1.嘘告
思い付きで、新作書いてみました。
不定期更新になると思います。
「あんたは、ただの幼馴染よ。彼氏面しないで!まあ、あんたを彼氏なんかにするわけないけど!」
家が隣同士、親同士が仲がいいという状況で、俺、和田恭平と綾辻舞香は、仲のいい幼馴染として自然と一緒に行動することが多かった。
舞香は、ショートヘアが似合うスレンダーでボーイッシュな感じだが、かなりの美少女で学校でも隠れファンは沢山いる。
陰キャガリ勉の俺が幼馴染として側にいるのを、すれ違いざまあからさまに睨みつける奴も少なからずいる。
俺は、ずっと舞香のことが好きだった。仲のいい幼馴染という関係のまま、他に彼氏が出来たりしたらどうしようとウジウジ考える自分が嫌だった。
そこで、決心した。2週間後の彼女の誕生日に告白しようと。そう決意した矢先言われたのが先ほどの言葉だ。
告白前に振られた・・・。
「別に彼氏面なんてしてないよ。今の成績のままだと進学が危ないって言っただけで・・・。」
最近はいつもこうなる。俺が何か言ってもキツイ態度で言い返される。
ただ、今日の言葉は決定的だった。
お前なんか彼氏にならない、ってことだ。
言われた言葉に動揺しながらもなんとか返す。
「それが余計なお世話なの。私の進学はあんたに関係ないでしょ。」
そう言われてしまうとどうしようもない。
「そうだね、余計なお世話だったね。ゴメン、もう言わないよ。」
なんかいつの間にか嫌われてたんだな。幼馴染としては仲がいいと思っていたけど。
「それじゃあ、もう帰るよ。」
そう言って家に帰った。
「あっ、・・・。」
翌日、朝いつもより早く家を出て、学校へ行った。
学校へはいつも舞香と一緒に行ってたけど、たまたま時間が合っていただけで、約束をしていたわけじゃないし、嫌われているなら一緒じゃない方がいいよな。
学校に着くと、早かったせいか誰もいなかった。予習でもするか。
ガラッと教室の扉が開き、女の子が入ってきた。
「あれ、今日は早いね、舞香は一緒じゃないの?」
彼女は、新堂亜弥。ロングヘアの似合う美人で胸がデカい。
舞香とよく行動を共にしている子で、俺の数少ない親友、斎藤健一の彼女だ。
健一は小学校時代からの親友だが、高校でヤンチャし始めた為、学校内では俺と仲のいいところを見せていない。そしてイケメンでおっぱい星人(秘密だけどバレバレ)だ。
「朝早く目が覚めたから。幼馴染とはいっても、いつも一緒な訳じゃないよ。」
「ふ~ん、まあいっか。」
特にそれ以上話題もなく、自分の席に行った。
そして、特に何もなく、一日が過ぎて帰ろうとしていると、
「あ、あのー、和田君、時間あったら少し話があるんだけど。」
同じクラスでほどんど話したことが無い、平野つくしが話しかけてきた。
見た目はまあまあ可愛い子だけど、どんな子かよく知らない。
「何かな?」
「ちょっとここでは言いづらいから、ついてきて。」
そう言って、どんどん歩いて、普段使われない視聴覚室に連れてこられた。
「あの、和田君の事好きでした。付き合ってください!」
えっ!?好き?俺?ええっー。でも俺は舞香が・・・、って既に振られてるし。
「えっと、でも君の事よく知らないし。」
「じゃあ、付き合ったらよく分かるんじゃない?」
なんか積極的だけど、そんな簡単には・・・。
「ちょっと考える時間貰えないかな。1日くらい。」
「えっ。」
なんかすごい不思議そうな顔された。
「ダメかな?」
「えーと、う、うん。分かった。」
「それじゃあ、そういうことで。じゃあ。」
その場から足早に離れた。なんか舌打ちみたいな音がしたけど・・・、気のせいか。
翌日、放課後、平野さんに考えた結果を伝えようと声を掛けると、
「なに?」
えっ、何か素っ気ないけど
「え、えーと昨日のことで・・・。」
「昨日・・・、ああ、あれって罰ゲームの嘘告白だったのよ。だいたいあんたみたいな陰キャに告白してあげてんだから普通すぐOKするでしょ。なんで時間がいるのよ。ちょっとその充血した目って、マジで一晩悩んだの?フハハハハハ、可笑しい。聞いたみんな?嘘告に一晩悩んだって!」
え、なんだこれ。なんで女子にクスクス笑われてるんだ?と、舞香の姿が目に入った。こっちを見て笑ってる。まさか・・・舞香もグルなの?俺はそんなに嫌われるようなことしたのか!?
「なんで、俺にそんなことする必要があるんだよ!!!」
舞香も笑っているのを見て、思わずカッとなって大声を上げていた。
「ひでえな。」
「なんだよあれ。」
「ふざけすぎだろ!」
周りの男子の声が聞こえる。
「お前ら随分ふざけたことすんだな。人の気持ち弄ぶようなことしやがって。」
健一が平野さんに文句を言う。
「他の女子どもも一緒になって嘲笑しやがって。見てたぞ、皆してこいつの事笑ってんの。ほら、行くぞ。鞄もってこい。」
「ああ。」
健一に言われるまま、後ろをついていき、教室を出た。
他の男子も、釣られるように教室を出ながら、
「最低だな。」
「ほんと最悪。」
等と、吐き捨てていた。
なんか、俺のせいでみんなを巻き込んでいるんじゃないのか?
何故かその後、クラスの男子の大半とカラオケボックスに来る羽目になった。
「すまなかったな恭平。勝手に割り込んじゃって。でも我慢できなかったんだよ。他のみんなも多分同じ気持ちだよ。」
と、健一が言うが、他の男子も?なんで?普通に話とかはしてたけど・・・。
すると周りの男子が口々に
「いや、勉強とか聞いた時も嫌がらず丁寧に分かりやすく教えてくれるし。」
「お前、自分が陰キャとか言いながら、ゲーム、スポーツ、芸能、小説とか勉強以外の話題も豊富だし、話も飽きないし。」
「結構、男子はお前の事気にしてんだよ。いい意味で。」
「そういや、この前のFPSのオンライン大会で、デュオで全国3位だったじゃねえか。」
「な、なんで知ってんの?」
「「「「健一に聞いた。」」」」
「で、健一の家でネットでライブ観戦してたんだよ。いやぁ、すげえ立ち回りだったよな。」
「あれは、相方が結構キャリーしてくれたものあって。」
「それでもすげえよ。」
と、歌も歌わず盛り上がった。
自分は陰キャで目立ってなかったと思ってたけど、皆の話だと、温かい目で眺めていたらしい。
まさか大会も見てくれてたなんて。
「で、昨日、今日とほとんど話してなかったけど、綾辻となんかあった?」
唐突に田中君が聞いてきた。なんでそんなところまで見てんだよ。
よし、心機一転だ。全部話してしまえ。
「実は、最近なんか舞香の態度がきつくて、この前もちょっと成績と進学の話をしてたら、余計なお世話だったみたいで、ただの幼馴染のくせに彼氏面するな、みたいなことを言われて。[まあ、あんたを彼氏なんかにするわけないけど]とも言われて。実は、誕生日に告白しようと思ってたんだけど、告白する前に振られたんだ。」
「おおっ・・・、そうか。なんかすまん。変な話題出して悪かったな。」
「いや、いいんだ。さっきの嘘告で女子と一緒になって笑ってた舞香を見たら、なんか吹っ切れたというか凄く冷めた。なんか悩んだのが馬鹿らしかったなって。」
「そうか、それならいいか。実はみんなでいつ告白するか話題にはなってたんだが、急展開だな。
よし、じゃあ綾辻のことを吹っ切ったというなら、他の女の子を紹介するぞ。勿論嘘告なんかじゃないぞ。実は、お前のことを気にしてる子がいるんだ。」
健一が言う。でも今すぐ他の女の子にっていってもなあ。
「気を遣ってくれるのはありがたいけど、今はそんな気分じゃないというか・・・。」
「友達感覚でいいんじゃね。それからゆっくり考えれば。だいたい、女子どもがお前のことを陰キャと思っているのが気に食わない。女子とも遊んでいるところを見せつけよう。」
「いや、そんなことに付き合わせるのは申し訳ないから。」
なんか、この期に及んでもウジウジ言ってることに自己嫌悪を覚える。
「大丈夫、妹はそんなこと気にしない。むしろ喜んで協力するぞ。」
「えっ、女の子って、理佐ちゃんのこと?」
「そうだ、ずっとお前を気にしてたけど、お前は綾辻しか見てないのバレバレだったからなぁ。」
理佐ちゃんは、健一の妹で、小学校の時は一緒に遊んでた。俺のことも恭にぃって呼んでくれて、まさに妹タイプの可愛い子だった。健一と年子で今高1だ。でも高校生になってからは会ってないなぁ。
「まあ、今度軽い気持ちで家に遊びに来いよ。どうするかはそれから考えてもいいだろ。」
本当にいい友達を持った。そうだな、俺がウジウジしても誰も得しない。
「ありがとう。今度遊びに行くよ。みんなも今日は付き合ってくれてありがとう。嘘告への怒りはあるけど、みんなのおかげで冷静になれたよ。」
「「「「気にすんなよ。」」」」
「またこういうのもいいよな。」
「そうだな、男子会って暑苦しいけど、多分今だけだしな。」
「青春って感じか?」
と誰かが茶化す。
みんなのおかげで元気をもらった。




