八十九話〜血戦の刻Part2〜
投下です!
***
「あれは……⁉︎」
「どうかしましたか?」
シーニャさんが驚いたような声をあげている。
いつも冷静沈着なのにどうしたのだろうか。
「少々驚きました、申し訳ありません。あれをみて下さい、魔物が陣を組んでいます」
どれどれ……
目を凝らすと、五キロ程先に見えてきた。
綺麗に陣を組んでいる。
大型の硬そうな魔物を前方に配置し、その後ろに雑兵を配置している。
魔法を警戒してか、固まった密集陣ではなく、適度に隙間を開けている。
クソッ、これだとグレランの効果が薄い。
それに加え、正規兵は大丈夫なようだが、周りの傭兵部隊に動揺が伝わっている。
マズいな。
『アキトさん、どうやら中隊長級の魔物が複数体いるようです、そいつらを殺れば統制が取れずに本能のままに集まってくれるかもしれません』
よーし、それなら話は早い。
ライフルで狙撃してやろうじゃないか。
でもみんな同じ格好をしているからどれが隊長かわからんぞ。
『見た目は変わりませんが、魔力量が違いますね。マーカーを付けて兜に投影しますのでそいつを狙ってください』
(助かる)
太鼓が鳴り、遠距離部隊に自由攻撃許可が通達される。
正直言うと、砲撃は一気に着弾させた方が効果があるような気がするのだがな。
やはり個人差があるからだろうか。
慌てて鎧を脱ぎ、仮死状態になった体を輝夜に預ける。
そして空になった中身に装備を搭載する。
よし、準備は万端だ。
後は射程に入り次第射撃を開始するだけだ。
すると敵軍が三キロまで近づいたあたりで魔法がちょうど真後ろの方から飛び始めた。
赤い尾を引いて魔法が着弾し、大爆発を起こす。
だが効果はイマイチだ。
「あれは……」
『シュンヤさんの魔法ですね』
どうやらシュンヤ達は真後ろに配置されているようだ。
するとその着弾を合図にしたかのように魔物達が叫び声を上げて一斉に突撃を開始する。
飛行型の魔物もいたようで次々に飛び立つ。
「速いですね」
そうシーニャさんが独り言ともつかぬ呟きを漏らす。
実際かなり速い。時速三十キロは出ているのではないだろうか。
そろそろライフルの射程圏内に入る。
アイアンサイトを覗き込む。
距離があるのでマーカーはかなり小さいが、なんとか狙えない程では無い。
狙うはサイズが大きいが、ライフル一発で殺せるであろうリザードマンような魔物の一団だ。
照星と照門が重なる中心にマーカーを捉え、少し銃口を上げてから引き金を引く。
銃声と反動、周りの冒険者達が驚いたようにこちらを見るが、気にしない。
一射は大きく外れ、手前に着弾する。
誤差を修正して二射目、これは右に逸れてその隣のリザードマンを吹き飛ばした。
クソッ、流石にこの距離じゃ当たらない!
『落ち着いて下さい、あなたなら当てられます』
「……ああ、そうだな」
深呼吸をして撃った三射目はトカゲ型の魔物を撃ち抜いた。
隊長トカゲがもんどりうって倒れる。
すると一気にリザードマンの群れは足並みを崩し始めた。
それは他の集団にも影響を与えたようで全体の進軍速度が少し落ちる。
よし、このまま他の魔物の隊長も撃ち殺してやる。
次は熊型の魔物だ。
これまた一射目は外したが二射目、三射目と連続で命中、沈黙した。
その後も次々と隊長格を狙撃する。
七体ほど斃したところでグレランの射程距離に敵が入る。
それにしても数が本当に多い。
地平線を埋め尽くすかのような勢いで魔物の群れが迫ってくる。
まるで津波のようだ。
と、両翼から一気に魔法の雨が放たれる。
どうやら普通の魔導士でも攻撃が到達する距離に入ったようだ。
着弾と同時に最前列の大型の魔物達が立ち上がり、魔法を受け止める。
それでも隙間から着弾した魔法でかなりの数の魔物が倒れる、だがその勢いは未だ衰えない。
大型の魔物目がけてグレランを撃ち込む。
するとその弾頭は先頭を走っていたアルマジロを六本足にして凶悪にしたような魔物に命中し、その前脚を吹き飛ばす。
もんどりうって複数の魔物を巻き込みながら倒れる、だがまだ死んでいない、もう一発打ち込んでやっとこさ沈黙させた。
やっぱり硬いな。
グレランを作っておいて本当に良かった。
しばらくただグレランを輝夜の背中から撃ち続ける。
三十発ほど撃ったところでシーニャさんに声をかけられる。
「そろそろ白兵戦です」
「わかりました。輝夜、出番だぞ」
輝夜にライフルを預け、甲羅の上に立ち上がる。
グレネードは腰に差し、予備の弾を数発脇腹のケースに入れておく。
こういう細かい改造をかなり施した。
その結果重量はかなり増したが、中身がない分と差し引きでゼロになる程度だ。
輝夜の背中から槍を引き抜くと、構える。
槍は五メートルほどある特別製だ。
槍と言っても先を尖らせた鋼鉄の棒なんだがな。
そしてマグナムを吊り下げたのとは反対の腰にメイスを吊り下げる。
これで準備は万端だ。
ドドドドと地響きのような太鼓の音が響き渡る。
そしてドン! と一際大きく太鼓が打ち鳴らされる。
突撃の合図だ。
オオオオオ!
鬨の声と共に一斉に突撃する。
輝夜が叫び、地響きを起こしながら駆け出す。
シーニャさんも鎌を構えて矢のような速度で駆け出していた。
どんどん距離が縮まる。
そして会敵するその瞬間、甲羅から槍を構えて、大型の熊のような魔物に飛びかかる。
「おおおお!」
狙うは心臓だ、鎖骨と肋骨の隙間を狙い、槍を突き出す。
「グギヤァア!」
よし、刺さった。
呻きながら倒れる熊型の魔物。
熊型の魔物の胸から突き出た槍をを半ばから斜めに切り取り、後続のゴブリンに投げつける。
そして腰のメイスを引き抜く。
手当たり次第にゴブリンを殴る、蹴る、潰す、投げ飛ばす。
輝夜の方を見ると大型の魔物の首を噛み砕いていた。
流石だ、やはり魔物の王は伊達では無いようだ。
シーニャさんも鎌を手に大暴れしているようだ。
大型の魔物も雑兵も分け隔てなく斬り伏せ、殴り飛ばし、鏖殺する。
『上ですっ!』
「おう!」
腰からマグナムを引き抜き、上へと向けて六発全て撃ち込む。
と同時に即座にその場から飛び退く。
そこへ翼竜モドキのような魔物が落ちてくる。
『戦闘中の余所見は命取りですよ!』
「すまん!」
言いつつ後ろから飛びかかってくるゴブリンに後蹴りを喰らわせる。
このままでは俺の事を倒せないと思ったのか、一気に飛びかかってくる。
流石にこの数は捌き切れない……が、問題はない。
メイスとマグナムを腰に戻し、ダイナマイトを取り出す。
導火線に着火、丸まって攻撃をやり過ごす。
背中に攻撃が加えられるがなんのその、全く効かない。
頃合いを見計らってダイナマイトを投げる。
ドォォォン!
腹に響くような衝撃が襲う。
少しして立ち上がると辺り一帯は綺麗さっぱり、敵はみんな倒れていた。
何羽か翼竜モドキも墜ちたようだ。
味方は……巻き込んでないな、よし。
「じャ、じゃ、ぎゃ」
(あれま、発声機がやられてる)
『多分衝撃で発声板がやられてるだけですよ、真っ直ぐにすれば戻るはずです』
(そうかな?)
そう、なんと発声の魔法陣と板を組み合わせ、板を振動させることで声を出せるようにできたのだ。
鎧だけのまま声を出せるのはデカい。
喉に手を突っ込んで発声器を取り出す、するとシージアの言った通り板が歪んでいた。
真っ直ぐに直して取り付ける。
「あ゛ー、あー、よし、多少くぐもってるけど話せる程度にはなったな」
『また来ますよ、今度はガルムとオークの群れです、隊長格も生き残っていますし、一筋縄ではいきませんよ』
「おう、任せろ。輝夜!」
マグナムを装填しながら輝夜を呼ぶとちょうど輝夜の方も手空きだったようだ。
一人じゃ後ろに数体逃す可能性があるからな。
「よーし、もういっちょ暴れますか」
「ゴアァアァ!」
輝夜もやる気はバッチリ。
負ける気がしないな。
「さあ! じゃんじゃんかかってこい!」
いかがだったでしょうか?
出来ればもう一話投稿したいのですが……どうなるかはわかりません!
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