始めての凛とデート
今日は凛とデートする。
凛と二人きりでデートなんて始めてだな。
なんか変にドキドキするな。
僕は玄関で彼女が来るのを待っていた。
「お待たせー」
「遅い……ぞ!?」
グレーのひらひらの上着に、青のショートパンツを穿いており、鞄の胴は小さいが長いハンドルを肩にかけていた。
相変わらず女らしくお洒落しやがって……。
「ど、どうかな?」
「に、似合っているよ」
「そ、そうか」
ふと藍が気になって、僕の部屋の方を見上げると、ガラス越しに藍がこっちをじとーっと見ていた。
なんだろ。この威圧感は……。
「凛。さっさと行こうぜ」
「え? あっ、うん」
こうしてひとまず歩いた。
「どこに行くんだ?」
「いきなり行くことに決めたからあんまり予定を考えてなかった」
「おいおい。頼むよ」
「うるさい。少し待てって」
凛はいつになく真剣に考えていた。
「まずはバッティングセンターだな」
「ここから近い所っていうと?」
「電車で二駅先だ」
「そうか」
「じゃあ行こう」
「待て待て。最寄りの駅までなら自転車の方が早くないか?」
「そうだな」
一度家に帰って、自転車で駅に向かって、二駅先の駅に降りた。
「お前とこういう場所に来たのは意外と少ないよな」
「そうだな」
「友達とはよく来るのか?」
「うん」
「僕はスポーツあまり得意じゃないから、まずは凛のを見せてくれないか?」
「分かった」
こうして凛のバッティングを見た。流石はスポーツ万能。
ほとんどホームランばかりだった。
「おお。凄いなあ。凛」
「えへへ。そうか?」
「少し僕もやってみるか」
「あっ、ここは時速50kmのボールのバッティングマシーンがあるからそっちで打たないか?」
「そうだな。まずはそこからにするか」
そしてやってみたが、上手く当たらない。
「連。へっぴり腰になってるぞっ」
「え? 本当?」
「あぁ、もう少し腰を入れてこうだよ」
「こうか?」
「違う。こう」
ぐいっと凛が僕の腰の辺りを触って、フォームの矯正し、
「胸は張ってこう」
ぐいっと上半身を矯正するから背中に凛の胸が当たる。
「あの凛さん……」
「何?」
「胸が当たってるんですが……」
「あ! 馬鹿!」
「わっ!」
凛は前に僕を飛ばしたから、危うくボールが当たるところだった。
「ゴメン。連……」
凛が珍しく落ち込んだ。
「別にボールが当たってないから大丈夫だよ」
「でも……」
「とにかく次行こうぜ」
「! そうだな。次は~、飯にしないか? 予定を考えるのに丁度良い」
「分かった。どこ行く?」
「連もちっとは考えてくれよー」
「僕はこの辺詳しくないからさ」
「もう」
「済まない」
「そうだ。近くに豚カツ屋さんがあるからそこに行こう」
「美味しいの?」
「味は保証するぜ」
こうして僕達は豚カツ屋に行って早めの昼ご飯を食べた。
味はなかなか専門店らしくこだわっていた。外はサクサク、中身はジューシーだった。
「美味しかったよ。凛」
「そうか。それは良かった」
「次はカラオケ行かないか?」
「え? うん。別に構わないよ」
「近くのカラオケ屋は……と、ここだな」
こうしてカラオケを歌いに行った。
二人でカラオケも新鮮というか違和感があった。いつも藍と凛がデュエットして、僕がタンバリンを叩く感じだが、今回は違う。普通に歌って、普通に盛り上げるだけだった。
「なんか盛り上がりに欠けるな」
「凛も思うか?」
「うん。いつも三人で行動するから」
「……そうだな」
「次はサイクリングしよう」
「サイクリング……デート?」
「そ。サイクリングデート。自転車で行ける範囲で地元を巡る」
「成る程。そういうのもありだな」
「私は運動、連は観光」
「おう」
そうして僕達は最寄りの駅に戻り、地元をサイクリングした。
地元に住んでいると意識して見ないから、意外と気づかない場所があったりするな。
「どうだ? なんかあるか?」
「うーん。あっ、ここに店屋が出来てる」
「どこどこ?」
「あそこ。クレープ屋」
「あ、本当だ」
「一緒に食べるか?」
「え? うん」
僕は小倉クレープ、凛はチョコバナナを頼んだ。
「うーん、美味しい」
「美味しいな」
「うん」
ここには藍も連れて行きたいな。
「あのさ、連」
「どうした?」
「ここにねーさんを連れて行きたくないか」
「僕も同じ事思っていた。次は三人で来よう」
「そうだな!」
「後はどうする?」
「うーん。まだ考えれてない」
「藍ちゃんにお土産買って帰るか?」
「ねーさんに?」
「あぁ」
「……そうだな。そうしよう」
藍が好きなイチゴチョコを買って帰った。
「これで今日のデートは十分じゃないか?」
「うん。そうだな」
「じゃあ帰るか」
「どうだった? 今日のデートは」
「ん? 楽しかったよ」
「そか……」
「二人だけだから楽しめたり、何かが見つかる展開ってあるんだなぁと思った」
「例えば?」
「バッティングセンター然り。サイクリングでクレープ屋然り」
「成る程」
「こういう展開になるのは凛とならではだよ」
「そうだな! 楽しめて良かったよ」
二人だけで遊んだことないから気づかなかったが、凛と遊ぶのも意外と楽しかった。
けど藍もいたらと考えてしまうのは姉妹や幼馴染みだからかもしれない。
三人でいたら楽しいと思ってしまう。
しかしいつまでも三人で一緒に遊べるはずがない。
三人の内誰かが家庭を持ったら、そういう訳にもいかなくなるのだから。
僕は三人でいられない未来に少し寂しさを感じながら、藍が待っている家に凛と一緒に帰った。
もう夏になるというのに、夕方に吹いた風はまだ肌寒かった。
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