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会議は踊る

今回、いよいよSINメンバー同士の会話となります。

いったい何が切っ掛けで殺し合いに発展してしまうのか!?

 近藤が新人を案内する一方、大罪の名を持つSINメンバーの七人は“会議室”と書かれた部屋に入っていく。


 部屋の全体は四方の壁に囲まれた正方形。中央には角が丸い縦長の白机が置かれ、左右それぞれには大きさや形が異なる椅子が“八つ”置かれており、更に一番奥の正面には一際目立つ椅子が一つ置かれていた。


 どうやら誰が何処に座るのかは既に決まっているらしく、入るなり次々と着席していくメンバー。部屋の扉から近い順に“憤怒”、“嫉妬”、“強欲”、“怠惰”、“色欲”、“暴食”、“傲慢”という形で座った。


 そして訪れる静寂の時間。そのあまりの静けさから、カチコチと部屋に飾られた時計の秒針が部屋中に響き渡り、僅かにメンバー内の呼吸音が聞こえる。


 「「それで? 今日の集合内容はなんですの?」」


 すると沈黙に堪えかねて口を開く者が現れた。いや、正確には“者達”と言うべきか。“嫉妬”の名前を持つ、鮮やかな赤いドレスを身に纏った一つの下半身にそれぞれの上半身を併せ持つ双子。


 「さぁ? 前回は新人育成に関する意見討論。その前は兵力増加に伴う施設増築。更にその前は確か……非労運達とのパワーバランス調査報告だったからね。今回もそんな所じゃない?」


 嫉妬の質問に答えたのは、前髪で両目が隠れたピンク髪のボブショートヘアの少年か少女か見分けが付かない“色欲”の名前を持つ存在。


 「どうでもいいけどこの会議室。もうちょっとどうにか出来なかったー? なーんか、悪の組織感が無いんだよねー」


 会議室のレイアウトに不満を漏らすのは、“強欲”の名前を持つ体から大量の手足が生えている子供。


 「……ZZZ……」


 「くちゃくちゃ、んぐんぐ。はぁ、うぐうぐ……」


 「…………」


 一方で会話に興味を示さず、馬車の中で眠り続ける“怠惰”の名前を持つ、上半身だけの男と、終始何かを食べ続けている“暴食”の名前を持つ巨漢。そして只じっと空席の二つを眺める“傲慢”の名前を持つ隻眼隻腕の男。


 「ぬぬぬ……くそぉおおおおお!!! いつになったら非労運達と戦えるんだぁあああああああああ!!!!」


 突然、部屋中に怒号が響き渡る。“憤怒”の名前を持つ、腰簑だけを身に付けた赤い肌色の大男は両腕を机に叩き付け、表面にヒビを入れる。その様子にまわりのメンバーは“またか”という呆れた表情を浮かべる。


 「今日も相変わらず煩いね」


 「色欲……お前は知っているか。今日もまた多くの怪異人達が非労運達によって殺されたのだ……」


 「だから?」


 「だからだと!!? 同胞が苦しんでいるというのに、お前は胸が痛まないのか!!?」


 「痛む痛まないの問題じゃないでしょ。そもそも僕達がこうしてグレーに入ったのは、そうした理不尽な世の中を変える為なんだから、そうした事は覚悟の上なんじゃないの?」


 「ならば、今すぐ表舞台に出て、我々の力を思い知らせてやろうではないか!!!」


 「うーん、確かにそうした方が面白そうだね」


 「おぉ、ならば……「駄目だ」……何っ!!?」


 憤怒の言葉を遮ったのは、これまで沈黙を貫いていた傲慢だった。そんな中、途中まで話に乗っかっていた色欲が笑みを浮かべる。どうやら傲慢が話を遮る事を予期していた様だ。


 「いったい何故だ!!?」


 「マスターグレーが許可していない。それとも何だ、お前はマスターグレーの命令に逆らうという事か?」


 「ぐっ……!!!」


 「……でもさ、マスターグレー様もちょっと慎重過ぎるんじゃないのかな。せっかく組織がここまで大きくなったんだから、今使わないでいつ使うの?」


 その言葉に押し黙る憤怒。そんな様子に色欲が面白半分に茶化し始めた。


 「そ、そうだ!! その為に組織を大きくしたのだから、今すぐ使うべきだ!!」


 「色欲……余計な言葉で憤怒を煽るのは辞めろ」


 「えー、どうして君の言う事を聞かなくちゃいけないの? 怪異人でも無い君なんかにさ……」


 その瞬間、空気が重くなった。


 「おぉ、そうだ!! 前からお前の事は気に食わなかったんだ!! 人間風情が我々と対等など許される筈が無い!!」


 「「確かに……この秘密結社グレーは怪異人の為の組織……部外者はいりませんわ」」


 「えへへ、傲慢。組織を抜けるのなら、その片腕ちょうだーい」


 色欲の発言に便乗して、傲慢を責め立てる憤怒、嫉妬、強欲。その一方で怠惰と暴食は寝るのと食べるのに夢中だった。すると傲慢は溜め息を漏らす。


 「それについては散々議論した筈だ。ここにいる連中はマスターグレー本人から直接スカウトを受けた。つまりこの俺の存在を否定するという事は、マスターグレーの意思を否定する事と同義だ」


 「「そ、そんな!!? マスターグレー様を否定するだなんて、ありえませんわ!!」」


 「ちぇー、片腕はしばらくお預けかー」


 「ぐっ……!!!」


 マスターグレーという言葉に、三人は掌を返す。そして傲慢は色欲に対して、これ以上波風立てるなと睨みつける。それに答えるかの様に、色欲は両手の人差し指でバッテンを作り、口に添えて見せた。


 その時、会議室の扉が開かれる。するとメンバー全員が慌てて立ち上がり、入って来る人物に頭を下げる。そんな光景を見ながら、入って来た人物が口を開く。


 「どうやら、皆さん揃っている様ですね」


 女の声。メンバーが頭を上げると、そこにいたのは参謀の花村だった。


 「「あなたでしたの。てっきりマスターグレー様が入室されたと思いましたのに……下げ損ですわ」」


 「それは失礼致しました」


 「花村ちゃん、今日も綺麗な手足だね。僕にちょうだい」


 「お褒め頂き、ありがとうございます

強欲様。残念ですが、手足はあげられません」


 「マスターグレー様は?」


 「主様はもう間も無く、ご入室されます。それまでしばらくお待ち下さい」


 そう言うと花村は、左右で唯一空いている傲慢の向かい側の席に座った。すると傲慢が話し掛けて来る。


 「調子はどうだ?」


 「いつも通り、何も問題ございません」


 「あのさ、前々から思ってたけど……花村さんと傲慢って中が良いよね?」


 二人の心境報告に、不適な笑みを浮かべながら色欲が割って入って来た。


 「はい、傲慢様とは同期ですので……」


 「同期って事は……もしかして幻の初期メンバー?」


 「幻の初期メンバーとは何だ?」


 「「知らないんですの? この秘密結社グレーは一度、政府と非労運達の手によって壊滅され、再構築したのが今の秘密結社グレーですのよ」」


 「そう、つまりその壊滅当時からの生き残りを総称して、幻の初期メンバーって呼んでいる訳さ」


 「成る程……しかし壊滅とはいったい何があったのだ?」


 「噂じゃ、組織内の“裏切り者”が現れたらしいよ」


 「おい、それ以上口を開くな」


 純粋に疑問を投げ掛ける憤怒に対して、色欲は面白おかしく答える。その様子に傲慢が制止に入るが、色欲はわざと聞こえないフリをして喋り続ける。


 「それでどうやらその裏切り者は、マスターグレーが見せしめに殺したらしいよ」


 次の瞬間、傲慢が椅子から立ち上がり、色欲目掛けて勢い良く殴り掛かった。しかし、それを予測していた色欲はその拳を片手で受け止める。


 「口を開くなと言った筈だ。二度とその軽い口を聞けぬ様にしてやろうか?」


 「遂に本性を現したね。あぁ、不味いな。このままじゃ、殺されちゃうな。誰か助けてー」


 明らかなる棒読み。しかも完全に色欲の挑発が切っ掛け。本来なら誰も助けに入らないが……。


 「待ってろ色欲!! 今、助けてやる!! うぉおおおおおおおお!!!」


 ここに底抜けの馬鹿が一人。白机を持ち上げ、傲慢目掛けて振り回す。


 「「ちょっと危ないわよ!!」」


 「いいぞー!! もっとやれやれー!!」


 「うぅーん、煩いな……静かにしてくれよ……ゆっくり眠れないじゃないか……」


 「くちゃくちゃ、もぐもぐもぐ、ぶはぁ、んちゅんちゅ」


 暴れ回る憤怒に迷惑する者もいれば、それを更に煽る者もいた。中には未だに自分の事に集中する輩もいた。


 振り回される白机を片腕で叩き割る傲慢。その直後、憤怒から放たれた豪腕が襲い掛かる。


 「死ねぇえええええええ!!!」


 「この単細胞がっ……!!!」


 何とかガードを試みるが、片腕では受け止め切れず、吹き飛ばされて壁に叩き付けられる。


 「あわわ、大変だ。早く知らせに行かないと!!」


 メンバー同士の殺し合いに、花村は慌てて部屋を飛び出して行った。


 「ふー、ふー、よくも俺達を騙してくれたな……」


 「騙していない。お前の勘違いだ。色欲、悪ふざけはもう済んだだろ。さっさとこの誤解を解け」


 「誤解? 何の事か僕分からないな?」


 「お前、本気で言ってるのか」


 「先に攻撃を仕掛けたのは、君の方じゃないか。誤解も何も無いと思うけどな」


 「そうか……お前がそのつもりなら仕方ない。マスターグレーには俺から伝えておく。SINメンバーに一人欠員が出るってな」


 「へぇ、それって自分の事を言ってるの?」


 「ほざいてろ」


 「余所見してんじゃねぇええええええええええええええ!!!」


 完全に蚊帳の外になっていた憤怒。更に怒り狂い、傲慢目掛けて豪腕を振り下ろした。


 「!!?」


 が、その拳が傲慢に当たる事は無かった。何と片手で受け止めて見せた。


 「こ、こいつ……!!!」


 「引っ込んでろ木偶の坊」


 「な、何だと!!?」


 次の瞬間、自分の三倍近くある大きさの憤怒を持ち上げ、反対側の壁に投げ飛ばす傲慢。巨体が壁に叩き付けられ、部屋全体が大きく揺れる。


 「貴様……!!!」


 しかし、傷一つ付いていない憤怒。何事も無かったかの様に起き上がると、赤い肌色を更に赤く染め上げ、傲慢に襲い掛かろうとした。その時、部屋の扉が勢い良く開かれる。それと同時に、その場の全員の背筋が凍り付いた。実際、この部屋の気温が下がったのではないのかと思ってしまう程の寒気を覚えた。


 即座に全員が頭を下げる。花村が入室時とは比べ物にならない程早く。誰が入って来たのか考えるまでも無い。


 「……それで誰が始めた?」


 曲者揃いの連中を纏め上げる存在。秘密結社グレーのリーダー、マスターグレーが入室して来たのだった。

曲者揃いのSINメンバーが震え上がる程の存在。

次回、マスターグレーの恐ろしさが垣間見得る!?


次回もお楽しみに!!

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