックしなきゃ。

初日からヒロインも見つかって、攻略対象にも会えて順調。


あらよく見ると少し大人の雰囲気漂う落ち着いて守ってくれそうな優しい笑顔だわ。

あ〜よいわ。ヒロインってばイケメンばかりに囲まれて羨ましい。用事も済んだし、ルースが待ってるから帰ろう。待たせてしまったわ。


私は頭を下げて扉のノブに手をかけた。

ガチャ、ドアが開いた。自動ドア??

目の前にはドアを開けたらしい金髪の背の高い男の人がいた。

「ん?ここはボガルノ先生の部屋ではないのか?」

「大丈夫です。あってます。先生はあちらにいらっしゃいますよ。」

私は彼に道を譲った。彼は部屋に入って扉を閉めた。

あ、私は帰るタイミングを見失った。

彼を見た先生は慌てて深い礼をとる。

「ああ、チャールズ、悪いな。突然来てしまって。頭を上げろ。」

??誰?先生がこんなに低姿勢で対応するのは?更に偉そうな!ん?えっ?

誰でもいいけどもしかして私も頭下げなきゃならない!

先生が頭下げるほどの人じゃない!不敬罪で牢獄行きになる!

金髪の男の人は先生に向かって歩いていったが、途中振り返り私をみた。私は笑顔を貼り付けてから頭を下げた。

「ああ、生徒がいたのか。悪かったな。邪魔だったかな?君も顔をあげてもよい。」

私はゆっくり姿勢を戻し彼を見た。

すこし猫っ毛のふわりとした金髪に碧眼…?背が高く、年上の清廉された雰囲気。只者ではないオーラ。

えっ!ちょい待ち。


王太子殿下!!!?


私は引きつった笑顔を張り付けて笑うしかない。そして扉の横にある本棚の前にすすすっと移動した。

「殿下、今日はどうなさいましたか?あなたはもう卒業されたはずですが?」

「ああ、以前お前の部屋で読んだ本をもう一度読みたいと思って探しに来た。」

「それなら誰かに頼めばよろしいかと…」

「いや、題名を忘れたから自分で見たほうが早いと思ってな。茶色の分厚い本だ。未来のことについて考察された本なのだが……。」


何か今大事な事を聞いたわよね?卒業したって言わなかった?王太子殿下はもう卒業されてるの!なんたる失態。私のチェックミスだわ。それじゃあヒロインと会えないじゃない。でも今、チャンスじゃない!ヒロインはどこ?あなたもプリント取りに来るように呼ばれているんじゃない?

早く!あっ、じれったいわね。帰っちゃう!呼びに行こうかしら。


「ちょっとそこの後ろの棚見たいんだが。」

王太子殿下が私に向かって話しかけてきた。トリップしていて気づかなかった。いつの間に私の前に来たんだろう。

ルースにはあれほど人前ではあまり考えないよう気をつけるように言われてたのに。王太子殿下はクスリと笑った。

恥ずかしい……。

「あ、申し訳ございません。」

私は少し横にズレた。

「ん…ここらへんにあったはずなんだが…結構古くて、何だったかな?ブルツマイツ?そんな作者だったような気がするんだが…」

王太子殿下の言った本に記憶がある。

『ブルックハイツ……か……難しい本、読むのね。やっぱり攻略対象だわ。さすがね。』

「お前!その本を知っているのか?」

「は?あっ!」

突然大声で聞かれたので私はビックリしてプリントを全て落とした。どうも声に出ていたらしい。


私は確かにその本を家で読んだ。前世から本は好きだった。この世界に来た後はテレビもないし暇な時には結構読んでいた。このブルックハイツさんって作者は歴史学者なんだけどかなり先見の明を持っていて、先駆者的な存在だった。魔法がやがて車を作り出し、更には飛行機や船も作り出す。今はある程度の魔力を持つものだけしか使いこなせない魔法石だって、改良されて簡単に使えるようになり、生活は楽になっていく。つまり洗濯機とか冷蔵庫、通信機器が溢れ出す世の中になるとか書かれていたから前世の生活を思い出し私には楽しかった。

「はい、読んだことがあります。楽しい本ですよね。」

「楽しい?ご令嬢はあまり読まないと思っていたが、珍しい毛色がいたものだ。お前、名は?」

今日は何回自己紹介するんだろう。名札欲しい。

「シャーロレット=ディ=サー=ヴィクセレーネでございます。以後よろしくお願い致します。」

会釈して、すっと王太子殿下から視線を逸らし、棚を見た。

「あっ!これ。」

私は殿下のすぐ横に『ブルックスハイツの未来歴史論』と書かれた本があったので棚から抜き出して高くかがげた。

「殿下!これではないでしょうか!」

私は思いっきり手を挙げたがあまりにも本が重くてよろけてしまった。

「危ない。」

とっさに殿下が私の手を掴み引き寄せてくれた。倒れなくてすんだ。しかし私の顔は殿下の胸元に飛び込んでいた。

抱き留めるために殿下の手が背中に回されていた。抱きしめられる形になってしまった。

見つけたのが嬉しくて何も考えなかった。殿下のすぐ横にある本をとったということは私のすぐ横には殿下がいるということだ。

「すみません。見つけたのが嬉しくて慌てました…」

私は殿下の胸から顔をあげた。碧眼がじっと私を見ていた。

近い。かなり顔が近い!私の顔はかなり真っ赤になってるはずだ。なかなか殿下は視線を外してくれない。それどころか

殿下は片手をわたしの頬に置いた。そして目を細めた。

えっ?何?何?

「殿下?ヴィクセレーネさん?大丈夫ですか?」

ボガルノ先生が心配そうにしていた。

殿下の力が緩んだので私はすかさず殿下から離れた。

「すっ、すっ、すみません!ああのこれっ…」

差し出した本を受け取るとじっと見て嬉しそうに笑った。

「ああ、これだ。よかった。ありがとう。」


殿下は本を隣の机に置いてプリントを拾い始めた。

いけない!殿下に拾わせるなんてそれこそ不敬罪!私も慌ててプリントを拾う。最後の一枚に手をかけたらちょうど殿下も同じプリントに手をかけた。

ちょっと手が触れた。!!慌てて手をどかそうとしたが何故だか殿下は私の手を握った。

「これで、最後だね。」

「あ、ありがとうございます。」

顔が熱い。いけない!笑うのよ。笑わなきゃ。私は目一杯の微笑みをつけて殿下の手からプリントを受け取った。

殿下も微笑んだ。ふわっとした。超最高レベルの笑顔を貰ってしまった。

「君は何だか面白い子だね。」

「それは褒め言葉と受け取ってよろしいんでしょうか?」

「そうだね。」

「ではありがたくお言葉ちょうだいいたします。」

「ん?ちょっと待って。ヴィクセレーネ公爵のご令嬢と言っていたよね??」

そうさっき名乗りましたが?私は軽く首を縦に振った。

「じゃあ君がルースの…?」

「ルース??ザイン侯爵家のルーズローツ様のことですか?ええ、ルーズローツ様とは幼き時から仲良くさせていただいております。」

「へぇ、君か。ルース自らお願いしたって言うご令嬢は。ルースもいいところを持ってくね。というか君だったんだね。惜しいことをしたな。」


??みずから??もってく?おしい??何だ?今日は何だか分からないことだらけだわ。王太子殿下の視線が何だか痛い。そして私は部屋を出た。


廊下を歩きながら考えていた。

やだやだ、不可抗力とはいえ、殿下に抱きついちゃったわ。まだドキドキしてるし、顔が熱い。

久しぶりの感じだった。大きいかった。やっぱり鍛えているんだろうか固かったな。こんな感じいつぶりだろう……。暖かくて、すごく安心した。


ルースが大きくなるとあんな感じになるのかな?金色の髪。海のような青い瞳…。何だか更に顔が熱くなってきた。

大人になったルースかぁ。きっと王太子殿下よりかっこよくなるんだろうな。その時わたしは少しは綺麗になってるのかな?


ん!違う!3年たったら私は国外追放されるのよ。卒業の年に断罪されて自由きままライフにGO!よ。ルースの隣になんてないわ。

ルースは攻略対象なんだから、ヒロインに恋をしたら、私がいくら彼を好きになっても私は捨てられる。そんなのは耐えられない。だから恋しない。あなたにも他の誰にも恋はしない。


ん?結局ヒロインは現れなかったわね。

もう!攻略対象に私だけ出会っても意味ないじゃない。

王太子殿下のルートはないのかしら?




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