その30 温室にて ルース視点
僕はゆっくり箱を開けた。
フワッと白い布が舞い上がった。
「シャーリー!?これは?」
箱を開けて中身が見えた。
我慢するために顔が歪んだ。もう今にも泣き出しそうだった。
「リボンのことをレイクルーゼ様に教えてもらった後にカトレア様に聞いたの。あの方も卒業したらすぐに生徒会長さんと結婚するんだって。この国には結婚式のヴェールは自分で作ると幸せになれるって言われてるの。だから授業後、カトレア様と一緒に作ってたの。頑張ったのよ。何度も針で手を刺しちゃったわ。私はあまり裁縫得意じゃなくて、カトレア様にだいぶ迷惑かけたわ。」
指をみせて彼女は微笑んだ。
「だから最近。帰りに教室に行ってもいなかったんだ。」
彼女は軽く頷いた。
「それとその下の黒いのも。」
「下?」
ゆっくり白い布を退かした。そしてその下から四角い黒い革の箱を取り出した。
「開けていい?」
彼女が頷くのを見て、ゆっくり開けた。
「それは私が生まれた時にお母様が買ってくれたネックレスのものなの。生まれた時に瞳と同じ宝石をプレゼントするらしいの。そしたらやっぱりこれも幸せになるんだって。だから亜麻色のダイヤ。まあ、それは宝石屋さんに出して直してもらっただけなんだけど?」
「そんな大事なものを…」
「ううん、1番大事なのはルース。だから私を今まで守ってくれたこれは今度はあなたを守ってくれるの。お母様も賛成してくれたわ。だって私のことはあなたが守ってくれるんでしょ?それに大丈夫。まだ二つ残ったからそれはイヤリングにしてもらったからちゃんと私の手元に残るわ。ほらもう一つ赤い箱があるでしょう?」
もう一つ下にあった小さめの赤い箱もあけた。
亜麻色のダイヤのイヤリングが入っていた。
しばらくは感動して何も言葉が出なかった。
だって何かを口に出してしまったら涙が出てしまう。
「シャーリー、ありがとう。」
彼女を思いっきり抱きしめてきた。もう離せない。
「やっぱり僕には君しかいない。愛してる。」
「ルース…く、苦しい。」
「ご、ごめん。嬉しすぎて。シャーリーがすごく僕のこと考えてくれてたんだなって思ったら嬉しくて…」
「ルース…」
やっぱりダメだ…。泣いてしまう。
「やだな。何かシャーリーかっこよすぎ。」
彼女は僕から離れて手を広げた。
「ルース、被せて。」
箱から白いふんわりしたヴェールを取り出して広げた。
温室のガラス越しの光を受けてビーズが輝く。
白い布が綺麗に光に照らされる。
ソフトチュールの生地に刺繍が入っている。淡紅色と露草色、白色の糸。薔薇の花の刺繍。縁取りもその三色。シャーリーが好きそうなパステルカラーだ。淡いふんわりした感じに出来上がっている。綺麗だ。
「ちゃんと、青と赤にしたのよ。だから本番には使えないかも。でもどうしても2色入れたかったの。カトレア様には不思議がられたけどね。」
彼女の髪の毛を整えてからパサリとヴェールを被せた。
もう彼女がどこかの女神様に見えてくる。青と赤の刺繍が白い生地に浮かぶ。二つの色が僕の愛しい人を包み込む。
「シャーリー…綺麗だ …。僕の色。」
ヴェールを少し上げて耳元と首筋に軽くキスをする。そして両手を頬に当てた。彼女も僕のその手に自分の手を合わせた。額をコツンとつけて来た。しばらくお互いに幸せん感じていた。暖かい気持ちでいっぱいだった。本当に彼女を好きになってよかった。
「僕のものはめて。」
「ん。」
彼女に腕を差し出した。丁寧に元から着いていたシャツのボタンを外す。そして代わりに亜麻色のダイヤが光るカウスボタンがはまった。自分の腕に彼女の色が光っている。更に嬉しさがこみあげる。
「シャーリー…ありがとう。さあ、これも。ほら。」
赤い箱からイヤリングを取り出した。彼女は自分でヴェールと髪をかきあげる。その首筋が白く、艶かしく、両耳を付けた後、軽く顔を埋めた。
座っていたシャーリーの両手を掴んで立たせた。
そしてすっと手を掴んだまま彼女の前に立ち膝をした。
彼女をしたから見上げる。
少し彼女の亜麻色の瞳が潤んでいる。
「シャーリー、綺麗だ。何があっても手離せないよ。」
「ルース…」
「ほら、まだ泣いちゃだめだよ。誓いのセリフが言えなくなるよ。」
「うん…」
僕は目を閉じて深呼吸した。そして再び目を開けてシャーリーを見つめた。
「シャーロレット=ディ=サー=ヴェクセレーネ。私ルーズローツ=ディ=サー=ザインは君を愛してる。君と共にある未来を…。愛してる。シャーリー、もう君を離さないよ。」
シャーリーの目からは大粒の涙が落ちてくる。
彼女もやはり一度目を閉じて少し小さく息を吐いた。
そして目を開けて僕を見て笑った。
「ルーズローツ=ディー=サー=ザイン。私シャーロレット=ディ=サー=ヴェクセレーネはあなたを愛してます。あなたと共にある未来を…。ルース、あなたとずっと一緒にいたい。愛してる。」
僕は彼女の手の甲に口づけた。
「シャーリー…」
立ち上がり、彼女の額にコツンと自分の額を合わせた。2人で笑った。この先一緒にいるんだ。この笑顔は僕のもの。僕だけのものだ。
「シャーリー、ずっと側にいてね…」
「ええ、いるわ。あなたの側に…」
彼女の頬に流れる涙を拭きとって優しく唇にキスを落とした。
温室の彩とりどりの花が日の光で光る。シャーリーのヴェールの青と赤の薔薇も光っている。むせ返るような花の臭いの中、僕達は永遠に一緒にいると誓いあった。
「うううっ…」
ん??
「ううう…お嬢様…素敵です。お綺麗です。」
「まあ、ルースも頑張ったな。」
「シャーリーはやっぱりお嫁さんに来てくれるのね。」
…って!!まさか!!
「あら、見つかってしまいましたわ。エドワード。」
「父上!母上!!」
「えっ?サンドラ?」
ん!!ガーシュインも使用人も何でみんないるんだよ…。
「お父様!ちゃんと録画しておきましたよ。」
「母上こっちからもバッチリです。」
「姉様!!!兄様!!」
※ちなみにカールは母親から〝集合〟の連絡を受けてすぐにやって来ました。
初め、この話は小話として書いてありましたが
どうして本編に入れたかったので
いれてしまいました。
終話は34に変更になります。
よろしくお願いします




