思わぬ再会
今回は夢川美咲の視点でお届けします。
私の名前は“夢川美咲”。何処にでもいる平凡な高校生。けど、そんな私にも大きな夢がある。それは非労運になって、困っている人を助ける事。
周りは無理だって口を揃えて言うけど、それでも私は諦めたくない。例え可能性が限り無く低かったとしても、蜘蛛の糸を掴む様な話だとしても、必ず叶えて見せる。
そんな私だが、実は最近気になる人がいる。同じクラスの“影野重孝”君だ。同じクラスと言っても、同級生という訳じゃない。彼はとある事情で留年してしまった身なのだ。つまり一歳年上という事になる。因みに何故影野君が留年したのか、詳しい理由は知らない。
そんな影野君に対して他のクラスメイトは、何処かよそよそしく、一歩距離を置いている様子だった。教室で一人、机に突っ伏している彼の姿を見て、私は興味が湧いた。声を掛け、会話を交わした。ミステリアスで影のある雰囲気に、私の心は徐々に惹かれた。
影野君と話していると、自分でも気付かない内に笑顔になっている事が多い。本当はずっとお喋りしていたいけど、影野君にだってプライベートはある。彼が側からいなくなると、少し寂しいと感じる。
この事を上の姉に相談すると……。
「あんた、それはズバリ“恋”だね」
「恋? 私が? 影野君に?」
「そうだよ。その人と一緒にいるだけで楽しくて、いざ離れると寂しいと感じるのは、恋している証拠さ」
「そう……なのかな……?」
姉は大学生。ダンスサークルに加入しており、同期の男性と恋人関係にある。その為、私よりかは恋心に関して詳しいと言える。
だけど、果たしてこれを本当に恋と言うべきなのか、それとも単なる好奇心から来る物なのか、初恋を経験した事の無い私には判断出来なかった。
そんな影野君が最近学校を休んでいる。最初は風邪かなんかだと思っていた。けど、お見舞いに行ったら、昨日の夜から姿が見えないと聞かされた。
胸が締め付けられる想いだった。不安が頭から離れず、あまり眠れなかった。すると次の日、健康診断の結果を貰いに保健室へと訪れると、そこで偶然影野君と再会した。
私は問い詰めた。討論の中、彼が何かを隠していると感じた。そんな時、保健室の相澤先生が事情を説明してくれた。保健室に寝泊まり。正直、そんな戯言を信じろという方が無理のある話。だけど、現状で相澤先生が嘘を言う理由が見当たらない以上、その戯言を信じるしかない。相澤先生と影野君はそういう関係……なんて、想像するだけで言い知れぬ怒りとモヤモヤが生まれる。
だが、私もそれで素直に引き下がる訳にはいかない。影野君に確りと注意し、おじさんとおばさんが心配している事を伝えた。これで明日からいつも通りの学校生活が送れる。そう信じていたのに……。
あれから数週間経ったけど、影野君は未だに来ていない。それなのに学校は何事も無く授業を進めている。先生に話を聞いても、分からないの一点張り。
更にクラスの一人が不登校なのにも関わらず、周りの生徒は特に気にしている様子が無かった。どうしてそんなに冷静でいられるのか、私には分からなかった。
そしてある日、いつもの様に学校に登校すると、そこには目を疑う光景が広がっていた。
影野君の机に一輪の花を差した花瓶が置かれていた。花に詳しく無い私だが、その花は最近TVで解説していた為、一目で分かった。
スノードロップ。花言葉は『あなたの死を望みます』
「誰……この花を置いたのは……」
怒りがこみ上げるのと同時に、この状況に誰も何の疑問も持たない事が悲しかった。私は何の躊躇いも無く、花瓶を弾き飛ばした。床に落ちて、大きな音を立てて割れた。
周りの注目が集まる。けど、今はそんなのどうでもよかった。
「誰ですか!!? こんな酷い事をしたのは!!? 誰ですか!!?」
誰も名乗り出ようとしない。それどころか、皆が私を奇怪な眼差しで見つめて来る。意味が分からない。私は何も間違った事はしていないのに。
結局、花瓶を置いた人物は現れず、私は割れた破片を拾い集めた。そしてその時だけ、クラスメイトが率先して手伝ってくれた。何て都合の良い人達なんだ。そう思ってしまった。
下校中、私は影野君の家に寄った。何か重い病気にでも掛かってしまったのか、それとも事故に遭ってしまったのか。それならどうか無事であって欲しい。そんな願いを抱きながら、インターホンを鳴らした。
すると影野君のおばさんが、血相変えて飛び出して来た。以前、お見舞いに来た時とは比べ物にならない程、痩せ細り、殆ど寝てないのか、濃い隈が出来ていた。
「重孝君!!?」
「こ、こんにちは……」
「……夢川さん……こんにちは、今日はどうしたの?」
インターホンを鳴らしたのが私だと分かると、おばさんは分かりやすく落ち込んだ。それでも気を使って普段通りに接してくれる。
「あの……影野君の事で……」
「!!!」
が、それも私が影野君の話題を振るまでの話。おばさんは口を押さえ、泣き崩れてしまった。私はどうしてよいか分からず、混乱してしまった。すると奥からおじさんが出て来て、おばさんを落ち着かせると家の中に戻した。
「すまないね。重孝君がいなくなってからというもの、ずっとあの調子で……」
「まだ帰ってないんですか?」
「あぁ……せめて連絡でも寄越してくれればありがたいんだが……」
「警察には?」
「数週間前から捜索して貰っているが……これといった情報は何も……」
「いなくなった原因は……?」
首を横に振るおじさん。
「もしかしたら、あの子は私達と一緒に暮らすのが苦痛だったのかもしれないな……」
「そんな!!? そんな事ある訳が……無い……」
途中で口ごもってしまう。可能性の一つとして考えられる以上、ハッキリ否定する事が出来なかった。するとおじさんは微笑んだ
「君は優しい子だね。どうやら少なくとも、あの子がいなくなったのは夢川さんが原因じゃ無さそうだ」
「で、でも私は……」
いなくなる前の影野君に会っている。もし、あの時無理矢理にでも家に送り届けていれば、こんな事にはならなかったのではないか。そうした後悔が後を立たない。そんな私の心情を察してか、おじさんがとある提案をしてくれた。
「……そうだな、もし何処かで偶然にも重孝君と会ったら、伝えてくれないか?」
「えっ?」
「私達はここでずっと帰って来るのを待っているよ……と」
「……はい、分かりました。任せて下さい!!」
私はこの日誓った。必ず影野君に会わなければならない。そしておじさん、おばさんの為にも必ず連れ戻して見せる。
「……はぁー……」
とは言ったものの、影野君が何処で何をしているのか、何の手掛かりも無い。取り敢えず近所は手当たり次第に回ったが、何の成果も得られなかった。
時間だけが無駄に進んでいく現状に、私は思わず溜め息を漏らしてしまう。
「あらあら、そんな溜め息してると幸せが逃げちゃうわよ」
「あっ、すみません」
私は保健委員として保健室の手伝いをしていた。そんな時に出てしまった溜め息を心配して、相澤先生が声を掛けてくれた。
「何か悩み事? 良かったら私に相談してみない?」
「……実は……」
私は藁にもすがる想いで相澤先生に相談した。他の先生では話にすらならなかったが、相澤先生なら力になってくれるのではないかと期待した。
「そうだったの、影野君がね……」
「先生、影野君と話す機会が多かったですし、何か知りませんか!?」
「……ごめんなさい、力になれそうにないわ」
「そうですか……」
そう上手くはいかない。そもそも一介の学生が行方不明者を探し出すなど不可能に近い。それでも私は諦める訳にはいかない。
「…………」
すると相澤先生は手帳に何かをメモし始めた。そして書いたページを破り、私に手渡して来た。
「こ、これは……?」
「そこに行ってみなさい。もしかしたら面白い物に出会えるかも」
「?」
意地悪な言い方をする相澤先生。怪しさしかないのだが、これ以外に手掛かりが無いのも事実。私は半信半疑で休みの日、メモに書かれた場所へと足を運んだ。
「こんな所にいったい何が……」
地元からかなり離れた大都会。まさかこんな所で影野君に関する手掛かりが得られるとは毛程も思ってはいない。
目的地は“WTS”、世界的に有名なテレビ局。もしかしてテレビ局に頼んで影野君を捜して貰えって意味なのかな。
そんな事を考えながら近付くと、警察や機動隊が入口を封鎖していた。
「中は危険だから近付いちゃ駄目だよ」
「な、何があったんですか?」
「TVを見てないのか。怪異人がWTSを乗っ取ったんだ」
「か、怪異人が!!?」
「つい先程、“ジャスティス・ワン”と“アマゾネス・タイガー”が中に突入したから、もう間も無く鎮圧されるだろう」
「そ、そうですか……」
「分かったら向こうに行っていなさい」
「は、はい分かりました……」
相澤先生が言ってた面白い物って、まさかこの事だったのだろうか。もしそうなら、どうして相澤先生が怪異人の襲撃の事を知っていたんだろう。
などと考えていると、目の端に人影が走り去るのを捉えた。
「もしかして……怪異人!!?」
非労運を目指す私としては、黙って見過ごす訳にはいかなかった。戦わないにしろ、後を付けてアジトの場所を特定しようと考えた。
「いったい何処に行ったの?」
追い掛ける最中、私は怪異人を見失ってしまった。辺りを見回しながら、逃げ込みそうな場所を探し回る。
「……あれって……まさか……」
そこで見つけてしまった。ずっと捜していた人物を。私は慌てて駆け出した。あの後ろ姿、間違いない。私はその人物に声を掛けた。
「影野君!!?」
「!!?」
驚いた様子で振り返る影野君。私は思わぬ所で影野君と再会を果たした。
再会した影野と夢川。
この危機をどう乗り越えるのだろうか!?
次回もお楽しみに!!
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