第第四十七話〜旅の揺り籠亭〜
投下です!
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“旅の揺り籠亭”の外観はファンタジー物によく出てくる宿屋そのものだ。
三階建で一階は食堂兼飲み屋、二、三階が宿泊室となっている、とはシーニャさんの談だ。
「じゃあ入りましょうか」
「はい」
旅の揺り籠亭は風貌はいかにも、といった宿屋であるが中は予想よりしっかりとしている。
床は樫の板を使っているようで俺が乗っても軋みもしない。
やはり冒険者や多種族も利用するからだろうか。
「マーサさん、居ますかー?」
シーニャさんが店の奥に呼びかけるが返事は無い、だが。
トテトテトテトテ、と廊下を小さい子がこちらに走ってくる気配。
そして、
「シーニャお姉ちゃん!」
明るい叫び声と共に幼女が飛び出してきたかと思うと、シーニャさんに飛びついた。
シーニャさんはポスッと受け止めるとそのまま抱え上げて抱き締める。
なんだろう、凄く心が和む光景だ。
「久しぶりですね、アンナちゃん」
シーニャさんもニコニコしている、一体どんな関係なのか気になるところだ。
少女の名前はアンナちゃんと言うらしい。
身長は百四十、歳は十歳程か、栗色の長髪が可愛らしい。
というかシーニャさん自体なんでこんなに怖いのか気になる……が今はそうじゃない。
アンネちゃんがシーニャさんの陰に隠れながらこちらをチラチラ覗いているのだ。
「大丈夫ですよ、怖くありません。私のお友達ですよ。体はおっきいですけどね」
そうシーニャさんが言うとおずおずと言った様子で顔をちょこっと覗かせる。
ここで怖がられたらダメだ。なるべくフレンドリーに、怖がらられないようにしなければ!
まずは屈んで視線を合わせて、
「俺はアキトって言うんだ、よろしくね!」
ニッコリと笑いながら言う。
よし、これで第一印象はバッチリのはずだ!
「わたしはアンナです! よろしくお願いします!」
か、可愛い……
なんというかこう、健気な感じが最早泣けてくる。
考えてみれば俺の周りにはマトモな女性が全くと言って良い程存在しなかった。
シーニャさんは良い人だけど怖いし、ルーミラさんとセリナさんはシュンヤにぞっこんラブだし、サナさんとシージアは最早人ですら無いし……
みんな個性強いなぁ……
「アンナちゃん、マーサさんがどこに居るんですか?」
「お母さんなら今は裏で薪割りをしてるよ。こっちだよ!」
そう言って廊下を指差ししながら案内してくれるアンナちゃん。
気が利く良い子だ。
アンナちゃんに連れられ廊下を進む。するとパコーン、パコーン、と薪を割る小気味良い音が聞こえてくる。
そのまま中庭らしき場所に出ると、
「よいしょっ!」
手斧で薪をパカンパカン小気味良く割っている元気なご婦人がいた。
身長はおよそ百六十センチと言ったところか、アンナちゃんと同じ栗色の髪を結い上げている。
こちらに気がつくと額の汗をグッと拭い、
「おおシーニャか、その隣のおっきいのが前言ってた子かい?」
「はい、中々彼は役に立つと思いますよ。力もありますし手先も器用ですからね」
あら、なぜかシーニャさんから俺はかなりの高評価のようだ。
一体全体どうしてだろう。まだ出会ってそこまで経っていないと言うのに。
「そうかい、アンタが言うなら間違いないね。早速ウチで働いてもらおうか」
そう俺の方を向いてニヤッと笑いかけてくるマーサさん。
ザ・頼れる女性と言った感じの女性だな。
期待に応えられるように頑張るとしよう、なぜこんなに期待されているのかはわからんがな。
「よろしくお願いします!」
ピシッと背筋を伸ばし、三十度の角度でお辞儀をする。
もちろん声は張ってだ。
「ふむ、やる気はありそうだね。よろしく頼むよ。わたしはマーサ、この宿の主人さ。こっちは娘のアンナ、是非仲良くしてやってくれ」
こうして俺のバイト? 生活は始まるのであった。
お待たせいたしました。
投稿です。
お正月あたりは休みが多いので結構投稿できると思います!




