メッセージ
前回、WTSに潜入した影野達。
果たして彼は世界に何を伝えるのだろうか!?
人通りの激しいスクランブル交差点。スマホを見ながら歩く人達、友達とお喋りしながら歩く人達、信号が切り替わる少し前に早歩きで飛び出す人達など、様々な人達が行き交っている。
そんな中、一組のカップルがイチャイチャしながら歩いていた。
「それでねー……ねぇ、あれ何?」
「え?」
ふと、女の方が足を止めて指を差した。それに釣られて男の方も足を止め、女が指差した方向に顔を向けた。
女が指差した方向には、ビルの壁に埋め込まれた大型スクリーンがあった。本来であれば、企業のPR映像やニュース番組の映像が流れている。が、そこに映っていたのは一人の怪異人が立っている映像だった。
その異質な映像に、カップルだけで無く、他の通行人達も足を止め、車に乗っていた人達も一時停止し、すっかり釘付けになっていた。
***
住宅街。ここでも、とある異常事態に見舞われていた。テレビを見ていた子供が母親を呼ぶ。
「ママー、テレビに変なのが映ってるー」
「えー?」
母親が確認すると、先程まで映っていた教育番組から一人の怪異人が立っている映像に変わっていた。不思議に思いながらも、母親はリモコンを手に取り、番組を切り替えようとする。が、どのチャンネルも全く同じ映像が流れていた。
「どうなってるの?」
***
世界連合協会。世界中の戦争が完全終結した際、二度と同じ過ちを起こさない為に作られた組織。主に世界の平和を維持し、反乱分子となり得る存在を監視する事が役目である。
そんな世界連合協会だが、中では軽いパニックが起こっていた。突如、世界中の配信が乗っ取られ、代わりに一人の怪異人が立っている映像が流れ出した為、その対応に追われていた。
「いったいどうなっている!!?」
「恐らくWTSのスタジオが、何者かに乗っ取られたかと思われます!!」
「映像を切る事は出来ないのか!!?」
役員がパソコンにコマンドの入力・実行をするが、その直後にerrorという赤文字が表示される。
「駄目です!! こちらからの入力は受け付けません!!」
「くそっ、非労運は何をしている!!?」
「先程、“ジャスティス・ワン”と“アマゾネス・タイガー”の二人を現場に向かわせました!! 十分後には着く予定です!!」
「それまで指を咥えて見てろと言うのか!!? 誰か、現場近くにいる非労運はいないのか!!?」
「それが……WTSで警備をしていた“ファイターナックル”と連絡が取れなくて……」
「何だと!!? くそっ、こいつらの目的はいったい何なんだ!!?」
「主任!!」
「今度はどうした!!?」
「映像に動きがありました!!」
「何!? モニターに映せ!! 大至急だ!!」
「はい!!」
主任と呼ばれる男の指示に従い、役員達がモニターを表示する。そこには一人の怪異人が口を開き、喋り始めている姿が映し出されていた。
『皆さん、初めまして。私は“マスターグレー”、この世の秩序を正す者です』
***
「皆さん、初めまして。私は“マスターグレー”、この世の秩序を正す者です」
影野……もといマスターグレーが喋り始めた。その瞬間、場の雰囲気が緊張に包まれた。が、当の本人は全く緊張していなかった。
これから自分が時代の革命を引き起こす高揚感からか、それとも漸く怪異人として人生の一歩を踏み出す事が出来た安心感からか。
「戦争が終わり、世界は平和になった。しかしその爪痕によって、怪異人という犠牲者が生まれてしまいました。本来であれば、世界は彼らを保護しなければいけなかった。自分達の過ちを……罪を……償う為に……全面的に生活をサポートするべきだった」
映像を通して、マスターグレーの言葉に、皆が目を向ける。耳を傾ける。常に人の会話で騒がしい世界が、この時だけはとても静かだった。
「しかし、世界は私達から目を背けた。それだけじゃ飽きたらず、差別し、迫害し、全てを奪った。人々の安全と平和を約束する政府が、元を辿れば同じ人間である我々を否定するなど、これは明らかに矛盾している」
今も尚、隠れて暮らしている世界中の怪異人達は、マスターグレーの話を聞きながら同意する様に頷く。
「だからこそ、先人達は立ち上がった。自由の為、人権の為、彼らは反撃に出た。しかしそれも非労運達によって、打ち崩されてしまった。何故か、それは彼らに統率力が無かったからだ。どんなに個人同士で優れていても、必ず限界はある。そんな彼らをまとめ上げる存在がいれば、きっと成功していただろう」
過去、反撃の狼煙を上げた怪異人達は計画も無しに、正面から突っ込んだ。結果、全滅する事になった。勇敢と無謀を履き違えてはいけない。二度目の悲劇を引き起こさない為にも、俺が彼らを導かなければならない。
「ここで私は宣言する!! 彼らが果たせなかった想いを引き継ぎ、今一度我ら怪異人に自由を手に入れて見せる!! そして世界に新たなる秩序の確立を!! 怪異人の怪異人による怪異人の為の世界!! 集え同士よ!! 君達の反撃は今始まったのだ!!」
暗い地下に潜む怪異人達が、両腕を挙げながら喜びの雄叫びを上げる。またある怪異人は喜びのあまり、涙を流した。
「最後に、非労運達よ。お前達の時代は終わりだ。新たな時代の礎となるが良い」
その言葉と同時に、マスターグレーは配信を切る様にアイコンタクトを送る。それに従い、近藤と姫宮の二人はスイッチを切った。
「よし、撤収するぞ」
目的を達成したマスターグレー……もとい影野は、二人を連れて急いでスタジオから離れようとするが、エレベーターと階段の両方から、何者かが駆け上がって来る音が聞こえて来た。
現れたのは二人の男女だった。一人はテレビの特撮に出て来そうな、革ジャンの暑苦しい男、もう一人は筋肉質で身長が男よりもある、男勝りな女だった。
「怪異人発見!! 成敗してくれる!! 行くぞ、“アマゾネス・タイガー”!!」
「あたしに命令するな!!」
すると男は腰のベルト、女は首のチョーカーに触れた。
「パワードアクセサリー!! こいつら非労運だ!!」
「「“装着”!!」」
パワードスーツが瞬く間に装着されていく。そして出来上がったのは、マントをたなびかせる古風な非労運と、虎を彷彿とさせる黄色と黒の縞模様が入った非労運の二人だった。
「ジャスティス・ワン、参上!!」
「アマゾネス・タイガー、参上……」
装着を終えた二人。ノリノリで名乗りを上げるジャスティス・ワンとは対照的に、アマゾネス・タイガーは渋々名乗りを上げていた。
「どうしますか?」
「まともに戦って勝てる相手じゃない。とっとと逃げるぞ」
影野の言う事に同意し、三人は非労運達を無視して窓の方へと駆け出した。
「待て!! 何処に行くつもりだ!!」
ジャスティス・ワンの制止に耳を傾けず、三人は窓を破って外へと飛び出した。数十メートルの高さを一気に落下していく中、アマゾネス・タイガーが破った窓から追い掛けようとして来る。
「逃がさないよ!!」
「おっと、そうは行かないぜ」
すると近藤が指をパチンと鳴らした。その瞬間、アマゾネス・タイガーが立っていた床が発火した。
「こ、これは!!?」
その火に驚き、慌てて後退りする。その間に三人は地上に降り立ち、急いで路地裏へと姿を消した。
「おい、何してるんだ!!?」
「うるさい!!」
***
路地裏を通り、なるべく人目を避けながら走る三人。近藤を先頭に姫宮、影野という順番で走っている。特に最後尾の影野は追手の存在を警戒しながら走っている。
誰も追って来ない事を確認すると、一度足を止める三人。同時に怪異人から人間の姿へと戻る影野。
「(自分の意思で変身出来る様になったのは良いが、怪異人の姿ってのも……結構体力使うんだな……次はもっと長時間姿を保てる様にするのが課題だな……)」
「追手は……いないみたいだな」
「無事に逃げ切れて良かったですわ」
「安心するのはまだ早い。この曲がり角を曲がった先にマンホールがある。そこから通って行けば、安全にアジトへと戻れるんだ。それまで気を緩めるんじゃないぞ」
「分かってるよ」
改めて作戦を確認した三人は、目的のマンホールに向かう為、曲がり角を曲がろうとした。近藤、姫宮の二人が曲がりきり、最後影野が曲がろうとしたその時、背後から声を掛けられた。
「影野君!!?」
「!!?」
まさかこんな所で自分の名字を呼ばれるとは思ってもいなかった影野は、思わず足を止めて後ろを振り返ってしまった。そしてそこには思わぬ人物が立っていた。
「ゆ、夢川さん……」
もう二度と会う事は無いと思っていた人物。クラスメイトの夢川美咲であった。
ここでまさかの夢川美咲と再会!!
この状況をどう乗り切るのだろうか!?
次回もお楽しみに!!
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