第二話~鎧の魔物の転生一日目~
遅くなってすみません……
文才があまり無いもので……
***
『おーい、起きて下さーい』
「ん…」
『早く起きて下さーい!』
「うわっ!びっくりしたじゃないか。突然大声を出すのは止めてくれよ」
心臓に悪いじゃにか。
……あれ? 心臓?
「中身があるのか?」
俺的には空っぽの正になる“鎧だけ”をイメージしていたんだがな。
『はい、それにはちゃんとした理由があります。それはまた話します。なので早く起きて下さい』
「分かったよ。うおっ!?」
俺はそうやって立ち上がろうとして━━━━
ガッシャーン!
地面に倒れてしまった。
「か、身体が思うように動かないぞ!」
『そりゃそうですよ、新しい身体にそんなに簡単に慣れられませんよ』
「そうだ、俺は鎧の魔物に……」
『そうですよー、思い出しましたか』
それにしても本当に動かし辛いな……
でもこの身体に慣れていかないとダメだな。
そう思いつつ自分の身体を見て━━━━━
「え?ちょっとこの鎧ボロ過ぎないか?」
金属特有の光沢など見受けられず、サビが浮いていて……
見るからにみすぼらしい、手入れもされず放置されていた鎧のようだ。
『まあ仕方ないですよ。これから綺麗にしていきましょう』
ここから綺麗になるイメージが浮かばないな。
っと、段々と重心が掴めてきたぞ……
「よし、立てたぞ!」
『それはそれは、鎧にも力を入れるイメージで歩くと良いですよ……で、今からどうしますか?』
「うーん、まずは拠点探しかな」
見た感じここは山っぽいな……だったらほら穴とか雨風を凌げる所があるはずだ。
そこを拠点として行動範囲を広げていこう。
「じゃあとりあえず上の方に行ってみよう」
上の方に行けば一帯を見渡せる場所もあるだろうしな。
『確かに良いですね』
***
「ここら辺とか良いんじゃないか?」
『そうですね、木の根もちゃんとあって、動物が住んでいる形跡も無く、雨風も凌げそうですしね』
「じゃあここを拠点にしよう」
我ながら中々良い場所を見つけたのではないかな?この調子ならロビンソン・クルーソーみたいな感じで順調に行くんじゃないか?
『あのー』
「ん? どうしたんだ、シージア?」
『水はどうするんですか?』
忘れてました、テヘッ!
***
森の中を歩き続けて一時間、水は未だに見つからない
「ハァ、ハァ、一体どこにあるんだ?」
流石に喉が渇いて来たぞ……
『いや、知りませんよ』
そりゃそうだよな……水を探すにはどうしたらいいんだ。
そうだ! 水の流れる音を探せば良いんだ!
よし、耳を澄ませば!
「・・・・・・・・・」
『・・・・・・・・・』
なんにも聞こえて来ない……
「ていうか魔物って水とか食糧とかって必要なのか?今の俺の状態からしたら多分必要なんだと思うけど……」
『もちろん必要ですよ。まさか魔力だけで生きて行けるわけが無いですからね? 水が必要じゃないなら私が水を探そうとか言い出すわけが無いでしょう?』
「全くその通りです……」
『確かにゲームとかだと魔物は魔力だけで生きていけるという設定のものもありますが、この世界では必要です』
「よく考えたら魔物だって生物だもんな」
『その通りです』
などと喋りながら歩いていると━━━━
『あっちで水の流れる音が聞こえませんか?』
ん? どれどれ?
耳を澄ませば微かに水の流れる音が確かに聞こえる。
「お!本当に聞こえるぞ!」
急いで向かわねば!
音のする方向に向けて駆け出す、だが体が重い! この体にまだ慣れていないようだ。
「ハァ、ハァ、体力が……」
だが、ついに、ついにやったぞー!
俺は水を手に入れたんだー!ここまで長かった…
『私が見つけたんですよ?』
「あ、はい、すいません」
そんな茶番は置いといて、水を見つけたのはいいもののさっき見つけた拠点からだいぶ離れた所にあるんだよな
ならこの近くで拠点を探さないといけないな……
だがしかし、その前に一つ問題がある。
「この身体ってどうやって水を飲んだらいいんだ?」
『その顔の所のバイザーを上げたら良いんですよ』
即答された、案外単純な事だったな……
「ほうほう、これか?」
顔のあたりを触っていると鋲があった。
これを軸にしてバイザーが上下するようだ。
『はい、それです』
ん?
「ヤバい、錆び付いていて開かないぞ…」
『そ、そんな事ってあるんですね……』
シージアも予想外だったと言わんばかりの反応だが困る。
いや、割とマジでどうしよう……このまま飲むか、でもそれだとかなり不潔なような気がするしな。
『ちょっと小刻みにクイクイ動かしてみたらどうですか?』
「分かった、ちょっとやってみる」
クイクイ、クイクイ、クイクイ、クイクイ
「心無しか動くようになって来た気がするぞ!これはいける!」
クイクイクイクイクイクイ、カシャン!
「や、やっと開いたぞ!」
『おー、良かったですね』
「これで水を飲める!」
こんなに苦労した上、久しぶりの水、しかも大自然の水なのだからさぞかし美味いのだろう。
期待に胸を膨らませ、川を覗き込むと━━━━━
「うぉっ!?」
『どうしたんですか?』
「お、俺の顔が…」
『ど、どうしたんですか?』
「なんか怖い事になってるんだが……」
『確かにこれは少し……というか怖いですね……』
目が赤くて皮膚が無くて牙まで生えてるなんて……
まるでバ○オハザードのブラッドなショットをまろやかにしたような顔じゃ無いか。
『で、でも普段はバイザーで見えないですし、そんなに気にする事はありませんよ!』
「気にしないなんて出来るか?この顔だぞ、人前に出られ無いじゃないか……」
『まぁ、この先しばらくは人に会うことなんでないでしょうから大丈夫ですよ!しかも貴方、まだこの世界の言葉を覚えてないじゃないですか』
衝撃の事実をさらっと告げられたぞ!?
「ちょっと待ってくれ!こっちの世界の言葉をいつの間にか喋れるようになってた、とかいう事は無いのか?」
『いや、ある訳ないじゃないですか。だって貴方ってチートスキルなんて一つも持ってないじゃないですか』
「え、じゃあ俺は現地人とコミュニケーションを取れないのか?」
じゃあ……
俺「仲良くしようね!」
現地人「●▲■●▲●▲■!(なんだ貴様!)」
俺「え?何て?」
現地人「▲■●▲●■●▲■●■!(怪しいヤツめ!刺し殺してやる!)」
俺「ぎゃあァァァ!?」
みたいになるんじゃないのか……!?
『いや、大丈夫です。なんたってこの私がスパルタで教えてあげますからね!』
「俺、英語の成績とか全然良くなかったんだが……」
『厳しく教えてあげますからね!』
それも心配なんだよなぁ
「それは後で考えるとしてだな、拠点どうしよう……」
『まぁ、川も近いですしなんか動物の巣穴とかあるんじゃないですか?』
「楽観的過ぎるんじゃないか?」
時には楽観的な思考も大切だけどな
『まぁ、とりあえず探してみましょうよ』
「そうだな、グズグズしててもしょうがないか」
そして━━━
「どうするんだ!?全然見つからないぞ!?」
『まさかこんなに見つからないなんて思っても見ませんでしたよ……』
シージアもここまで見つからないのは予想外だったようだ
「ていうか拠点は必要なのか?」
別に野宿でも俺は全然構わないんだが……
『ダメですよ!夜になったら夜行性の動物や魔物が出てくるんですよ!せめて火を起こすか建物の中には入らないと襲われちゃいますよ』
「ええ……マジかよ、じゃあとりあえず火でも起こすか」
とは言ったもののこの状況でどうやって火を起こせばいいのか………
『ちょっと、あれを見てください!』
ん?どれどれ?
「あ、あれは山小屋じゃないか!」
正確には山小屋の廃墟だけど……充分だ!
『これでしばらくは安心出来ますね!』
「良かった、見たところ木造だったからか、かなりボロボロで長い間使われてなかったみたいだけどこんな所に住むなんてな、一体どんな人が住んでたんだろう?」
『こんな辺鄙な森に住んでるなんて余程の理由があったんでしょうね……』
「まぁ、とりあえず今はありがたく使わせて貰おう」
『そうですね、中になにか使えそうな物もあるでしょうしね!』
***
小屋の中に入った俺はそのまま床に座り込む
『大丈夫ですか?』
「ああ、大丈夫だ、少し疲れただけだよ」
しかし今日だけでこんなに疲れるとは……
「あっ!」
『急に叫んで何かでっかい虫でもいたんですか?びっくりしたじゃないですか……』
「水場は見つけたけど、食料の事を忘れてた……」
『あっ』
どうしよう……食べれそうな物がないかとりあえず小屋の中を探してみるか……
『あそこ見て下さい!ウサギっぽいなにかが居ますよ!』
なんか俺の知ってるウサギじゃ無いぞ……
『ここは異世界ですよ?少しの差ぐらいありますよ!』
「い、いやだってなんか毛の代わりに羽毛みたいなのが生えてるんだぞ?どう考えても少しじゃないし一体どんな進化をしたらああなるのか……」
『あれも魔物の一種なのでそんなもんですよ』
「あれも魔物なのか……」
『案外食べれるかもしれませんよ?ウサギ類の魔物は基本的に美味しかったはずです』
「それは良かった……」
そっと気付かれないように後ろから近づいて……飛びつく!
「獲ったどー!」
意外と簡単に獲れたな……
『そんなしょうもないことしてないで早く締めて下さい』
「確か、ウサギの締め方って頚椎を外すんだったか?このウサギに当てはまるのかどうかは知らないけど……」
『あってますけど、貴方なんでそんな事知ってるんですか、ちょっと引きますよ……』
「子供の頃一時期サバイバル生活に憧れてた事があったんだよ、それに結局役に立ったんだから良いんじゃないか?」
『それもそうですね』
シージアも納得してくれたようだ。
『じゃあ早速、締めて下さい!』
悪く思うなよ……
「ふん!」
ゴキッ!
「これで……良し……と、やっぱり見た目が可愛い目の生物を自分の手で殺すというのはあんまり気分のいいものでは無いな……」
『そりゃそうですよ、貴方はもう人では無いんですから、いちいち獲物の見た目なんて気にしていられませんよ』
……そうだな
「気を取り直して皮を剥いで内臓を取り出すか……」
どこかに刃物はないかな……
辺りを見回すがそれっぽいものは無い
「なぁシージア、この身体だと身体とか免疫とかが強くなってるとかいうことは無いのか?」
『今、何気に名前呼びしましたね?』
「別に良いだろ?」
『まぁ、問題ないですけどね』
「それは置いといて、身体は強くなってるのか?」
『まぁ、その鎧を着て普通に動けてる時点でお察しですね』
「なら、そのままで大丈夫かな?」
『えぇ……、マジですか……』
「食べて見なきゃ分からない!いただきます!」
ガブッ!
先ずは太ももに噛み付いてみる
すると……
「ん?案外行けるぞこれ。魔物になったからかな?なんというか肉に臭みが無くて血の味が塩気になって案外食べれるな……」
それに肉本来の味がして美味しいな、そういえば地球にも馬の刺身とかもあるからな
『なら、肉と血だけ食べたらどうですか?』
「そうだな、内臓とかは食べたら病気になりそうだもんな」
『そうですね、それがいいかと思いますよ』
「こんな所で病気に罹ったら笑い事じゃあ済まないからな……」
『内臓は外に捨てたらどうですか?』
「そうだな、食べ終わったら捨ててくるよ」
ふー、食った食った
中々イける味だったな……
「ほいっ!」
でも手がグチャグチャだな……まぁいいや。
「よし、内臓も捨てて来たしそろそろ寝るか」
かなり眠くなってきたしな
『はーい、お休みなさい』
そうして転生一日目は過ぎて行った
どうだったでしょう?
良ければ感想、お願いします!
次回は戦闘回にする予定です。
おそらく1週間程で投稿出来ると思います。(早まるかもしれませんが……)