第五十話〜追跡〜
本日二度目の投下です!
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背負いカゴを地面に置き、慌てて誘拐犯を追いかける。
重量物がなくなったので足が軽い。
(次はどっちだ?)
『そこを左です!』
「くそっ!」
地面が石畳なのでうまく足裏が噛まず曲がり辛い!
(どこに逃げてるかわかるか?)
『ちょっと待ってください……見つけました! そのまま進んで三つ目の曲がり角でさっきの大通りに出て右手に外壁まで進んで下さい!』
「了解ッ!」
何度も壁に体を擦りながらもなんとか曲がり切る。
擦られた建物の主が慌てて飛び出て後ろからこちらに何やら叫んでくるが今はそれどころではない。
『見えてきました!』
「どこだ⁉︎」
真っ直ぐな一本道だが見えて来ないぞ。
一体どうなっているんだ。
『右手の建物の屋根の上です!』
見ると夜に溶け込むような黒色のローブを纏った三人組が居た。
そのうち大柄な一人がアンナちゃんらしき女の子を肩に担いでいる。
アンナちゃんはぐったりしている、恐らくなんらかの魔法や薬の類いだろう、いや、その類であって欲しい……
相手はかなり身軽なようだ。
極力戦いたくはないが……それは無理だろう。
それにしても足の速い奴らだ、さっきから全力で走っていると言うのに中々距離が縮まらない。
『外壁の向こうに馬車が停めてあります、恐らくそれに乗って逃げるのでしょう。馬車に乗られたら非常にめんどうなことになると思われます』
(ああ……外壁までの距離は?)
『おおよそ千五百メートルです、このペースなら外壁に着く頃にはニ百メートルに縮まっていますが……もっと急げますか?』
(……ああ)
これでもかなり本気だぞ。
俺も足が特段早いと言うわけではないが人一人を担いだ奴に追いつけないとは不甲斐ない。
それにしても体が重い!
まるで転生したばかりの時のようだ。
『残り一キロです! 差は縮まっています、そのままです!』
息を吸っても吸っても酸素が体に入っている気がしない。
だが止まるわけにはいかない。
ただ足を前に動かすのだ、止まってはいけない。
『あと少しです! 残りの差は百メートル!』
よし、後少しだ。
このまま馬車の車輪を潰してやる!
そう思い、加速しようとすると……
「ぬおっ⁉︎」
黒塗りの槍が突然飛んできた。
それは慌てて避けようとした俺の肩に直撃した。
「グベラァッ⁉︎」
『見にくいですねこれ、夜用のいやらしい武器です。ていうかどこから投げてきたのでしょう……って馬車が出ますよ!』
逃すかッッ!
「オラァッ」
俺の肩の鎧の隙間に刺さった槍を引き抜き、馬車の車輪目掛けて投げつける。
下手をすればアンナちゃんに当たってしまう危険な賭けだが……俺は賭けに勝ったようだ。
槍は地面に当たり、バウンドして車輪に食い込んだ。
馬車の動きが止まる。
今がチャンスだ。
近づこうとすると槍が飛んでくる、だがわかっていれば少し邪魔なだけのただの棒切れだ、なんてことは無い。
槍を勢いそのままに弾き飛ばし、馬車の近づく。
すると誘拐犯が見えてきた。
全員で五人組のようだ。
そのうちの一人が槍を構えている、あいつが槍を投げつけていた奴か。
アンナちゃんを抱えていた野郎だ。
また槍が投げつけられる、さっきと同じだ。
だが焦りからか槍の軌道がブレている、このまま━━━━━━━━━━
『危ないっ! 避けて下さい!』
「ッ⁉︎」
慌てて斜め横に転がって避ける。
外れた槍は道に当たるとパリンッ、と音がしたかと思うと燃え上がった。
よく見るとガラス瓶の破片が散らばっている。
槍に火炎瓶が括り付けてあったようだ。
だから軌道がブレていたのか。
狡猾な奴らだ、気を抜いたらやられてしまう。
久しぶりに本気で戦うしかないようだ。
こんなところで死んでは堪らないが、アンナちゃんを助けないなんていう選択肢はないからな。
シーニャさんにどんな顔を向けたら良いのかわからなくなる。
いかがだったでしょう?
ちょっとやる気が出たので頑張りました。
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