第八十話〜感情というものは良い〜
投下です!
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「で、出来たぞー!」
苦戦する事早くも十時間、夕食も挟みやっとの思いで完成させた。
ちなみに夕食はじゃがいも中心のメニューでとってもおいしかったです。
『やりましたね!』
「ああ……遂に完成だな。めっちゃ大変だったぞ……なんでライフルを作る時より部品が多いんだよって話だけどな」
『まあ回転機構の分ですね、一回作ってしまえば次からは慣れてるので大分楽になりますよ。これも必要な過程ですよ』
なんだか名言風なことをシージアが言っているが、確かにそうだ。
目的だけで無く、その過程にあるものもまた重要なのだ。
うん、やっぱり名言だったな。
確かにリボルバーの作り方はこれで覚えた。
次からはもう二時間もかからずに作れる……と思う、多分。
うーん、それにしてもカッコいいな。
我ながら惚れ惚れするほどのフォルムだ。
「中々イケてるフォルムだと思わないか?」
『確かに、これぞマグナム! みたいな見た目してますね。こういう銃を持ってるキャラクターいませんでしたっけ? ゾンビが出てくるゲームか映画か……』
「バイ○ハザードのバ○ー・バートンだな」
『その人が持ってるあれは44マグナムでしたっけ? それにをモデルにしたんですか?』
「そうそう……ってなんでバイ○ハザード知ってるんだ」
『私はなんでも知ってるんですよ? ほら、褒めても良いんですよ?』
「じゃあビックバンはなんで起こったんだ?」
『嘘です地球の一般常識しか知りません。というか今の私には人間程度の情報量と能力しかありませんのでそう言うのは高次元生命体の私に聞いて下さい』
「え? 何人も居るのか?」
『はい、何人もと言うか幾つも意識があるような感じですね。今も高次元生命体の私が世界の管理に追われている筈です。この星の神々が暴走したのも元はオーバーワークが原因ですからね』
「ええ……オーバーワークって……他の世界は大丈夫なのか?」
『ええ、おかしくなっているのはこの世界だけです。そもそも私の完璧なシステムにこんなバグが起きる事自体おかしいんですよ……』
「自分で完璧って言ったシステムは基本的に破られるんだぞ」
映画でそういう事を言う科学者は基本的にあっさり突破されるやらなんかんやらされて驚いているイメージしか無い。
実際シージアもそうなってる訳だしな。
と、今はそんな事はどうでも良いのだ。
「どうする? 試し撃ちでもするか?」
『うーん、実弾は入れなくても良いでしょう。普通にガチガチ空撃ちするだけで良いと思います』
「そうだな」
安全装置を外し、試しに引き金を引くとキチンとシリンダーが回転し、撃鉄も打ち下ろされた。
うん、特に問題はなさそうだ。
まあシージアの指示通りに作って何か不良がある方が珍しいのだがな。
「それにしても安全装置か、俺のを作るときは外しても良いか?」
ライフルと違って人に渡すものだから、一応安全装置を付けておいたのだ。
『別に構いませんが……一応構造の一部なので外すと部品のレイアウトの変更が面倒ですよ?』
「確かにそうだな……」
仕方ない、それは諦めるとしよう。
あとは弾頭の量産だが……
「この弾頭って結構作るのめんどくさいんだが」
『うーん、まあ仕方ないですよ。限られた大きさの中で最大限威力を発揮するための苦肉の策ですからね』
「それもそうか……今日はもう寝るとしよう」
『はーい、おやすみなさい』
ランプを消し、床に入るとすぐに睡魔が襲って来た。
今日は一日疲れた……
***
『ふふふ、良い寝顔です』
寝付いたアキトさんを見ながらシージアはそうひとりごちる。
彼にもかなり無理をさせている。
だが侵攻がそろそろ近いのだ。
ルート的に考えてここに向かっているのはほぼ間違いないだろう。
魔物の動きを察知したのか各地のナルタ軍もここに集結している。
それと同時に避難民がそろそろ流れ込んでくるタイミングだ。
自体は混迷を極めるだろう。
もしこの防衛がうまく行ったとしても今後しばらくは国が不安定になるはずだ。
隣国の要塞都市も壊滅状態、この付近一帯のパワーバランスが大きく変わる。
何事も無ければ良いのだが……そんな事はある訳が無い。
ここから離れることも考えなくてはいけないかも知れない、例えがそれがアキトさんにとって別れになるとしても……
私の目的は神殺しなのだ。
そう、神が関わっているという点では今回はチャンスだ。
今回の件には神が一枚噛んでいるどころでは無く、神が主導で行なっているのだろう。
管理システムの分際で生意気な奴等だ。
どうせ理由は大方、大軍同士のぶつかり合いが見たいとかそんなところなのだろう。
そのためにナルタを戦争状態に持ち込ませたが、幸いにもと言うべきか、全面戦争という程でも無かったようだ。
それが不満だったのだろう。
この世界の摂理を全くもって理解していない。
干渉するにしても酷い、あまりに酷すぎる。
最低限世界が崩壊しないところで踏みとどまっているようだが、本当にギリギリだ。
それもどうせオモチャを減らしたくないとか言うそんな理由で、だ。
やはり奴等と転生者は放っておく訳には行かない。
転生者はまだ良い、寿命で死んでくれる、十分に許容範囲内だ。
だから自分も送り込んだ。
『寿命……ですか』
アキトさんは果たしてどの位生きてくれるのだろうか。
寿命的にはほとんど無限と言って差し支えない筈だ。
だが人の精神でそれに耐えられるのか、自分がこの精神構造を持って初めて実感したことがある。
寂しさ、だ。
人は寂しさに弱い、自分だってアキトさんとの会話が少ないとそれだけで寂しいのだ。
そう考えるとアキトさんはすごいのかもしれない、精神構造がまだまだ不安定かつ自我が強くなる思春期という時期に父親との別れを経験しているのだ。
だから状況の飲み込みが早いのかもしれない。
いや、受け入れると言った方が正しいかもしれない。
どちらにせよ人の心というのは難しいものだ。
ただの電気信号や魔力の流れだと言うのにどうしてこうも複雑なものとなるのか。
よくぞここまで複雑になったものだ、やはりこれは魂というものを作ったからなのだろう。
我ながらよくやったと思う。
たった二一グラムの情報と電気信号の絡まりでここまで複雑になるものとは。
今はとにかくアキトさんのサポートをするとしよう。
アキトさんの一番近くに居る、私はそれだけで、とまでは言わないが幸せなのだ。
この気持ちを私は知らなかった、やはり感情という概念を作った過去の私に感謝しなければなるまい。
『アキトさん……』
そう愛しい人の名を呼び、私も眠ろう。
睡眠は久しぶりだ、やはり情報整理の面でも、精神衛生の面でも大切だ。
そしてアキトさんが起きる前に起きて、アキトさんを起こしてあげるのだ。
それも私のささやかな幸せなのだから。
いかがだったでしょうか?
シージアの胸の内でした!
アキト以外の心情も非常に興味深いものですね!
次回投稿は明々後日の三月三十一日とさせていただきます!
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