第九十三話〜血戦の刻シーニャ視点Part1〜
投下です!
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アキト達が神の使徒と戦っていた頃、シーニャは別働隊を叩きに向かっていた。
距離はおおよそ五キロ、シーニャの足ならばすぐにたどり着ける距離だ。
数分走ると移動する魔物の群れが見えて来た。
(少ない、だけど一体一体が強い……)
数は十体も居ないが、個々の強さが桁違いだ。
これは厳しいかもしれない。
だがやるしかない、全滅は難しいが、少なくとも数は減らさなければなるまい。
魔物を使役しているらしき人影が蛇の魔物、ワルドサーペントの上に跨っている。
狙うは奇襲、一気に数体は持っていきたいが……
最後尾は大型の白い三つ首のドラゴンだ。
気配を消して距離を詰める、よし、気付かれていない。
身体強化で全身に魔力を回す。
そして無言で後ろから飛びかかり、右から一気に首を薙ぐ。
「ギャアアアア!」
「なっ⁉︎」
予想よりかなり硬い。
左側の首が一本残ってしまった。
叫び声を上げられ、気づかれてしまった。
先に使役者だけでも潰さなければならない。
そう判断したシーニャは三つ首ドラゴンをそのままに使役者の男に斬りかかる。
「はあああああ!」
「危ないなっ!」
その一撃は男が上体を逸らして避ける。
だがその下にはワルドサーペントが居る。
ワルドサーペントは哀れにも鎌を避け切ることが出来ず、真っ二つに切り裂かれた。
シーニャはその頭に鎌を突き立てると放電、沸騰して膨張した体液が頭を吹き飛ばす。
続けて目の前の有翼獅子に斬りかかるが飛び退かれ、片方の翼を切り込みを入れるだけに終わった。
追撃をしようとしたが嫌な予感がして飛び退く。
すると眼前の空間を針が通り過ぎる。
飛んで来た方向を見ると全身針まみれの黒と白の魔物が居た。
遠距離攻撃手段を持った魔物は厄介だ。
背中から飛ばしてくる針を躱し、切り払い距離を詰めて攻撃。
脇腹には針がない、そこに向けて鎌を振り抜くが直前で魔法障壁に逸らされ浅く傷をつけるだけに終わってしまう。
一旦距離を取り、改めて魔物を把握する。
現在生きている魔物は、八体。
いつの間にか首を再生させた三つ首のドラゴン。
針を飛ばしてくる白黒まだらの魔物。
空を駆ける有翼獅子。
骸骨、身なりからして魔法を使うと見ていいだろう、ならばワイトか。
黒い一本角の狼、昔戦ったガルムと言う魔獣に似ているがサイズは三倍以上も大きい。
そしてゴブリンスペリアー、アイツは前に逃した個体と同じ奴だ。
使役者の肩に乗っている黒猫、魔力的にアイツのようだ、さっきの障壁は。
最後に……アレはなんだ? 不定形の白いような、辛うじて人のような形をとっているが正体はわからない。
使役者が手を振り下ろすと一気に魔物が飛び掛かって来る。
飛んでくる針を大回りで避ける。
そして三つ首のドラゴンの首に鎌を振り下ろす。
当然のように障壁で防がれるがそれも織り込み済み、力任せに障壁を突き破り首に鎌を突き立て放電。
ゴバッ! とドラゴンの一番右側の首が弾け飛び、断面が焦げ付く。
「ゴォォォオ!」
ドラゴンの残った首が炎を吐くが障壁で後ろから飛びかかって来る有翼獅子の方向へと受け流す。
有翼獅子は炎を避けるために大きく距離を取る。
「ガウッ!」
シーニャが障壁を解除する瞬間の一瞬を突き、黒狼とゴブリンスペリアーが同時に飛び掛かって来る。
だが遅い、黒狼の顎を振り向き様の蹴りで砕き、ゴブリンスペリアーに斬りつける。
刹那、ゴブリンスペリアーと鎌の間に障壁が張られる。
これまでとは違ったタイプの障壁だ、斬撃を包み込むようにして受け止めている。
「ゼイッ!」
魔力で黒猫の障壁を中和、ゴブリンスペリアーに斬りつけるが浅い。
しかも手に持った盾で防がれた、鎌は盾を易々と切り裂くが一瞬タイムロスが生まれる。
鎌は惜しくもゴブリンスペリアーを浅く斬りつけるだけに留まる。
その瞬間、シーニャは飛び退る。
わずか一秒足らずの前までシーニャが居た空間を針が通り過ぎる。
その針を空中で一本掴み取ると勢いそのままに真上に投げつける。
驚異的な速度で投擲された針は奇襲をかけようとしていた有翼獅子に突き刺さり、撃墜する。
胸から串刺し、当然即死する━━━━━━━筈だった有翼獅子は一瞬にしてその姿を消した。
「っ⁉︎」
地面には針がカランと落ちてくるだけだった。
使役者の方を見るとグリフォンが召喚される瞬間だった。横を見るとさっき殺したワルドサーペントまで居る。
これまた厄介な、シーニャはそう思う。
恐らくは死んだ使役獣を呼び出せるという能力だろうが、もしも使役者が無限に魔物を呼び出せるなら……いや、それはない。
使役者の魔力の続く限りだろう。
だがどれほどに魔力を持っているか、一度の召喚にどれくらいの魔力が必要なのかも分からない。
「私の体が壊れるのが先か、使役者の魔力が尽きるの、どっちが早いかと言う訳ですね……」
臨むところだ、やってやろうではないか。
こちらも本気で殺させて貰おう。
シーニャは獰猛に牙を剥く、その肌には鱗が浮き、瞳孔は縦に割れる。
「久々に本気を出すのです。存分に暴れさせて貰いますよ……!」
地面を蹴り、飛び出すシーニャ。
狙うは召喚の魔力消費が激しいであろうドラゴン。
一瞬にして距離を詰め、首を一気に全て切り飛ばす。
するとドラゴンの体は溶けるように消え去った。
やはり殺した魔物は消える。
使役者にも限界は来るはずだ。
「はああああ!」
鎌を握り直し、ガルムとゴブリンスペリアーへと飛び掛かる。
黒猫が幾重にも障壁をあるが構わない。
全て一気に蹴破り障壁の向こうのガルムを蹴り殺す。
そして振り向きざまにゴブリンスペリアーが突き出して来た槍を躱し、首をへし折る。
黒白の針塗れの魔獣は仲間が居なくなった事で遠慮が要らなくなったのか針を滅多撃ちする。
だが当たらない、それどころか針を捕まえられ、再生した仲間へと投げつけられる。
投擲された針はワイトの頭蓋骨を砕くと遠くへ消えて行った。
「シャアアア!」
ワルドサーペントがその五十メートルはあろうかという巨体で地面を削りながら突進して来る。
重戦車の突撃もかくやと言う勢いの突撃をシーニャは真正面から受け止める。
そして顎を蹴り上げ頚椎を砕く。
折れ曲がったその首に鎌を突き立て放電。
高圧電流で頭を吹き飛ばす。
「まだまだァ! さっさとかかって来なさい!」
そうシーニャは獰猛に、残忍に、笑うのだった。
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