第四十二話〜手合わせコワイ〜
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「構えて!」
そう闘技場の管理人兼審判さんが叫ぶ。
場所は変わって王城の闘技場、シュンヤと対峙しているところだ。
シュンヤは抜身の聖剣を構えており、その威圧感は圧倒的なものだ。
致命傷を負った瞬間に治癒魔法が発動するらしく、本気で戦って良いとの事。
こんな魔法があるなら無敵だろ、とか思ったのだがこの王城の立地が特殊なようで、なんでも魔力の流れの真上に建造されているらしく膨大な魔力が使えるようだ。
そのためこの王城は最後の抵抗拠点となる大要塞らしい。
それは今は置いておくとして聖剣の威圧感が半端じゃない。
正直に言うと足が竦みそうだ。
「始めェ!」
そう言って審判さんが旗を振り下ろす。
途端、シュンヤが地を這うような姿勢で切り掛かってくる。
だが反応できない速度ではない。
「おらぁっ!」
聖剣の斬撃に合わせて左足を蹴り出し、その刃を蹴り飛ばす。
するとシュンヤは驚いたように一瞬目を見開いたが流石はチート転生者と言ったところか、返す刃で正確に喉元を狙って剣を突き込んでくる。
それをメイスの柄で横に逸らす。
この聖剣の切れ味は前にシュンヤが使っていた刀ほどではないようだ、ならばそこまで脅威では無いので少し強気に出ても良いだろう。
身体を落としながら前に踏み込む。
シュンヤの体は突きを逸らされたことによってこちらに剣を向けているものの伸びきっており、体勢も悪い。
そこへメイスを突き出す。
だが━━━━━━━━
「ロックウォール!」
突如としてシュンヤの足元から壁が迫り出し、砕かれながらもメイスの速度を減じる。
そのまま構わずメイスを突き出すがシュンヤはもう視界に居ない。
後ろを向くがそこにも居ない、その瞬間首にぞわりとしたものを感じた。
「━━━━━━━━ッ!」
慌てて腰の短剣を鞘から引き抜き後ろに投げつける。
「おっと」
そう後ろから声が聞こえ、キンッと金属同士をぶつける音。
振り返るとシュンヤが剣を振り抜いた姿勢で飛び退さり、何やら魔法を詠唱していた。
「……雷よ、サンダーストライク!」
そうシュンヤが叫ぶと、シュンヤの手が強烈な光を放った。
「くっ……」
ま、眩しい!
今この瞬間にもシュンヤはこちらに近づいているはずだ。
シュンヤがいる方に目は見えないが勘でメイスを投擲、すると重い手応えと共に何かに当たる手応え。
「ぐあぁぁぁ!」
これは当たったか⁉︎
だがそれと同時に腹に重い衝撃、朦朧とする視界で腹部を見ると聖剣が刺さっていた。
衝撃に対して反射的に腹筋を締めたことが功を奏したのかそこまで深くは刺さっていないが痛い、焼けるように痛い、力が入らない。
(シ、シージア、麻酔を頼む……)
『はい、わかりました!』
少しずつ痛みが弱まる。
そして立ち上がるとシュンヤは地面に倒れ込んでいた。
「そこまで!」
あれ、俺の勝ち?
じゃあなんで治癒魔法が発動しないんだ……
『先にシュンヤさんに攻撃が当たったみたいなのでそっちに治癒魔法が使用されたようですね』
ええ……そんなことありかよ……
俺なんて現在進行形で腹に剣が刺さってるんだぜ?
(て言うか鎧、貫通してきたな……)
『流石は聖剣といったところですか。魔物に対しての攻撃力増大は半端じゃ無いですね』
(それにしてもまだなのか……?審判さんもいないし、どこへ行ったんだ?目の前が暗いぞ……)
なんだか徐々に視界が狭まって……
あ、なんか分かるぞ。
これはダメなやつかもしれない。
『非常に不味いですね。まさかこの聖剣の効力がここまでだとは……早く剣を抜いて下さい!貴方の身体が分解されますよ!』
ぶ、分解だと……⁉︎
クソッ!
こんなアホみたいな終わり方……!
こんな笑えないB級映画の脇役みたいな終わり方してたまるか……!
「ぬ、ぬうう……!」
刃を両手で挟み、抜き取ろうとする。
だがガッチリと鎧に食い込んでいて中々抜けない。
あ、これ不味いやつだ……
そう思いつつも俺の視界はどんどん狭まって行き、真っ暗になるその直前、
「アキトさん!」
あれ……シーニャさん?
なんでここに……
俺の意識はそこで途絶えたのだった。
なんとか投稿できました!
さあてさて、ここからどうなってしまうのか!
鎧坂彰人!
次回投稿は十一月十一日とさせていただきます!




