真実
皆さんお久し振りです。
今回、遂に怪真会壊滅の真実が明らかとなります!!
賑やかな商店街。人々が行き交う中、俺と無法松の二人は両手それぞれに、大量の食品が入ったビニール袋を下げて歩いていた。
「……何で俺達がこんな事を……」
無法松は買い物帰りの主婦に紛れて、大量の食品を買い込んでいる現状に不満を漏らした。その様子に俺は振り返らずに口を開く。
「仕方ないだろ、人手不足なんだ」
「だからって、何で俺達なんですか!? こんなのしたっぱ連中にやらせたらいいじゃないですか!!」
突然の大声に、周りがこちらに不審な目を向ける。
「おい、大きな声を出すな。目立ってるぞ」
「……っ!!」
興奮して息を荒くする中、俺が冷静に諭した。それによって無法松は言葉を失った。
だが、表情から納得していないと分かると、面倒だと思いながら俺は溜め息を漏らした。
「いいか、今組織は壊滅状態にある。半数以上の組員が怪異人化した事で、保有していたシノギが殆ど機能しなくなった。特にオヤジを失ったのがデカ過ぎる。もし他の組にバレたら、それこそ組の終わりを意味する」
「……だから人手が足りない今、アニキ自らが動いている……」
「何だ、分かってるじゃねぇか」
「だとしてもこんな使い走り……したっぱにやらせれば……」
「そのしたっぱが漏れ無く全員怪異人化したんだ。この食料だって、そいつらの為に買ってるんだ。忘れたのか?」
「資金不足で、俺達だって食って行けるか分からないのに、どうしてあんな“化け物”を優先するんですか……」
「そんな言い方するな。一番辛いのはあいつらの方だ。なら、それを支えてやるのが俺達の役割じゃないのか?」
「……アニキは俺達より化け物を選ぶんですね……(ボソッ)」
「ん? 何か言っ……何だ?」
「?」
最後の言葉が上手く聞き取れず、聞き返そうとしたその時だった。目の前に人だかりが出来ている事に気が付いた。
近付いて周囲を確かめるが、それらしい物や人は見つからなかった。よく見ると、その人だかりは少し斜め上のとある一点を見つめていた。
「火事……か……っ!!?」
皆の目線の先には森林があり、そこから煙が立ち上っていた。それを目にした瞬間、俺の額から嫌な汗が流れ落ちた。
「あそこって……組がある場所じゃ……まさか!!?」
俺は慌てて持っていた荷物を投げ捨て、組の安否を確かめる為に走った。
「…………」
***
「こ、これは……」
幸いにも屋敷が燃えた訳では無く、周りの草木が燃えているだけだった。しかし、そこには怪異人化した組員達の無惨な死体が転がっており、全員共通して心臓部分に大きな穴が空いていた。
「お前ら!! 確りしろ!!」
倒れている何人かの組員を抱き起こし、揺さぶって必死に呼び掛けるが、ぐったりとしていて既に事切れていた。
「くそっ……はっ、オヤジは!!?」
変わり果てた組員の亡骸に顔を歪ませる中、オヤジの事が頭を過り、屋敷の中へと駆け込んだ。
「中はもっと酷いな……」
中は外よりも悲惨な事になっていた。壁や床、至る所にやり合った傷痕が残っており、続く廊下には組員の死体が転がっていた。
「妙だな……」
倒れているのはどれも怪異人化した組員ばかりで、人間の組員が一人もいなかった。
大広間の襖を開けるとそこには、おびただしい程の血溜まりと、大量の死体が転がっていた。
「誰がこんな……」
「若頭!!」
突然の出来事に困惑していると、庭の方から生き残りの怪異人組員が血相を変えて駆け込んで来た。
「無事だったか!! いったい何があった!!?」
「カチコミです!!」
「何だと!!? 何処の組だ!!?」
「組じゃありません!! 敵はたったひとっ……あぎぃ!!?」
「!!!」
次の瞬間、組員の背中から心臓部分を手が貫通し、その手には脈打つ心臓が握られていた。そして次第に鼓動が小さくなっていく様子は、組員の死を明確に感じさせた。
「わ……か……」
前のめりに倒れる組員。その背後に現れたのは、狼の毛皮に身を包んだプロレスラーを彷彿とさせる筋骨粒々の男だった。
「危ない所だった。お前、怪我は無いか?」
「お、お前……お前……」
「俺は非労運の“ウルフGUY”。ここにいた怪異人は全員倒したから安心しろ」
「……何で……」
「ん?」
「何で殺した!!?」
沸き上がる怒りに俺は、ウルフGUYと名乗る非労運に掴み掛かった。しかし、まるで巨大な岩に触っているかの様に、びくともしなかった。
興奮気味の俺に奴は不思議そうに首を傾げ、淡々と答える。
「何でってお前らが頼んだんだろ?」
「……は?」
「うちの組が怪異人に占拠されたと連絡を受けた。だからこうして俺が派遣されて来たんだが」
「何だよそれ……誰がそんな……」
「“俺達”ですよ、アニキ」
「!!!」
背後から聞き覚えのある声が聞こえて来た。振り返るとそこにいたのは、無法松を始めとした“人間”の組員達だった。
「本当にお前らがやったのか……?」
「…………」
「何でだ……何でだ!! 世話になった組を何で裏切った!!?」
「裏切った? 裏切ったのはアニキの方じゃないですか」
「何だと?」
「あの怪異人化が起こってアニキは変わってしまった。化け物ばかり擁護して、俺達を蔑ろにする様になったじゃないですか」
「それはあいつらの方が生活が大変だから……」
「俺達だって大変ですよ!! あんな触れただけで人を殺せる化け物と四六時中一緒にいて、気がどうにかなりそうだった!! だからその原因を取り除く為に動いたまでです」
「てめえら、そんな理由で仲間を売ったのか!!?」
「俺達もそれなりの抵抗はありました。けど、今回の事で分かったんです。俺達はついて行く人を間違えたと……」
「どう言う意味だ……」
そう言うと無法松達は俺の真横を通り過ぎて、ウルフGUYの側に立った。
「本日をもって、俺達はウルフのアニキについて行く事に決めた!!」
「なっ!!?」
「こいつらにどうしてもとせがまれてな。まぁ、俺も雑用が欲しいと思っていた所だ」
目の前の受け入れがたい現実に、俺は思わず項垂れてしまった。しかし、直ぐ様顔を上げ、鬼の形相を浮かべた。
「……お前ら、全員ぶっ殺してやる……」
「ほぅ、中々威勢が良いじゃないか。出来れば手合わせ願いたいが、残念ながら今の俺は非労運だ。一般人と戦う事は出来ない。という事で、後は頼んだぞ」
「任せて下さい、アニキ」
するとウルフGUYは無法松達に始末を任せて、その場を後にした。
「そう言う訳なんで旧アニキ。あんたにはここで死んで貰いますよ」
「無法松……てめぇだけは絶対に許さねぇ」
「ふっ、いくらあんたでもこれだけの人数を相手に出来る訳がねぇだろ」
「ぐっ!!」
悔しいが無法松の言う通りだった。三人ならまだしも、相手は数十人。とても勝てる人数では無かった。
「おらっ、行くぞぉおおおおお!!!」
無法松の掛け声に合わせ、一斉に襲い掛かって来る組員達。俺は負けると分かっていても拳を構えた。そして次の瞬間!!
「「「「ぐぁああああ!!!」」」」
両者の間に大きな黒い影が割り込み、相手数人の組員が吹き飛ばされた。
「「!!?」」
そこに現れたのはヌメヌメとした鱗を持った半魚人。もとい組長だった。
「オヤジ!!」
「義昭、ここは俺に任せてお前は隠し通路を通って脱出しろ!!」
「そんな!!? 俺も一緒に「自惚れるな!!」……っ!!」
「お前一人が加わった所でたかが知れてる。今は生き残る事だけ考えろ。そしていつの日か、俺達の仇を取ってくれ……頼んだぞ」
「オヤジ……すまねぇ……」
俺はオヤジの想いを受け取り、涙ながらその場を後にした。
「逃がさねぇぞ!!」
「おいおい、そう慌てるなよ。折角だ、お前ら俺と一杯付き合ってくれねぇか?」
谷原の後を追おうとする組員。しかし、その行く手を遮る組長。
「組長、あんたの時代は終わったんですよ」
「終わったか……確かにそうかもしれねぇな。だが、俺の意思を継いで次世代へと渡ってくれる奴がいる。それだけで俺の人生は満足だ」
「……やれ」
襲い掛かる組員達。組長は走り去る谷原を背にして、その命の灯火を最後まで燃やし尽くすのであった。
***
「はぁ……はぁ……はぁ……オヤジ……」
「若……ご無事でしたか」
屋敷の隠し通路を抜けると、その先には怪異人化した組員の生き残りがいた。
「お前ら……生きてたのか……てっきり全員殺られたのかと……」
「組長が命懸けで俺達を助けてくれたんです。非労運に襲われている中、冷静に隠し通路を開けてくれて……」
「あの人がいなかったら、俺達今頃……」
「そうか……お前ら、戦う覚悟はあるか?」
「えっ?」
「今ならまだオヤジを助けに戻れるかもしれない。今度は俺達がオヤジを助ける番だ」
「若……分かりました、行きましょう」
「このままヤられっぱなしていうのも、気持ち悪いですからね」
俺の提案に皆賛同してくれた。このメンバーならオヤジを助けに行ける。そう確信があった。
「よし、行くぞ!!」
そうして俺達は再び屋敷に戻る事にした。だが……。
「オ、オヤジ……」
そこで待っていたのは、惨たらしく殺されたオヤジの死体だった。既に無法松達の姿は何処にも無かった。
「そんな……間に合わなかった……」
「オヤジ……うわぁあああああああああああああああああ!!!」
屋敷全体に悲痛な叫び声が響き渡った。若頭ともあろう男が情けなくオヤジの亡骸を前に涙を流す。そして泣き終わると口を開く。
「お前ら……この事は誰にも言うな……」
「若……」
「組員に裏切られたなんて、オヤジの名前に傷が付く。せめて敵対組織に殺られた事にするんだ」
「分かりました……」
「(……俺は絶対に無法松の奴らを許さない。そして組を壊滅に追い込んだ、あの女とウルフGUYとかいう非労運も全員ぶっ殺してやる!!)」
俺は怒りに震えながら、静かに復讐を誓うのであった。
これにて谷原達の過去は以上となります。
次回から影野達の視点に戻ります。
また、近々新作長編小説も投稿予定ですのでお楽しみに!!
気になるテーマは“マルチバース”です。
次回もお楽しみに!!
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