意見の相違
告白された。
人生始めての告白をされる。
嬉しかった。
「ありがとう。嬉しいよ」
しかし……
「ごめん。僕には好きな人がいるんだ」
そう。藍というかけがえのない人が。
「そうなんですか……」
「ごめん。だから、君とは付き合えない」
「分かりました……」
「だから……」
「では、こうしませんか?」
「?」
「貴方の好みのタイプを教えて下さい」
「どうして?」
「頑張って貴方の好みの女性になります」
「成る程」
「そして貴方は私のことを知っていく」
「ふむふむ」
「だからまずはお互いのことを知っていく関係から始めませんか?」
「う~ん」
(悪い条件じゃないが……)
「駄目ですか?」
「いや、駄目じゃないよ」
「それなら……」
「どうしてそこまで君はしたいんだい?」
「それはいつも貴方が読書をしているから……」
「?」
「シンパシーを感じて」
「成る程」
「それに……私の好みのタイプだから」
「……」
それも素直に嬉しかった。こんな地味な僕を好きになってくれる女性がいるなんて。
こんなチャンスは滅多にないかも知れない。
藍の様な理想を追うような恋愛じゃなくて、もっと自分の背丈に合った女子との恋愛を。
「自分によく似ている人と出来るだけ長く一緒にいたいんです」
僕は彼女の言葉にドキッとした。
(よく似ている人と一緒にいたい……か)
「そうだよな。よく似ている人と一緒にいたいよな……」
僕はつい心の声を漏らした。
「そうですよ。自分とあまりにもかけ離れている人との恋愛は大変ですよ」
「かけ離れている……」
「だからたとえそれが地味だとしても、自分とつり合った相手といる方が楽しいですよ」
「……」
「私は芸能人とかを追う恋愛よりも現実的な恋愛がしたいのです」
彼女のその言葉が僕に刺さった。
……つり合った相手といる方が楽しい
……現実的な恋愛
「ど、どうですか?」
「……分かった。いいよ。まずはお互いのことを知っていこう」
「本当ですか? ありがとうございます!!」
そして予鈴が鳴ったので彼女はその場から去って行ったが、僕は本鈴が鳴る直前まで立ち尽くしていた。
部活を終えいつものように藍の部屋で雑談をした。
「それでさ……」
「うんうん」
「……なるわけよ」
「……だよね~」
僕の耳に二人の声があまり聞こえない。
「……ちゃん」
「……ん!」
「……んちゃん!」
「ん?」
「連ちゃん!」
「連!」
僕は二人から呼ばれていることに気づき、はっとした。
「どうしたんだよ、連。ぼーとしてさ」
「連ちゃん、熱でもあるの?」
「あっ、いや大丈夫」
凛はまじまじと、藍は心配そうに僕を見ていた。
「それでさ聞いてくれよ連」
「どうした?」
「ねーさんがさ、また告白されたって」
僕はギクッとしながら、藍の方をまじまじと見た。
「丁重に断ったわよ~!」
「相変わらずモテるなー、ねーさんは」
呵呵と凛は笑った。
「あんただってモテるじゃないのよ!」
「連も見習えよ~。そうでないと女子から告白されないぞーっ」
「連ちゃんはモテないから良いんじゃないの」
「確かにそれはそうね!!」
ははは、ふふふと笑った。
むっと来た僕はつい今日のことを話してしまった。
「ご心配なく。僕だって告白されたことあります」
お菓子を食べる二人の手が止まった。
「いつ!?」
「誰に!?」
「今日……。峰……名前は誰でもいいだろう?」
「……そうか。だから教室に戻って来るの遅かったのね(か)……」
「?」
「ちゃんとその子を断ったのよね(な)!??」
二人の声が珍しくハモった。
「う、うん。断った」
そしたら二人はほっとしているように見えた。
「だよなっ。そりゃそうだよ!」
「連ちゃんには恋愛なんてまだ早いもの……」
「早くないよ、僕だって恋愛したい」
「うっ……」
「連が恋愛ねぇ。そうなんだ」
「……」
「それより連に告白した相手の気がしれないわ」
「どういう意味だ?」
「こんな地味で冴えない男のどこが良いのやら」
「こ、こら凛。そんなこと言っちゃ駄目でしょ!!」
またムッと来て言ってしまった。
「僕にシンパシーを感じたんだと。だからまずはお互いのことを知っていこうという関係になった」
「そ、そんな……」
「何でそうなるのよ!!」
「えっ?」
「なんできっぱり断らなかったのよ!!」
「そうよ、連ちゃん! それじゃあまるで彼女とまだ可能性あるみたいになるじゃない」
「うっ……」
「きっぱり断らないと相手に失礼よ!」
「藍ちゃん……」
「そうよ。ねーさんの言う通りよ」
「このままだと向こうも可能性があると期待をしてしまうわ」
「……」
「ね。連ちゃん。しっかり断りましょう。ねっ?」
「でも……」
……現実的な恋愛をしたいです
「お、お前等には関係ない」
と僕が言って、ちらっと二人を見ると、藍は悲しそうで凛はむくれていた。
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