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姫宮グループ

前回、茨の道を進むと決めた影野重孝。

そんな彼が仲間集めの為に訪れた場所とは……。

 姫宮グループ。第二次世界大戦の時代から友敵を問わず、兵器を販売して巨利を得る所謂“死の商人”。


 代表取締役“姫宮金造”は、一代で姫宮グループを指折りの軍事産業に伸し上がらせた実力者だ。


 その勢いは留まる事を知らず、海外の大手軍事産業のご令嬢“アメリー・W・ネマー”と婚姻を結ぶ事で会社を合併。姫宮グループは名のある軍事産業の中で、トップに君臨する事となった。


 娘の“姫宮レジーナ”も生まれ、正に順風満帆な人生を送っていた。しかし20XX年、全世界の戦争終結によって経営は一気に失速。


 一時期は怪異人(かいじん)の登場により、討伐利用の目的で何とか持ち直す事もあったが、非労運(ヒーロー)の活躍がとどめの一撃となり、姫宮グループは遂に倒産してしまった。


 かつて世界中にその名を轟かせた姫宮だが、今や見る影も無い。歴史の表舞台から姿を消し、最早その存在すら伝説となりかけていた。


 だが、ここで人々の中に一つ疑問が生じた。あの姫宮グループが戦争終結だけで本当に倒産するのだろうか。数多の権力者から優遇され、一時には姫宮グループとのコネクトを巡り、多くの血が流れたとも言われるあの姫宮グループが、こうも容易く倒産まで追い込まれるのか。


 現に他の軍事産業は戦争終結後、電気製品や自動車メーカーに生まれ変わり、今も細々と活動を続けている。


 そんな状況の中、いったい何故軍事産業のトップは倒産してしまったのか。その疑問は様々な考察を生んだ。


 ある者は『世界の均衡を保つ為に政府によって潰された』


 ある者は『他の軍事産業がトップを独占されていた腹いせに潰した』


 ある者は『怪異人(かいじん)達に襲撃を受けて、潰されてしまった』


 など、考察からいつしか噂の域にまで達した。噂が更なる噂を呼び、遂には『追い詰められた姫宮金造が発狂し、家族を殺して自殺した』という根も葉もない噂まで飛び交う事になった。


 しかし、この様な噂が広まってしまうのも仕方がないのかもしれない。倒産する数ヶ月前、姫宮金造が妻子と供に突然失踪してしまったのだ。


 従業員は勿論、秘書でさえも彼らの居場所は知らされていなかった。姫宮の邸宅を訪れるも、反応は無かった。そこで政府は思い切って家宅捜索に乗り出した。が、結果として誰一人として発見する事は出来なかった。それ処か、突入した全隊員が体調を崩してしまった。


 そうした経緯から、姫宮家は全員不遇の死を遂げて、その怨念が家に取り憑いていると噂される様になった。


 そんな呪われた邸宅に、俺は足を踏み入れようとしていた。


 黒い両開きの門と高い塀に囲まれており、中にはだだっ広い庭が広がっており、その中心には大きな噴水が置かれている。そこを通り過ぎると広い庭に見合う程、大きな屋敷が建っている。


 白く清潔感のある壁に、青く清々しい屋根、そして所々に施されている細かで豪華な装飾が屋敷に神々しさをもたらす。


 と、ここまでがTVのドキュメンタリー番組で紹介された姫宮宅の外装だ。それも姫宮一家が失踪する前の話。今現在、黒い両開きの門は片側は外れ、もう片方も半開きになっており、高い塀には大きな穴が空けられ、落書きまでされていた。


 綺麗に整えられていた庭は草が生え放題、噴水から噴き出していた水はすっかり枯れ果て、代わりにカビが生えていた。


 白く清潔感のある壁は、外の塀と同様隅々まで落書きされ、青く清々しい屋根は剥げて色もくすんでいた。細かで豪華な装飾も欠けていたり、クモの巣が張られているなど、全くの別物に変貌していた。


 「(酷い有り様だ……)」


 相澤先生には悪いが、これは望み薄だな。もし仮に姫宮グループが怪異人(かいじん)に滅ぼされた事が本当だとしても、そいつに関する情報は得られそうに無い。こう人気が無いと、情報も満足に集められない。


 だが、折角来たのだから最後まで確かめても損は無いだろう。俺は玄関先の古びた階段を上り、ドアノブに触れる。


 「うげっ、何だこれ? ヌメヌメする……」


 思わず声が出てしまった。それ程までに気持ち悪い感触だったのだ。そのヌメリはタコやうなぎの比では無い。それに若干肌がピリピリと感じる。しかし、そんな事で引き下がる訳にもいかない為、意を決して扉を開ける。


 ギギギと不気味な音を立てながら、ゆっくりと扉が動く。中は真っ暗で、明かりなどは一切点いてない。外から漏れる僅かな光のお陰で、微かに内装を確認する事が出来る。


 中はそこまで酷く無かった。ホコリやクモの巣など張られて無く、荒らされた形跡や落書きされた様子も無い。


 「(この感覚……やはりそうか……)」


 足を踏み入れた瞬間、全てを悟った。何故、屋敷を調査した連中が全員漏れ無く体調を崩したのか。答えはシンプル、この屋敷……“汚染”されている。


 あの公園にいたから分かる。ここは放射線に汚染されている。まさか軍事産業のCEOの家が放射線に汚染されているなど、思ってもいないだろう。その油断が悲劇を招き、結果として呪われた屋敷と噂される事になった。


 「(だが……妙だな……)」


 何故、屋敷全体が汚染されているのか。確かにそれも気になるが、俺はもっと別の事が気になっていた。この外の光からでも分かる、中に対する圧倒的な違和感。それは、あまりにも綺麗過ぎるという点だ。


 汚染されていたから、誰も近付けなかったとも考えられるが、だとしても全くホコリが積もってないのは明らかに不自然だ。


 それに過去、何度か政府は屋敷に調査員を派遣している。つもり多少なりとも、散らかっている方が自然なのだ。わざわざ調べた物を丁寧に仕舞うとは考えにくい。


 つまり何者かがいる。汚染された屋敷内を動き回り、荒らされた内装を元通りにしたり、掃除したりする何者かが。


 「(問題は何処にいるかだが……)」


 それは入って見なければ分からない。ずっとこうして玄関先で立ち尽くしていても仕方が無い。一歩、踏み出さなければ。


 そう思い俺は一歩前へと踏み出し、屋敷の中へと入った。次の瞬間!!


 「っ!!?」


 バタン!! と、扉が勢い良く閉まった。慌てて振り返り、開けようとするが扉はびくともしなかった。押しても引いても開かない。それどころか、外側のドアノブと同じ様に内側もヌメヌメしていた。


 「くそっ!! いったい何なんだこのヌメヌメは!?」


 そんな事を考えていると、何かが背後を通り抜ける。俺は急いで振り返るが、扉を閉められた事で唯一の光源を失い、辺り一面真っ暗になってしまった。


 周囲を警戒するが、その度に何かが背後を通り抜ける。未だに姿を確認する事は出来ないが、気配だけは強く感じる。


 「誰だ!? 姿を見せろ!!」


 大声で威嚇するが、逆効果だったかもしれない。冷たくヌメっとした液体が、上から落下して首筋に当たり、背筋を伝って行く。


 見上げるとそこには、真っ暗な闇の中を蠢く何者かがいる事が、僅かに分かった。俺が即座にその場を離れるのと同時に、そいつは上から落下して来た。もう少し離れるのが遅れていたら、押し潰されていたかもしれない。


 この闇の中、相手は俺の位置を正確に捉えている。対して俺は自分の現在位置も分からない状態だ。このままでは不味いと思い、俺は近くにあった物を手当たり次第に投げ付けた。自分でもいったい何を投げているのか分からないが、少しでも相手に当たって隙を作れれば、この場から逃げられるかもしれない。


 「当たれ!! 当たれ!!」


 すると幸か不幸か、それとも建物自体が老朽化していたお陰か、投げ付けた物が扉に当たり続けた事で、扉その物を破壊した。


 「やった、光だ!! これで奴の位置が……っ!!?」


 しかし、そこには誰もいなかった。いったい何処に……などと考えながらも、俺は光が差し込む玄関の方へと走り寄る。辿り着くと辺りは少し湿っていた。


 すると再び上から冷たくヌメっとした液体が目の前を通過した。慌てて後方へと下がり、液体が落下して来た所を見上げる。今度は外からの光もある為、その姿をはっきりと捉える事が出来た。


 下半身はまるでナメクジ、上半身はムカデの様に腕が何本も生えており、目はクモの様に複数存在していた。そして何よりも、そいつから発せられる気迫はただ者ではない事を証明していた。


 「これは……近藤よりも遥かに強そうだぞ……」


 俺は軽く絶望を感じていた。

突如現れた謎の怪異人。

次回、影野VS謎の怪異人

次回もお楽しみに!!

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