藍の異変
峰岸さんにlineを送って、学校での昼休みのご飯を週に三回となるように承諾を得た。
水曜日の朝。
三人で登校していると、凛が僕に聞いてきた。
「ねぇ。今日の昼休み、連はどっちと食べるんだ?」
「え?」
「確かにそこまでは決めてなかったわね」
「私か?」
「私よね」
「いや私だね」
「いやいや私よ」
「昼休みの時間まで考えとく」
そして昼休み。僕が鞄から弁当を取り出していると、二人がドドドと競り合いながら来た。
「さぁ連ちゃん(連)! どっち!?」
最近シンクロ率が高いな~。
「まぁ、まずは藍ちゃんと食べるよ」
藍は嬉しそうにガッツポーズをし、凛は落胆して俯いた。
こいつらどんだけ僕と一緒に食べたいんだ?
そして弁当を開けようとしたら、藍は、ちょっと待ってと制止させた。
「ちょっと付いてきて」
僕は藍の後ろを付いていった。そしたらあまりひとけのない場所だった。
「あまり景色はよくないけどここで食べましょ」
「え、うん」
「また眺めの良い風景を探しとくから」
「分かった」
こうしてご飯を食べながら、二人で喋り合った。
好きな人と一緒に過ごす。
ただそれだけが例え小さなことだとしても、幸せな一時だ。
「もう連ちゃんたら。口の横にご飯付いてるわよ」
「えっ、どこ?」
「取ってあげる」
藍は嬉しそうにそのご飯を取って食べた。
僕はついドキッとした。
僕の口の横に付いていたご飯を食べるなんて。
そんなことするってことは僕のこと好きなのかな。
けど……それは多分……男としてじゃなくて……。
「なぁ、藍ちゃん」
「ん? 何?」
「僕は藍ちゃんと一緒にご飯を食べれて楽しいよ」
「!」
「やっぱり僕は……」
「……」
「君の様な幼馴染みを持って幸せと思うな~」
「……」
僕は笑いながら藍を見ると、彼女は複雑な顔をしていた。嬉しい様で、哀しそうな顔だった。
一体どんな気持ちなのか読み取れない……。
「私も連ちゃんといるのは楽しいよ」
「うん」
「けど……私は……」
「私は?」
「私は……」
「?」
「……いや、何でもない」
「ん? そう?」
「それより連ちゃんにとって幼馴染みとして……だけ?」
「えっ?」
「私は幼馴染みとしてだけ幸せなの?」
体を寄せて、そこにはぐいぐい来た。
え? え? ちょっと待って。僕に一体何を言わせる気だ?
「それは~……」
「それは?」
彼女の目はいつになく真剣だった。じーっと僕の顔を見る。
参ったなぁ。正直に言うべきか? そうだな。どうせ嘘はバレるし。
「幼馴染みとしてだけじゃ……」
その時予鈴が鳴った。一応時間を確認すると、後5分で授業が始まる。
「もう時間だ。そろそろ教室に戻らないと」
「分かったわ……」
そして僕達は教室に戻っていった。
放課後。僕はふと藍の方を見ると、グループ仲間と楽しく話していたが、皆どこかぎこちないように見えた。
僕はこの時、まだ気づいていなかった。
まさかこういう事態になっていたとは。
木曜日の昼休みはいつものように峰岸さんと学食で食べる。
「映画楽しみだね」
「うんうん」
「映画の後どこ行く?」
「うーん。僕はあまり女子とどっかに行かないからさぁ」
「伊坂さん達とはどこに行くの?」
「えっとー」
「遠慮しなくていいから」
「カラオケとかかな?」
「他には?」
「ボウリ……いや、そう言えば、神社や仏閣に行けてないな」
「神社仏閣?」
「僕、神社仏閣好きなんだ」
「そうなんだ。例えば」
「伏見稲荷とか、鹿苑寺金閣とか」
「京都が多いわね」
「あ、いや地元の神社仏閣でも大丈夫だよ。流石に地元で有名なところだけど」
「なら映画見に行った後、神社に行く?」
「えっ? いいの?」
「良いわよ」
「ありがとう」
こうしてこの土曜日のデートプランは立った。
そして教室に戻ると、凛は楽しそうに友達と話していたが、藍の方のその関係はどこか不安定で頼りない感じだ。
部活終わり。家に帰ると、藍はいつものように勉強をしていたが、なんか凄い集中していた。
近づいて見ても全然反応しない。
少々驚かしてやろう。
「わっ!!」
「キャッ」
大きい声を出したら、やっと反応した。
「どうした? 藍ちゃんいやに集中しているな。模試近いの?」
「え、いや、そんなことないけど……」
ん、なんか少し元気がないな。
「どうしたの? 藍ちゃん。何かあった?」
「えっ? いや、なんにもないわ!」
彼女は少し強い口調で言って、また勉強に集中した。
しばらくすると、たっだいまーと凛が帰って来た。
「凛ちょっと」
「な、なんだよ?」
凛を部屋の外に呼び出た。昔から双子だからか、感情面はよく似ている。どちらかの気持ちが気になることがあったら、もう片方にその内容を聞いている。
「藍ちゃんなんか元気がないぞ。何かあったのか?」
「私も気になっていたんだ」
「そうか。何かあったか分かるか?」
「うーん。分からん!」
こいつは相変わらず馬鹿だ。全く頼りにならないな。
仕方ない自分の力でなんとかするか。僕だけでも藍の力にならないと。
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