表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鎧の魔物奮闘記  作者: 晴れ甲羅
第一章 転生編
97/110

第九十四話〜血戦の刻シーニャ視点Part2〜

投下です!


***


「ゼェアアア!」


シーニャが鎌を、腕を、足を振るう度に魔物が千切れ飛ぶ。

依然として魔物達は一撃も与えられず、魔力だけが消費される状況だ。


「そろそろ倒さないと本気で不味いかな……」


またワルドサーペントが殺され、召喚する。

もはや男の魔力の消費は看過できない程になっていた。

召喚魔法は召喚しているだけでも魔力を消費する。このままでは攻めきれずにジリ貧だ。

一気にカタを付けるしかないだろう、あまり使いたくは無かったが……仕方ない。


「召喚:オケアノス!」


魔物がほとんど殺されたタイミングでの召喚。

それはオケアノスと呼ばれた魔物がどれほどの強さかと言うことを表していた。

男が地面に手を付くと巨大な魔法陣が水面に垂らした絵の具のように広がる。


これはマズい! そう判断したシーニャは召喚を止めようと飛びかかるが黒猫が幾重にも張り巡らせた障壁がそれを許さない。

シーニャはその障壁をまるでベニヤ板のように破壊するがそれで召喚は終わってしまった。


一瞬の閃光、その光が収まる。


「ウルルル……」


中から現れたのは体長三メートル程の異形の怪物だった。

ライオンを思わせるような流線型のフォルムだが、その表皮は紫色の滑らかな鱗とその隙間から生えた毛に包まれている。

細めの体躯とは対照的に尾は異常に発達している。

何より奇妙なのがその頭部だった。


無理矢理表すなら四つ目の鹿の頭蓋骨に振動する鰓が生えている、といったところか。

だがその犬歯は草食動物のものとは思えない程に長く鋭く、まるで黒曜石のナイフのようだ。

そんな犬歯が下顎に四本、上顎に四本の計八本。


「こいつは……」


こんな魔物は見たこともない。

否、シーニャも一つ一つの特徴なら見たことはある。

だがこんなにも多数の魔物を寄せ集めたような魔物は見た事が無い。

そこでシーニャはあることを思い出した。


「キメラ……」


シーニャは王城に転生者に関する書物で読んだ事があった。。

多数の生物を紡ぎ合わせ、一つの強力な生命体にする術があると。

曰く、その生物の名はキメラ、神をも恐れぬ蛮行だ、と。

遥か昔、転生者がキメラを作り上げ、一国を滅ぼしたことがある。

書物にはそう書かれていた。

書物の挿絵ではもっと歪な姿形をしていたが、間違いない、アレはキメラに近い存在だ。



「おお! 知ってるんだね! でも残念、こいつは普通のキメラとは少し違うんだ。あんな不完全なツギハギじゃ無い」


「それは一体……?」


「おっと、これを言っちゃいけないんだったね。悪かった悪かった」


そう言ってヘラヘラ軽薄な笑いを浮かべる男。

あいつは一体誰と会話しているのだ? そうシーニャが疑問に思うがわからない。

気が触れているのだろうか、その時、ふと記憶が蘇る。

ローブの奥の顔をしっかり見てやっと思い出した。


「貴方、この国に召喚されましたね? 名は確かカシマ、カシマユキヤ━━━━━━━━」


瞬間、男の雰囲気が変わる。


「俺をその名前で呼ぶな!」


激昂する男改めカシマユキヤ。


(彼は名簿には載っていたが、事故死したことになっていたはず。一体何故ここに? もう少し情報が欲しい)


「悪かったです。ではなんとお呼びすれば?」


「ああ……ハディアと呼んでくれ」


「ではハディア、貴方は何故この王都を攻めようと?」


「決まっている! 復讐のためだ!」


両手を仰々しく突き上げ感情的に叫ぶカシマ。

その目は虚で、常軌を逸していた。


「誰に、復讐を?」


「決まっている! ナルタの奴らも、俺を助けなかったクラスメイトの奴らも全員だ!」


一体カシマは何を言っているのか? 事実を知る由も無いシーニャにはわからない。

真相を知っているのはごく一部のクラスメイトに上層部、そしてアキトだけだ。


「だからといって他国まで巻き込んで良いとでも……?」


「うるさいうるさい黙れ死ね! 殺せ、オケアノス!」


カシマがそう絶叫する。


「アあああアアあア!」


まるで人間のような声で咆哮するオケアノス。

そして瞬間、


「アアッ!」


飛び掛かってくる。

だが遅い、単純なスピードで言えば先程の魔物達にも大きく劣るだろう。

余裕を持って躱し、斬りつける。


「っ⁉︎」


その瞬間だった。

一気にシーニャの体が重くなる。

吐き気と共に頭痛や眩暈がシーニャを襲う。

視界が歪み、まともに立っていられない。


「おっ、これは効くんだな、体も満足に動かないだろうし。ネタ明かしをしてあげよう、オケアノスの血は多数の魔物の魔力が混ざっているのさ。そいつが魔力の多い者、つまりは強者程良く効く毒なのさ」


シーニャとこの毒の相性は最悪に近い。

戦闘スタイル自体、相手の魔力が溜まってしまうのだ。

マーサの薬でなんとか持っていたものの、シーニャの体の内側は休憩を挟まない戦闘ですでにボロボロだったのだ。


その均衡が、今崩れた。

反動は大きい、見た目には現れないが魔力の乱れが酷い。

ろくに身体強化も維持できない。


「よし、戻れ。オケアノス」


そしてカシマはオケアノスを消すと、オケアノスを除く魔物を全て召喚した。


シーニャは腰のポーチから薬を引き抜くと一気に飲み干し、地面に打ち捨てる。

多少視界の歪みはマシになったが、依然として身体強化も出来ない。


息も絶え絶えと言ったシーニャの後ろに白い物体が現れた。

そしてその物体は一気にシーニャに絡みつく。

シーニャはもがくが体に思うように力が入らない。


そうしてシーニャは意識を手放すのだった。


いかがだったでしょう?

シーニャ視点は後一、二話です!

次回投稿は五月六日の木曜日とさせていただきます!

感想や評価、ブクマ等いただけるとうれしいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ