表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/12

4.理佐

 昼食を食べた後、のんびりしながら、3人で会話を楽しんでいる。こんな時間もなんか久しぶりだ。


「それでね、恭にぃ。配信でも、もうボイスチェンジャー止めようと思うの。元々恭にぃにバレない様にしてただけだから、もう必要ないかなって。実は、視聴者さんからのメールでね、男性っぽくしてても女の子だって分かるよって、よく言われるの。そんなに否定的な感じじゃないんだけど。」

「そうなんだ。でも理佐ちゃん声も可愛いから、一気に視聴者増えるかもね。」

「そ、そう?えっ、声もって・・・。」

「うん、だって【野獣(ビースト)】の称号で呼ばれてるケンジさんが、実はこんな可愛い声でしたってなったら、萌えるでしょ。」

「も、萌えるって・・・。」

 また顔が赤くなった。うう、可愛い。他の男になんか見せたくない・・・、って、これって独占欲?


「恭にぃ?」

 あ、考え込んでた。

「いや、何でもない!恥ずかしがる顔が可愛すぎて・・・はっ。」

 ボンッって感じで自分の顔が赤くなるのが分かる。

 理佐ちゃんも完全に俯いてしまった。


「だから!いきなり甘い雰囲気作り過ぎだっつの!」

と、健一に言われ、そうだ、冷静に冷静に、フ~フ~。よし。

  

 そして、度々健一に突っ込まれながら楽しく話し続けた。


 夕方になって、

「もうこんな時間か~。楽しすぎて時間の経つのが早かったね。」

「いや、お前らがいきなりラブラブ全開だからだろ。」

「まあね。」

 さんざん冷やかされ続けたから、冷やかされ耐性が鍛えられたよ。

「なんだ、恭平はもう冷やかしがいがなくなったな。」

 健一がつまらなそうに言う。

 いや、理佐ちゃんは、まだまだ顔真っ赤だ。

「じゃあ、今日は帰るよ。理佐ちゃん今夜はちょっと早めで9時からする?」

「はい。喜んで!」


「どこぞの居酒屋か!?それにその言い方だけ聞くといかがわしいぞ。ナニをするんだ?よし、泊まっていけ、なんて許可しないぞ!」

「お、お、お兄ちゃん!な、な、何言ってるのよ!?」

 もう、健一がからかう気持ちがよく分かる。

「落ち着いて、からかってるだけだから。」

 理佐ちゃんの頭をよしよしと撫でる。

「う~~。」

「あーーーー、もう砂吐きそう。余所でやれ!」



 そして、家に着くと、また舞香がいた。

 何なんだろう。しかし、舞香のことも、こうして会わなければ思い出さなくなってる自分に驚く。好きの反対は無関心って言うけど・・・、俺ってこんなに薄情だったのかな。

「どこ行ってたの?」

「友達の家」

 あれ以来、自分の口調が固いことは自覚してる。でも、どうしてもそうなってしまう。


「買い物に付き合ってって言ったのに。」

「いや、断ったでしょ!先約もあるって言ったの聞いてなかった?」

「いえ・・・、それは聞いてたけど・・・。」

 尻すぼみでよく聞こえない。


「それだけ?」

「じゃあ、明日付き合ってよ。」

「明日はずっとバイトだし、そうじゃなくても俺じゃなくて、他の人誘えばいいでしょ。それじゃ。」

 なんなんだ今更と思いながら家に入る。

「あ・・・。」



 その夜は、早く始めたからいつもより長めにプレイできた。ケンジさんこと理佐ちゃんは、ボイスチェンジャーを外した初めての録画だったけど、いつも通りゲーム内容とごく一般的な会話をした。俺の声も加工しなくていいと伝えた。

 もちろん、録画してないところでは、今まで会ってなかった期間の事も含めいろんな会話をした。



 日曜日は、いつも塾で講師のアルバイトをしている。校則でもバイトは許されている。

 中学生の受験クラスを受け持っているが、年が近いせいか威厳は無く、常に揶揄われている。

 ただ、授業自体は分かりやすいと言ってくれる子が多い。

「先生ー。先生って鳳凰学園なんだよね?あそこって凄い難しいんでしょ?」

「うーん、世間的には難しいって言われてるけど・・・、どうなんだろう?中にいると分からないなぁ。」

 授業を終え、帰りの準備をしながら質問に答える。実際、嘘告みたいなしょうもないことする奴もいるし・・・、でも勉強の出来とは関係ないか。

「はい、もう授業の質問じゃないなら終りね。それじゃあ、また来週。」

「「「じゃあね~。」」」



 帰る前に家電量販店に行く。PCのパーツを見てると貼り紙が目に入った。ん、eスポーツのオフライン大会か・・・、いつものFPSのデュオもあるな。理佐ちゃん地声解禁したから一緒に出れる?でも恥ずかしがるかな・・・。と眺めていると、


「恭にぃ?」

 と、腕に絡み付く理佐ちゃんが。

「びっくりした!どうしてここに?」

「ちょっとグラボを見に来たんだけど、何を熱心に見てたの?」


「ああ、これなんだけど、一緒に出れたりするかなぁって。」

 貼り紙を見た理佐ちゃんが、

「出よう!絶対!会場も近いし。でも、事前にオンライン予選があるよ。」

「何回かあるけど、直近は次の土曜の午後か・・・、俺は大丈夫だよ。」

「私も大丈夫!」


「でも、観客も入るから、身バレしちゃうんじゃないかな。」

「そこはちょっと変装するとか、フフ、楽しそう。恭にぃはいいの?」

「まあ、俺はバレたところで特に・・・。」

 結構いたずら好き?理佐ちゃんの意外な一面が見れたな。

「じゃあ、今日も後で練習だねっ!」

 楽しそうな笑顔が眩しい。



 その後、理佐ちゃんを家まで送って行った。ずっと腕を組んだままだったのが気恥ずかしかったけど、心がポカポカして心地よかった。道すがら、昨日のゲームでの立ち回り等を話しながら歩く。男女の会話っぽくないけどいいよね。

 そして、玄関前で健一に遭遇し、ガッツリ冷やかされた。



 理佐ちゃんは女子高なので、平日学校では会えない。なので、名残惜しさを感じながら家に帰った。日課の予習復習を済ませた後、ケンジさん(理佐ちゃん)と次の大会対策を練ったり、充実した時間をすごして寝た。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] このエネルギーを貯めている感じワクワクする
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ