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その26 暗い部屋にて ルース視点

ようやくシャーリーに渡すドレスが出来上がった。 

今度の王太子とレイクルーゼ嬢の婚約祝いの舞踏会に着てもらうように作って貰っていたものだ。

僕の色である青のドレス。当然宝飾品や靴、リボン全て揃っている。シャーリーは身一つだけでいい。これを着て僕の隣に立ってほしい。

今日渡したら絶対にシャーリーに言うんだ。君は僕の婚約者だったんだって。

今まで黙っていたことを謝るんだ。

きっとシャーリーは笑って許してくれる。

きっとシャーリーは喜んで受け入れてくれるはず。

さあ!気合い入れていこう。


えっ~と、まず初めは

「今度、婚約パーティの・・」

あ、なんか自分達の婚約パーティのようだ。やり直し。

「王太子とレイクルーゼ嬢の婚約祝いのパーティのドレスを持ってきたんだ。」

よし!それでいこう。ん?なんかおかしくないか?

「王太子とレイクルーゼ嬢の婚約祝いのパーティでこのドレスを着て、僕と一緒に行ってほしいんだ。」

よし!!これだ。するとシャーリーがきっと恥ずかしがって・・・


バタバタバタ!!!バタン!ダダダッ。

ん?なにやら1階が騒がしいな。何かあったんか?

まあいいや。次!!

「君を僕の婚約者としてエスコーとっ・・」

「ルーズローツ様!」

バタンと扉が開いた。

ん?何だ?せっかく今日の流れを考えていたのに騒がしいな。

執事ガーシュインが部屋に飛び込んできた。

「ノックもせずに騒がしいな。ガーシュイン何だ?」

「ルーズローツ様!大変です。

今ヴィクセレーネ家のサンドラから連絡が入りましたがシャーロレット様がいなくなったようで!」

「は?」

「シャーロレット様が何者かに連れ去られたようです。」

何だって?シャーリーがいなくなった?

「サンドラの話ですと庭を一緒に散歩していた時、突然寒くなり意識が無くなり気づいたらシャーロレット様が居なくなっていたようです。」

「寒くなった?」


母上が慌てて部屋に入ってきた。

隣には姉様がいる。

シャーリーのドレスや小物を確認してもらいたかったから僕が呼び出していたのだ。

「ルース!ルース。まだいたのね。よかった……。シャーリーが攫われたって!!」

「僕も今聞きました。」

かなり低い声が出ていたと思う。自分を抑えるのがやっとだ。

姉様が叫ぶ

「氷の魔族……リンデトレスよ!」

「やはり…そうですか…まだ氷の魔族はいたんですね。」

寒いと聞いた時そう思った。

「少し前にクーデターを起こすような動きを見せていたので要請を受けてみんな捕まえたはずなのに……」

「別荘に行った時の案件ですか?」

「ルース!なんでそんなに落ちついているの?シャーリーが、氷の魔族に囚われているかもしれないのよ?」

「エルシー…」

母上が姉様を止めた。母上にはわかっているんだ。

人って感情が頂点に達すると取り乱さなくなるんだ。

絶望、怒り…どっちの感情が僕を占めている?

初めて知ったな。結構冷静になれるんだ。

しかし頭の中が真っ暗になっていくのがわかる。


ああ、絶望の感情…か。

僕を覆い尽くすのは。


「何かシャーリーの居場所の手がかりはあるんですか?」

母上と姉様は首を横に振った。


続いて若い使用人が走ってきた。

「奥様!今靴屋のマルクと連絡がとれました!

彼はずっと監禁されていたようです。マルクの話だとどうも青の魔法使いです。また、娼婦が一人行方不明です。どうやらそいつに連れて行かれたようです。」


たしか数日前父上がマルクと連絡が取れなくて心配していた。あれは何日前だったかな。


娼婦…?ああ、ルピアのことかな。なんでそう思うかわからないが確信が持てる。

多分シャーリーを連れ去ったのはルピアが絡んでいる。


じゃあ狙いは僕?


僕が彼女に気持ちを向けなかったから?

シャーリーが邪魔だから?

自分の思い通りにならないから?

なんでそんなに僕に執着するのかな?無駄なのに。

僕はシャーリー以外いらない。シャーリーしかいらない。


もう心が真っ暗だ。君は何処なんだ?

僕はどうしたらいい?


「ルース、ごめんなさい……。私達の手落ちだわ。

逃げた人がいたのは後からわかったの。探してはいたのだけどなかなか見つからなくて。数日前シュライン騎士団長のところのルキシスから気になる事を聞いていたのに…。」

「お母様落ち着いて。」

「私達のせいでシャーリーを危険に晒してしまったわ。」

「数日前?」

「街で、氷の気配を感じたって…。」 

街?ルキシス?10日ほど前にシャーリーと王太子殿下とルキシスは街にいた。その時に氷の魔族はシャーリーに目をつけたのか。

「何故、何故僕に言ってくれなかったんですか?

狙いはシャーリーだって知ってたってことですよね。」

「エドワードがまたあなたが無茶するからって…」

「ルース、お父様はあなたを心配してるのよ。」 

「あと少しだったのよ。もう少しで捕まえられるはずだった。」


僕に言ってくれれば…

僕が知っていたら…

僕が父上が信頼できるくらいしっかりしてたら…

僕のせいだ。もっとしっかりしなきゃいけなかったんだ。


「父上は?」

「王宮に行ってるの。よりによって、何でこんな時に。」

「ひとまずお母様落ち着いて。ガーシュイン、王宮のお父様に連絡をして!あとカールにも!急いで!!」


考えが纏まらない。

姉様が的確な指示をするのを見ていただけだ。

心が冷たく闇に閉ざされていくのがわかる。


君は怖がっていない?寂しくない?

痛いことされていない?

泣いてない?

僕を呼んでくれている?


僕はダメだな。

何もできないや。


シャーリーを失ったらどうなる?

シャーリーが隣にいないと僕はどうなるんだろう。


目を閉じると光も差し込まない真っ暗な部屋で一人うずくまっている自分が心にいた。






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