第三十話〜イメージって案外崩れるよね〜
遅れて申し訳ないです……
***
「あ、そこの部品を押さえておいてくれ……そうそう、ありがとう」
「ああ」
そう言ったきり無言の時間が続く。
……うーん、静かだ。
ここは一つ俺から話かけてみるか。
「なあ、サナさんはなんで聖獣としてナルタ神聖王国にいるんだ?」
「気になるか?」
「ああ、そりゃあ気になるさ」
「ならばここは一つ話してやろう」
サナさんの過去か、とても気になるな。
「これは妾がこの世界に来る前の話じゃ」
「この世界に来る前?」
ということはサナさんは転生者なのかな?
でも蜘蛛の魔物っぽいしな……
「ああ、妾はこの世界に来る前は一匹の蜘蛛でとある家で飼われていたのじゃ、というより居候と言った方がいいかの?まあ、それはいいとしてじゃな、五回目の冬のある日、不幸にも妾は事故で片足が一本千切れてしまったのじゃ」
うひゃあ、痛そうだな……
まあ俺も片腕が飛んでる訳だがな。
「そして妾は走って狩りをする蜘蛛じゃった。幸い家の中にいたので寒さで凍え死ぬことは無かった。だがもう狩りは出来ないと本能的に理解していたのじゃ。人間での感情でいうと『諦め』じゃな、そう諦めていたのじゃ」
「そのまま死んだのか?」
「いいや、ここで妾は運命的とも言える出会いを果たしたのじゃ!」
ん?
顔を赤らめて途轍もない熱を孕んだ、どこか倒錯的な笑みを浮かべるサナさん。
なんだか雲行きが怪しくなって来たぞ、蜘蛛だけに。
「死にかけていた妾は、とある少年によって助けられたのじゃ!その少年は動けない妾を優しくそっと拾い上げ、食べ物と柔らかな寝床を与えてくださったのじゃ!」
あ……
これってまさか……
「その少年は妾をサナと名付け、毎日のように世話をしてくれたのじゃ!そして暖かくなった頃に妾を外の世界に放ってくれたのじゃ!」
あれこの少年って……いや、ここで決めつけるのは早計が過ぎるというものだ。
もしかしたら外国人の可能性も……
だがやっぱり……
そんな事を考えている間にもサナさんの話は続く。
「妾はこの時、この少年、ひいては人間に恩返しをしようと誓ったのじゃ!……だが妾は少年に大した恩返しも出来ずにそのまま寿命を迎えてしまったのじゃ」
悲しそうに俯くサナさん、本気で落ち込んでいるようだ。
「じゃが!天は妾にチャンスを与えてくださったのじゃ!この世界に妾の魂を持ってきたのじゃ、そしてこの身体を妾に与えてくださった上に、森まで連れて来てくださったのじゃ!」
『あら、神々にも案外いいところもあるんですね。悪い神ばかりじゃないという事ですね』
(ああ……そうだな)
『どうしたんですか?そんな、なんというか変な顔をして』
(そんなに変な顔か?)
そんなアホな会話をしている間にもサナさんの話は続く。
「妾はこの世界で恩返しをするためには力が必要だと思ったのじゃ、そこで妾は強くなった。言葉でいうほど簡単では無かった。じゃが妾は、『恩返しをする』という一心で強くなった」
凄い執念というかなんというかだなぁ。
「そうして妾は魔獣に襲われている人間がいたらそれを助け、森を彷徨っている風の人間がいたら助け、と言った具合で人間を助け続けた、するとある人間、神官という奴らじゃな、が話しかけてきてな、『困っている人を助けるために私たちの国に来ませんか?』と言ってきたのじゃ」
「人の言葉はわかったのか?」
「ああ、何故か不思議と理解出来たのじゃ」
『恐らく言語理解のスキルですね』
(確かによく考えたら、この二人きりの状況で喋れるってのもおかしいもんな)
『ですね』
「そして、ナルタ王国に聖獣として身を寄せ、そこでシュンヤと出会い、今ここにいるのじゃ」
中々数奇な人生?蜘蛛生?を送って来たんだな……
「ちなみにその少年の名前とか姿はわからないのか?」
「名前はわからぬ、じゃが姿は黒髪に黒い目、ちょうどシュンヤと同じ具合じゃな」
これで外国人という線は消えたな、ということは……
いや、もう少し情報を集めてみよう、外国人でも黒髪で黒い目の人はいるはずだ。
「言葉はどんな言葉だったのかわかるのか?」
「ああ、この身体になった今ならわかる。日本語じゃった、お主にもわかるようにいうと、シュンヤの母国語じゃった」
やっぱり……
(なあシージア)
『どうしたんですか?』
(サナさんが言う少年って多分俺だわ)
『えぇぇぇぇ⁉︎』
(いや、小さい頃に蜘蛛が倒れてるのを助けたことがあったんだよ。真っ黒のアシダカグモだったからよく印象に残ってる)
『ほお〜、これも輝夜ちゃんの運命を司る能力のおかげですかねぇ』
「なあサナさん、もしその少年に出会えたらどうするつもりなんだ?」
「もちろん恩返しじゃ!この身を捧げてでも恩返しをするのじゃ!」
「シュンヤのことやナルタ神聖王国のことはどうするんだ?」
「それはその少年に任せる、少年が妾について来て欲しいといえばついて行こう!」
ん?でもそうなるとシュンヤはどうなるんだ?
これは聞いておかねば。
「シュンヤとは恋人じゃないのか?」
「いや?恋人はあの二人じゃよ?」
ええええええ⁉︎
マジか……てっきりサナさんも恋人だと思い込んでたぞ……
「ああ、少年に会いたいのう……、もし会えたならあんなことやこんな事を……!」
うん、今じゃない。
少なくとも俺がその少年だって事を伝えるのは今じゃない。
『見てくださいよあの目、ちょっとイッちゃってますよ……怖いですね……』
俺の中でサナさんの凛とした、気概のあるしっかりとした女性というイメージがガラガラと音を立てて崩れ落ちるのであった。
あ、当然義手は完成しませんでした。
遅れて非常に申し訳ありません……
言い訳をさせていただくとスマホが壊れてしまいまして外出先で執筆するということができなくなってしまったのです……
次回投稿も遅れる可能性が大きいです……




