第六十話〜隊長〜
投下です!
***
「た、隊長⁉︎ なぜここに⁉︎」
兵士達が一気に静まり返る。
その表情は硬い、やらかしちまった感が半端ない。
「なんだ、俺が来たら悪いのか。まあそれは良いとしてだな、この様子を見るに喧嘩をしていたようだな。人間であるからして喧嘩をするのは仕方がない」
だが、と一息置いて、
「貴様らは普段何をしているんだ! 兵士でもない一般人と侍女の方に手を上げ、あまつさえ一方的にやられるとは、全く嘆かわしい! 明日からは訓練を増量するから覚悟しておけこの愚図共がっ!」
ひえ〜、かわいそうに。
でも俺には関係ないことだ、帰ろう。
抜き足、差し足、忍び足……
「そこの鎧のお方と侍女のお方、どこに行かれるのだ。少し話したいことがある、御同行願いたい」
「あ、はい」
シーニャさんは無言で頷いている。
兵士達は全くの無言のままだった。
食堂を出る時にアンナちゃんを拾って隊長に着いて行く。
そして十分ほど歩き、着いたのは……
「兵舎か?」
「ああそうだ、こっちに来てくれ」
そう言って訓練場に出て兵士達の休憩場所と思われるテーブルに座る。
「失礼します」
シーニャさん、アンナちゃん、俺の順番で席に座ると隊長が切り出した。
「茶の一つも出せずにで申し訳ないが早速本題に入らせてもらおう。気は使わなくても良い、正直に答えてくれ。兵士達は強かったか?」
「さっき俺らが喧嘩した人達ですか?」
「ああそうだ」
ここは正直にいうべきなのだろうか、なんか失礼な気もするし……でもここで言わなかったら逆に失礼、というかこの国のためにもよくないだろう。
「うーん、正直言って……強くは無かったですね」
俺が正直に言うと隊長は、やっぱりか、という風な表情を浮かべた。
その隊長を見てシーニャさんもこう言い出した。
「では僭越ながら私からも。全体的に動きが荒いですね、力任せといった感じです」
「うーん、やはりか……俺もそう思ってたんだがアンタがいうならそうだな」
あれ? 知り合いなの?
全然そんな風には見えなかったんだがな。
「何か理由でもあるんですか?」
「いや、あれは新設大隊なんだが、いかんせん戦時体制急造なもので寄せ集めなんだ。だから練度が他の隊に比べてかなり低いんだ」
「そうでしたか」
なんか勝手に話が進んでるぞ……
忘れてたけどこの国戦争してるんだよな、全然攻めて来てないけど。
まあ要塞群ももぬけの殻だったしどうなってるんだか。
それはそうと聞いておかなければならないことがある。
「あのー、お二人は知り合いなんですか?」
そうするとシーニャさんがハッとした顔をして、
「そうです」
「ああ、彼女の言う通り知り合いだ。俺はゴピナス・ジンだ。今は訳あって第十一大隊の隊長をしている、ジン隊長とでも呼んでくれ」
「俺はアキトです、こちらこそよろしくお願いします」
よろしく頼むと言って手を差し出すジン隊長、その手を握ると剣ダコが感じる、武人の手だった。
するとジン隊長は手をを握ると力をゆっくりと込めてきた、こちらも反射的に握り返すと更に力を強めてきた。
「ど、どうしたんですか?」
ジン隊長はその問いに答えることはなくギリギリと力を強めるばかりだ。
これは……試されてるのか?
それならばこちらもそれに応えるのが礼儀というものだ。
腹筋に力を込めて握り返す、久しぶりの全力に筋肉が軋む。
そろそろ限界が近づいてきた、そう思ったその時。
「ジン隊長、一旦落ち着いて下さい」
シーニャさんが仲裁に入ってくれた。
するとジン隊長はハッとしたような表情で、
「ああ、すまんかったな。アンタの力が強かったからつい、な?」
「あ、ありがとうございます」
「私の方からも謝っておきますね。この人は脳味噌まで筋肉なのです」
「おいおい、ひどいじゃないか」
「だって事実でしょう?」
なんだこの気持ちは。
この二人を見ているとモヤモヤした気持ちが……
「そうそう、ジン隊長から見てアキトさんはどうですか?」
「うーん、そうだな。結構強いんじゃないか? 力も十二分にあるし、身のこなしも悪くはない。だが経験が足りていないと言った感じだな」
おっ、これは中々の高評価かな?
隊長クラスの人に褒められるとは嬉しいな。
シーニャさんを見るとうんうんと満足げに頷いていた、相も変わらず表情が薄いがな。
あと、関係ないけどシーニャさんに膝枕されてるアンナちゃん可愛い。
と、そんなことを考えているとジン隊長が、
「そうだ、明日にでもうちの隊に遊びに来ないか? 歓迎するぞ?」
そうだな、それも良いかもしれない。
「それは困ります、私も用があるのです」
ん? なんだなんだ?
でも今聞くのはあんまり良い判断じゃなさそうだ、後で聞くとしよう。
「それじゃあ遠慮しておくよ、また機会があったらいつでも来てくれ」
「はい、ありがとうございます」
俺はこれで、と言い残し席を立つジン隊長、そのぶ厚い背中を見送る。
そうだ、何の用があるか聞いておかないと。
「シーニャさん、明日は何か?」
アンナちゃんをかけたシーニャさんにそう問いかける。
「はい、手紙を読んだところアキトさんは休暇らしいのでこれを機に鎌を作ってもらおうかな……なんて思ってたりしたんですが、大丈夫ですか?」
手紙? ああ、マーサさんからの手紙か。
それによると俺は休暇をもらった、と。
シーニャさんも休みのようだし本人に立ち会ってもらえるのは心が楽だ。
「はい、全然構いませんよ」
「ありがとうございます」
そう言ったシーニャさんの顔はいつもより心なしか明るく、部屋に戻るときの足取りも軽かったのだった。
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次回投稿は明日の予定です!
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