幕間 ルースのつぶやき
幕間ルースです。
19時 幕間ルース
20時 小話 ルース
1日二話。まだ、がんばれています。
雨も上がり空には青空が見えてきた。虹がかかり、湖の水面がそれをきれいに映し出す。
「シャーリー、僕も君が好きだ。ずっと僕の側にいて。」
「ルース。」
シャーリーの目が潤む。頬を包んでいた手で彼女の顔をあげる。愛しい婚約者に近づく。シャーリーは目を閉じる。
柔らかな彼女の唇に触れる。暖かい。ようやく彼女を手に入れた。彼女の心を手にいれた。
「シャーリー、君を愛してる。もう離さない。」
「ルース…私も愛してる。離れたくない。」
「実は…黙っていた事があるんだ。先に謝らせて…」
シャーリーは首を傾げる。
「何?改まって。」
「実は3年前に君の家にお願いして、君と婚約させてもらったんだ。」
「えっ?!」
シャーリーは驚いたようで亜麻色の瞳をパチクリさせる。
「黙っていてごめんね。」
「ふふふ、大丈夫。だってルースのこと大好きだから嬉しい。」
「シャーリー…新年開けたら16歳だ。君とすぐに結婚したい。」
「ルース…私も同じ気持ちよ。少しでも早くあなたと一緒にいたいわ。」
シャーリーが再び抱きついてくる。
「シャーリー、愛してる。」
彼女の目は涙で潤んでいる。
もう一度見つめあって、キスをする。二人で見つめあって笑う。
僕は彼女を優しく抱きしめる。
〈完〉
……って筋書きだった。
あ〜もう何だよ!
お約束すぎるだろ!僕の純粋な心を返してくれ!
やはりシャーリー相手だとどうも思い通りにいかない。
って他の人に試したことがないので分からない。
僕のシナリオが悪いのか?どこをどうしたらよかったんだ!
別荘から帰ってきて今頃シャーリーとイチャイチャしてる予定だったのに。あの柔らかい唇に触れて、愛を囁きあっている予定だった。
…だったんだ!
あの時もっと力づくで行けばよかったのか?
あ、いや。きっといかないな。だって相手はシャーリーだ。
真正面から行ってもひらりと向きを変えさせられてしまう。
まあ、だからシャーリーといるのは楽しいのだけれども。
別荘から帰って一週間経っていた。
確実にあの雷の日から僕達の間で変わったことがあった。
「シャリー、今日の服可愛い。」
と言うと以前は あら?そうかしら。サンドラのセンスがいいのよ、言っていたのが、今は真っ赤になって下を向く。
どどめに
「赤くなって、シャーリー可愛い。」
と言ってみる。
「…あ…ありがとう…。」
なんかお礼を言われてしまうのだ。
そんなシャーリーは本当に可愛い。もう可愛すぎて我慢できない。だから僕はシャーリーの頬にキスをする。彼女は更に真っ赤になって怒るがあまり嫌そうじゃないんだな。
手を頬に当ててしばらく一人で笑ってる。嬉しそうなんだけど、違うかな?
これがこの頃の僕らの日常だ。
なんか焦ったいんだけどな。
もうどこから見ても恋人でしょう?なんでまだ幼なじみって肩書きなんだ?
君は僕の事が好きなんだってやっと気づいたでしょう?だったら早く受け入れてよ。
ダマガランの王太子とは廊下ですれ違う時に挨拶する程度で今のところは平和だ。と、いうかダマガラン王太子殿下の護衛が困っている。夕方になると決まって王太子殿下とルキシス護衛隊長が居なくなるらしい。まあ、1時間くらいで戻ってくるらしい。「王太子殿下も息抜きはしないと。ずっと監視がつけられていたら疲れてしまう。」と、ルキシス護衛隊長は言う。更に彼は「1時間もあれば愛を語れるからな。」と笑う。
命を狙われてるのにそんな呑気でいいのか?ルキシス護衛隊長はそういうことに関してはあまりにも寛大すぎるよ。
そういえばもう一点気になることがある。
シャーリーがこの頃こそこそしている。
本来なら僕が迎えにいくまで毎日毎日悪役令嬢になる計画をたててながら教室で一人百面相を繰り広げている。計画だけで全く実現されないが…。しかしこのごろ授業が終わって迎えいくといない。
おかげで僕は授業後、裏庭のベンチで本を読みながらシャーリーを待つ事が多くなった。
1時間くらいするとベンチにやって来る。
どうしたの?と聞いても「ちょっと…」「レイクルーゼ様のとこ」「教科委員でね。」とかはぐらかされる。
僕に隠れて何かしてる。
まあ少しの間は黙っていよう。
煩い男は嫌われるからね。
だからベンチに座りながら一人考える時間が出来た。
やはり考えることはゲームのことだ。
ゲームって何なんだろう。
転生?小説?ヒロイン?婚約破棄?追放?スローライフ?断罪?攻略対象?フラグ?
君にはたくさん訳の分からない言葉を教えてもらったよ。
12歳の僕には衝撃な内容だ…。
なんか他にも微妙な言葉も言ってたな。
監禁?絶倫?アンハッピーエンド?逆ハー?闇落ち?メリバ?
まあいろいろあるね。
シャーリー、知ってる。僕は優しくない。意地悪なんだ。
僕が婚約者なんだから君の夢は妄想にしかならないのはわかっていた。君が楽しそうに話す夢物語を頭では全て即否定していたんだよ。
王太子殿下と婚約して……しない。だって君は僕の婚約者だ。ごめんよ。本当ならそうだったんだけどね。
婚約破棄して……しない。だって婚約者である僕は君を絶対に離す気はないらね。
悪役令嬢になって…ならない。性格的に無理でしょう?そろそろ気付こうよ。
国外追放されて……されない。だってまず君は悪役令嬢になることはないから断罪なんてされないし、ずっと僕の側にいるんだから。
森で調合師になって……ならない。調合師になることは百歩譲って折れても森は暮らすのはないよ。僕は家的に王都にいないといけないからね。
そんな事をいつも考えていた。事実を知った時君はどうする?怒る?落ち込む?その時の彼女の反応を想像して楽しんできた。
しかし何だこのゲームは?ゲームが始まった途端ヒロインスキルMAX??君は何も無いって言ってるけどすごいスキルだよ。見事に色々なイベントが目白押しだった。本当君といると毎日飽きなかった。楽しそうに考えたり、話したりしてる彼女が可愛くて、見ているのがうれしくて愛おしかった。しかしそろそろ終わりにしようか…。
森で一人でスローライフだって?
あまりにも妄想しすぎて自分のこと忘れすぎてないかい?
君も年頃の女の子なんだよ。
前世の家庭に追われてたおばさん?じゃないんだ。
ちゃんと年相応に行動してもいいんだよ。
ちゃんと恋をしてもいいんだ。
だから早く僕の腕に入ってきて。
君の亜麻色の瞳が僕1人に向けられる日が待ち遠しいんだ。
君に触れたくなる気持ちが日に日に多くなっていく。
我慢できなくなりそうだ。
僕が好きだと言った。あれは本心だ。
もう心は決まってるじゃないか。
早く僕だけを愛してると君の口から言ってよ。
もう君は僕のルートしかないんだ。初めから他のルートなんてなかったんだ。
君が僕の手を握って笑ってくれたあの日に全て決まったんだよ。
そうそう僕のエンドはメリバだって言われたんだ。でもそれはゲームの話。現実はそうはならないようにしたいんだけど、君次第だよ。
だからシャーリー、早く僕と同じところまで堕ちてくるんだ。
足は突っ込んでいるだろう?
あとは手を離すだけなんだよ。
大丈夫。怖くない。ちゃんと受け止めてあげるから。
そして一番底まで一緒に堕ちよう。
そこから出られないようにしてあげるから。
「ルーズローツ様、それをメリバと言うんじゃないですか?」
「レイクルーゼ嬢!そ、そうなのか??」
少しゆったりとした話を2、3話挟んで
終章に入ります