(人生)初めてのデート
日間ランキング22位です(2/19午前現在)。
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そして土曜日の16時頃。峰岸さんと本屋さんに行く。
なぜこの時間なのかというと部活が終わって、昼ご飯を食べ、余裕をみてからと考えたらしい。
僕は少しきちっとした服を着て、部屋でそわそわしていると、
「あら連ちゃん、珍しいわね。いつもよりきちっとした服を着ているわ」
と藍が言ってきた。
今日は凛が友達と遊びに行っているので、部屋には僕達だけしかいない。
僕はドキッとしながら、
「いや、その、なに? 今日ちょっと出かけるから」
「出かける時だっていつもそこまでお洒落にしないじゃないの」
「ま、まあそうかな?」
「どこに行くの?」
「ほ、本屋さん」
「ふ~ん……」
「……」
「わ、私も一緒に行こうかなーっ」
僕はギクッとした。
それはまずい。藍が峰岸さんと会ってしまう。
「今日は日が悪いから、また今度にしないか?」
「そんなにお洒落してるのに?」
「……」
彼女はじーっと僕の方を見た。僕はつい目線をふいっと反らす。
「なぜ目線を合わさないのよ?」
「いや、その、そんなに見られると恥ずかしいから」
「ふーん」
「……」
「言えないんだ」
「いや、あの……その」
「私達ってその程度の関係なの?」
「……」
「連ちゃん……私辛い……」
「分かった。言うよーーっ」
「……」
「ん? 今笑った?」
「笑ってないわ。続けて」
「実は……」
僕は藍にこれからのことを渋々伝えた。
そしたら驚いた顔をした後、
「ひどいわ、連ちゃん。私の約束を断っといて、峰岸さんとデートするなんて」
「し、仕方ないだろ? あの時はまだ、周りの目を気にしてたんだから」
「そうね。でもあんまりだわ」
「……それにデートっていうより本屋さんに行くだけ……」
「それをデートって言うんです!」
「うっ」
「じゃあ、こうしましょう」
「?」
「明日、私に付き合ってくれたら、許してあげる」
「どこに行くの?」
「それは……明日のお楽しみね」
「分かった。明日な」
「えぇ」
そうこうしていると、15時くらいになったので、家を出た。
僕は予定より20分早く着いたので、先に本屋さんで本を読みながら待っていた。
そしたら、トントンと肩を叩かれ振り返ると峰岸さんだった。
「やぁ、峰岸さん」
「阿坂君早かったのね」
「本屋に行くの楽しみだったから」
「そう。なら良かった」
そして峰岸さんも本を探している。
改めて彼女を見ると、彼女の私服姿に少し驚いた。
上着は白いシャツで、その上に少し明るい色の服を羽織っており、下はベージュの膝まであるスカートだった。
髪も顔を見えるようにして、ツインテールにしていた。
学校では地味にしている彼女だが、今日は可愛らしくアレンジしていた。
僕はついドキッとした。
(待て待て。僕には好きな人がいるんだ。動揺するな)
僕は気持ちを抑えながら、本と彼女をチラチラと交互に見た。
そして僕達は本を選び終え、購入した。
また彼女の提案で外を少し散歩することにした。
「ありがとう。私と本屋に付き合って貰って」
「うんうん。大丈夫だよ」
「何を買ったの?」
「歴史小説だな。『燃える刀』と、『火輪』」
「推理小説は買わなかったんだ」
「うん。最近は歴史小説も読んでるから」
歩きながら小説談義で盛り上がった。やはり彼女と小説の話をするのは楽しい。
「ところで、私の雰囲気どうかな? 髪とか服とか」
「あ、うん……。か、可愛いいよ」
「そっ、ありがとう」
彼女は横から僕をじーっと見てきた。
(こんな可愛いい顔で見られると照れるな)
僕はつい彼女の目線と違う方向を見た。
「そうだ。近くに公園があるんだけど、少し寄ってかない?」
「うん。いいよ」
そして僕達はその公園に行ってベンチに座った。
「公園に行くとか中学生以来だ~」
「高校生になると公園なんて行かないもんね」
「そうそう。よく藍ちゃん達と遊……ゴメン」
「うんうん、大丈夫よ」
「……」
「伊坂さん達とはいつからの仲なの?」
「幼稚園の頃からだけど?」
「私……貴方のことをもっともっと知りたい」
「えっ?」
「時の長さではなかなか伊坂さん達に敵わないけど、私は貴方のことを一番よく理解したい」
彼女は真っ直ぐに僕を見た。
健気で一途で芯の強さを感じた。
(こんなにも献身的に思ってくれる女の子が居て、僕は幸せだな)
けどそれでも、それでも僕は……。
「あのさ、映画は好き?」
「えっ?」
「映画好き?」
「……映画? うーん。最近行かないけど、面白いのあったら見に行くかな」
「今、『遙かなる星空』の実写映画してるの知ってる?」
「そうなんだ。知らなかった」
「もし次空いてる日があったら一緒に行かない?」
「次かぁ……」
「うん」
「じゃあ、来週の土曜日にする?」
「分かったわ。了解」
そして彼女とまたデートの予定を立て、まだお互いの気持ちに隔たりを感じながら駅に向かった。
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