第五十一話〜泥仕合〜
投下です!
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『十時方向から風魔法と火魔法、来ます!』
突如として馬車の上に飛び出て来た二人組がこちらに杖を向けて魔法を放ってくる。
火炎放射のような合わせ技のようだ、喰らえば火傷はもちろん、窒息する危険性もあるので慌てて回避する。
無詠唱なので気がつくのが遅れた、シージアに感謝しなければ。
『また来ます! 今度は土属性です!』
「くそっ!」
かなりの速度で石礫のようなものが複数飛んでくる。
軌道がバラけているので全ては避けられない。
多少の被弾は覚悟しておかなければ。
「ぐっ!」
数発が鎧に当たったのみだがそれでもかなりの衝撃だ。
魔術師を先に攻撃したいが肝心の攻撃手段が手元に無い。
何か使えるものは━━━━━━━━━━━あるじゃあないか、ちょうど良いものが。
右手の路地に飛び込み、魔法をやり過ごす。
そして手頃な建物の壁を力一杯殴り、壁を崩しレンガを取り出す。
腕にいっぱいにレンガを抱えて飛び出し、力一杯投擲!
「がっ⁉︎」
よし、顎に命中。
このレンガ、中々良いじゃないか。
そのまま続け様に二つ魔術師に向かって投げつける。
一つは外れたがもう一つは顎に当てた方の肩に当たる。
よし、この調子だ。
残りのレンガは六つ、そのまま連続して投げ続ける。
魔法を避けるために、動きながらなので中々当たらない、が問題ない。
一発目に命中した魔法使いは脳震盪でも起こしたのかさっきから狙いが甘い。
それにしてもあいつらの魔力は切れないのだろうか、そろそろ息がしんどいぞ。
酸欠で倒れそうだ、体が重い。
早めに決着をつけないとスタミナ勝負で負けてしまうぞ。
ここで負けるわけにはいかないからな……よし、手持ちのレンガを全部投げ切ったら思い切って接近しよう。
一つを残して魔術師に全て投げつける。
そのうち一つが倒れてない方の腕に命中、もう一人を引きずって馬車の中へ退避した。
今がチャンスだ、接近戦にもつれ込めれば勝機は十分にあるはずだ。
大男が前衛に槍を構えてこちらへ突撃してくる。
互いの距離が縮まる、四メートル、三メートル、二メートル……
今だ!
槍の穂先を腕で跳ね上げ脇の下に潜り込み、
「オラァッ!」
下から渾身の力で跳ね上げ、その勢いのまま地面に叩きつける。
上に俺がのしかかる体勢になったのでかなりのダメージが入ったようで相手は声をあげる間もなく気絶したようだ。
『屋根の上、後ろから来ます!』
振り向くといつの間にか移動した三人組の内の一人が屋根の上から飛び降りてナイフを振り下ろしてくる。
両手に持ったナイフには毒が塗られているのか妙な光沢を帯びている。
怯んだら負けだ、真正面から迎え撃ってやる。
「ラァッ!」
タイミングを合わせた渾身の右フック。
相手はナイフを合わせてきたが受け流しきれずに吹き飛び、壁に激突。
残りの一人はどこに行ったんだ。
「シージア」
『馬車の中にいるようです、中の様子が見えません、気をつけて下さい』
「ああ、わかってる」
大男の槍を拾い、ジリジリと槍を構えて馬車に近づく。
人は待つ時間に恐怖するというが実際その通りだ。
何を仕掛けてくるかわからない、その恐怖も合わさって槍を持つ手に力が入る。
だからといって逃げ帰るなんて論外だ。
ジリジリと馬車との距離を詰める。
よし、馬車まで残り少し……
「アアアアアア!」
馬車の天井の幌を突き破って何かが飛び出して、
「シージア、こ、こいつ、ちょ、ちょーっとだけヤバそうじゃないか?」
『これは……はい、ヤバいですね』
現れたのは異様な魔物だった。
灰色の皮膚に二・五メートル程もある自身の体長を優に超える長い手足。
頭部には目が無く、涙滴のような形状をしており、唇は無く、剥き出しの歯と歯茎の間から唾液が垂れている。
キチキチキチとクリック音を鳴らしながらこちらを伺うように首を左右に振っている。
コイツはかなりヤバそうだぞ……
いかがだったでしょう?
戦闘シーンは書いててたのしいですね。
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