第八十六話〜準備〜
投下です!
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拝啓、アキトくんへ、これはキミが知っておくべき事だ。
今から述べる事実はキミにとって衝撃的なものかもしれないが、落ち着いていて欲しい。
そしてこの事は本人にはもちろん、他の誰にも話さないで欲しい。
本当ならキミに伝える事も控えた方がいいのだろう。
詳しい所は僕も良く知らないが、シーニャはキミをとても大切にしているようだ。
お節介かもしれないが、このままではキミが気の毒過ぎる。
おっと、こんな前置きはどうでもいいんだ。
早速本題に入らせて貰おう。
シーニャはこの戦いで死ぬかもしれない。
この事をキミに伝えたかったんだ。
動揺するのもわかる、理由も気になるだろう。
今からそれもキチンと説明するから安心してくれ。
先ずシーニャの戦い方はキミも知っての通りだろう。
そう、魔物の魔力が体内に入ってしまう、そしてそれを打ち消すためにマーサから薬を貰っている事も。
これは流石に不味い、というか僕がシーニャに殺されるので伏せさせて貰うが、シーニャは生まれつき特殊な体質なんだ。
まあその関係もあってあんなに強い訳だが、無敵という訳ではない。
一度にあまりに多くの魔物や、非常に強力な魔物を相手にすると魔力が身体に蓄積され、悪影響が出始める。
普通なら時間経過で排出される筈なのだがシーニャはそれが上手く出来ないんだ。
それでもまだ薬で何とかなる程度だった、だが今回の戦いはこれまでとは一線を画すような戦いになる筈だ。
恐らく、いや、確実にシーニャの体は持たないだろう。
だが止めないでやってくれ、これは紛れも無い本人の意志だ。
それに加えて、シーニャが参戦しないと負けてしまうのも確かだ。
どうか、シーニャの覚悟を受け止めてやってくれはしないか。
シーニャの友人としてキミにお願いしたい。
アーガス・カナベルより
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「まーじか……」
『まーじですね……』
いやこれ、うん、えぇ……?
頭が混乱するぜ。
えーと、要するに、
(この戦いでシーニャさんが死ぬ?)
『そ、そういう事ですね?』
シージアもいまいち実感が湧かないようだ。
そりゃそうだ、シーニャさんが死ぬイメージなんて微塵も湧かない。
「どうしたんだい? その手に持ってる紙はどうしたんだい?」
ティーポットを持ったマーサさんに声を掛けられ、我に帰る。
マズい、この紙はどうにか誤魔化さねば。
「いや、お茶の箱に入っていたけど何でもないみたいです、はい。多分湿度を調節する的な?」
そう言って箱の底の方に紙を押し込む。
どうだろうか、怪しまれてはいないだろうか。
「そうかい、ならちゃんと仕舞っとくんだよ」
ふぅ……
どうやら怪しまれずに済んだようだ。
「じゃあ淹れるけど何か甘いものでもいるかい?」
「いや、大丈夫です」
ギルドで飲んだ時はあんなに美味しかったお茶も、今は味がしなかった。
***
自室にて弾を作りながら手紙の内容について考える。
シーニャさんはこの戦いで死ぬ可能性が高い。
だがシーニャさんは戦おうとしている。
そしてシーニャさんが居ないと負ける可能性が非常に高い。
「どうしたらいいんだ……」
『非常に、非常に難しい問題ですね……』
「ああ、本当に、どうすれば良いか俺にはわからない」
『私にも完璧な解決策は思いつきません……』
うーん、どうしたものか。
いや割とマジでどうしよう。
俺と近しい人には正直もう死んで欲しくないのだ。
もうあんな思いは沢山だ。
「俺がシーニャさんの周りに群がる奴等を出来るだけ殺すか?」
『ですね……それが一番現実的かも知れません』
「よし……シーニャさんは、俺が殺させない」
まさか俺がこんな立場で、こんなクサイようなセリフを吐くことになるとは。
人生とはどうなるか分からないものだ。
そうと決まれば後は簡単だ、目標に向けて突き進めば良いのだから。
『そうと決まれば予定です、予定を立てますよ!』
「今も一応あるんじゃないのか?」
『もっと具体的な目標を立てるんですよ! そろそろ強引に観測出来る近さですからね、まあこっちのことがバレるかも知れませんがバレたところでどうしようもないでしょうしね』
もうそんな距離に居るのか……
全然そんな雰囲気も何も無いのがまた恐しい。
「で、どれくらい居るんだ?」
『うーん、おおよその数にはなりますが、総数は六万程度ですね。でも強さはピンキリの様です。一番強い奴でも輝夜ちゃんがタイマンで圧勝できるくらいですね。でも一つ気がかりなのが二万人分の魔力が足りないんですよね』
ということは……
「めっちゃ上手いこと隠された別働隊が居るかも知れないってことか?」
『そういうことですね。予備隊が城壁にも配置される様なので対応は可能とみられますが、警戒しておくに越した事はないでしょう』
そうだな、別働隊か。
やっぱりただ正面ゴリ押しじゃあまりに芸が無いもんな。
と、そうそう。シージアに聞きたいことがあったんだった。
「そうそう、シージア、前から気になってたんだが包囲されたらどうするんだ? 流石に全方位に対応する程の戦力は無いだろう?」
包囲戦っていうのはそういう時のためにあるのでは無いのだろうか?
まあ三分の一の兵力で包囲して負けた話はあるが、あれは例外だろう。
『はい、定石ではそうなのですが、この都市ははそのシチュエーションに特化して設計された様な都市なんですよね。攻め落とす側は三倍の兵力が必要と言いますがこの都市を攻めるには私の見立てだと五倍以上の兵力が必要ですね』
「ほー、そんな堅固な要塞なのか。やっぱり魔法があると防御側はかなり有利になるのかもな」
『ですね』
「そうだ、シージア。飛ぶ魔物とかは居ないのか? ワイバーンとかみたいな感じの」
『うーん、恐らく居ますね。でも数はそう多くはないでしょうから、居たらパッパとライフル撃ち落としちゃいましょう』
厄介ですからね、とシージア。
そりゃそうだ、この時代に有効な対空攻撃手段なんて魔法くらいしかないだろうからな。
その魔法の命中精度もそんなに高くなさそうだしな。
「だな」
『ですです……じゃあ具体的な目標を決めましょう。目標と言うのは弾や武器の生産ですね。それを具体的に決めましょう』
「了解だぜ」
『とりあえずライフル弾はあと百発もあれば十分でしょうが、問題はマグナムと迫撃グレネードランチャー……長いですね。とりあえずグレランでいいでしょう。グレランの弾です』
「確かにマグナムはもう一丁作らないといけないし、弾も足りないよな」
『そうなんですよ、現地でもある程度作るとしても少なくともこれは三百は欲しいですね』
やっぱり必要な数は多いな。
乱戦になった時に取り回し易いのはマグナムだろうしな。
『そうです、しかもグレランの弾は大量に撃ってなんぼですからね。少なくとも五百は作りたいですね……』
「五百か……かなりキツいペースだな」
三分で一発作ったとしても千五百分、丸一日以上かかってしまう。
それに加えまだまだやることは有る。
まあ泣き言を言っていても仕方が無い。
「うっし、早速やるか」
『頑張りましょう!』
「おう、任せとけ」
シーニャさんが死なない為でもあるからな、気合が入るぜ。
遅くなって本当に申し訳ありません……
良いアイデアが浮かばなかったのですorz
次回投稿は未定とさせて頂きます。
そろそろ連載一年なので連続投稿でもできたら良いのですが……
感想、評価やブクマを頂けると嬉しいです。




