第七十二話〜思春期の心は一瞬で〜
投下です!
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「シホ先生はいらっしゃいますか?」
銃を作ってからはや一週間と少し、俺は再び王城へと来ていた。
あれからいくつか改良を施し、なんとか実用レベルまで持ってきた。
先ず第一に火薬の大きさの調整だ。
少しずつ火薬の大きさと形を変え、なんとか及第点、といった感じのところまで持っていった。
第二に消炎器、フラッシュハイダーを取り付けた事だ。
消炎器は急激に発射ガスや火薬を冷却して発射炎を消すというものだ。
なのでマズルブレーキと一体にすることによって命中精度の向上を図った。
第三に照準器と二脚を取り付けた。
簡単なものだが照門と照星、わかりやすく言うとアイアンサイトを取り付けたのだ。
これで勘で射撃することも無くなった、まともな銃の一丁上がりと言うわけだ。
それに二脚もつけたのでかなり命中精度は上がったはずだ。
「少しお待ち下さい」
そう言われ待つこと数分、
「おお、どうだい? 銃は出来上がったのかい?」
「はい、満足の行く出来になりました」
「よーし、じゃあ使って貰おうか。私について来い」
そう言われ付いて行く。
かなり外周の方だな、確かこの方向には練兵場があったはずだ。
『いやー、それれにしても連発化は難しいですね』
シージアが唐突に話しかけてきた。
(そうだな、どうやっても弾詰まりが酷かったからな。単発の方が連射速度が早く感じるくらいに故障したからな)
弾倉に使うバネが上手く作れなかったのだ。
撃針に使うバネとは全く違う難易度だった。
構造と素材だけ真似てもどうしても上手く行かなかったのだ。
『やはりベルト式給弾も視野に入れてみますか』
(そうだな……でも構造が複雑化するのがあんまり嬉しくないんだよなぁ)
『ですよね……とりあえずは小口径リボルバーを作ってみましょう』
(そうだな、何かヒントが得られるかもしれないからな。ユウゴから追加の火薬ももらった事だし、作ってみるか)
と、そんな事を話していると、
「到着したぞ」
そこでは弓兵や魔導士達が訓練を行う射的場だった。
かなりの広さがある、その中で数十人の兵士達が訓練を行っていた。
少し視線を横に移すとかなり豪奢な服を着た方々が……もしかして貴族か?
え、ここで撃つのか、なんか緊張するなぁ。
いや、もしかしたら違うかもしれない、ここは聞くしかない。
「ここで撃つんですか?」
「ああ、そうだ。貴族の方々もいる事だし、立身出世のチャンスかもしれんぞ?」
うっそーん。
もし暴発とか失敗でもしたらどうすると言うんだ。
そんな俺の考えを他所にシホ先生は兵士達にスペースを開けてくれと頼みに行っている。
それにしてもやっぱりちっさいな、兵士達よりも頭二つほど小さい。
それであんな地位まで上り詰めたのだからやはり凄い人なのだろう。
あ、シホ先生が手をこっちに振っている。
あれはこっちに来いという意味かな?
シホ先生が手を振っている所へ少し小走りで向かう。
「場所が取れたぞ、早速だがやってくれないか。あ、そうそう、あの兵士達の後ろに立っておられるお方は王族だからな」
「あー、わかりまし……王族様?」
兵士達の後ろに何やら重そうで豪華な服を着た人が居た。
さっきの貴族様じゃないか。
と言うことはあの法皇様の親戚か……
こんな展開はいらないんだよ……輝夜の力のせいか?
って良くみたら横に立ってるのヴァンさんじゃないか!
こちらに気がつくと笑いかけてきた。
目がこ、こえー……
「まあ、頑張ってくれたまえ。狙うのはあの的だ」
そう言って指を向こうの方を指差すシホ先生。
三百メートル程先に金属鎧の的が置いてある。
「……なんか遠くないですか?」
「まあ長距離魔法用の的だからな」
「あれに命中させるんですか?」
「もちろんだ、失敗はしないようにな」
「…………」
なんてこった。
この距離は初めてだぞ、しかも今日は風がある。
大口径だから風の影響は受けにくいが……アイアンサイトでこれを狙うのか。
背中に背負った袋から銃を取り出し、伏射の姿勢を取る。
二脚を立て、ボルトを引いて弾を込める。
「大きい音が鳴るので気をつけて下さい」
「わかった」
そういって周りの兵士達にも伝えるシホ先生。
ありがたい、これでもし王族の方を怒らせて打首とかなったら笑えないからな。
「ふー……」
細く、ゆっくりと呼吸する。
こうすることで息を整え、手ブレを少なくする。
(シージア)
『風速は右斜め前から毎秒二メートルです。ほとんど気にしなくても大丈夫です』
よし、それならいける。
例え初めての距離だろうとこの銃ならいける、自分を信用しろ。
照門に照星を重ね、その先に的を捉え、引き金を真っ直ぐ引く。
撃発
空気を裂く轟音と共にマッハ二・五の弾丸は三百メートルを一秒足らずで駆け抜け、撃ち抜いた。
火花と共に金属製の鎧が大きく破断する。
「……ふう」
なんとか命中した。
当たらなかったらどうしようかと思った。
立ち上がり、一礼すると湧き上がるように拍手が起こった。
なんだか、というか凄く照れ臭い。
「凄い威力じゃないか」
シホ先生が手をパチパチと叩きながらこちらへやってくる。
なんか可愛いな、小動物みたいだ。
「ありがとうございます、上手く行ってよかったですよ」
「ほら、見ろ、あの方も満足そうだぞ」
「そういえばあの人の名前ってなんて言うんですか?」
「ああ、そういえば言ってなかったな。アルベルタル・ラスヴェラリア・ナミラヌ様だ」
いや言いにく過ぎだろ⁉︎
王女様と言いこの国の王族は名前が長すぎないだろうか?
ていうかその名前からして……
「女性の方で?」
「ああ、見てわからんのか」
呆れたように言うシホ先生。
いやそうですけど……あの服だと骨格もわからないし顔も帽子で見えにくいから仕方ないんじゃないですかね?
……あれ? なんか感性が壊れてきた気がする。
普通に考えてもっとしどろもどろになったり、萎縮するだろう。
当然だ、王族が目の前に居るのだから。だが俺はどうだ? 平然としている。
その事に気が付いた瞬間、足元の地面が無くなるような錯覚に陥った。
自分が以前の自分と変わる恐怖、これは、果たして、成長と呼べるのだろうか?
「大丈夫か? 調子が悪そうだぞ?」
「い、いや、なんでもないです。少し緊張しただけです」
シホ先生の声で引き戻された。
だが俺の心の中はまだ曇ったままだった。
「……何かあったら言うんだぞ、今日はもう帰って休め。ナミラヌ様には私の方から伝えておこう」
「ありがとうございます……では」
そう言って歩こうとするが力が入らない、足を出すのが辛い。
ポッと浮かんだ思考が重くのしかかる。
自分が変わる、それがどうしたと言うのだ、人として当然のことだ。
……そうか、俺は人じゃないんだった。
「ふふっ……」
自嘲的な笑いが漏れる、ああ、忘れていた。
そう、俺は人じゃない。
ダメだ、どうしても思考が悪い方へ偏ってしまう。
本当にどうしたと言うのだ、これまでもそんなことはあっただろう。
『どうしたんですか? 大丈夫ですか?』
(シージア、俺、どうしたのかな……自分が以前の自分で無くなるのが怖い)
『……私には』
(いや、やっぱり良い。一人で考えさせてくれ)
『……わかりました、ですが私は貴方の相棒だと言うことを覚えておいて下さい』
お久しぶりです!
リアルの方が一段落着いたので投稿ペースを元に戻そうと思います!
少ししたら今日の話の補足としてもう一話短めの話を投稿しようと思っております!




