伊坂姉妹と峰岸さん
僕の名は阿坂連。何処にでもいる普通の高校生だ。
そして僕には自慢の二人の幼馴染みがいる。
伊坂藍、凛姉妹だ。
彼女達は一卵性双生児で、僕の幼稚園からの同級生。ついでに今も同じクラスだ。
また、よく伊坂家に行ってはよく遊んでいた。
元々僕達の母親同士が仲が良く、その繋がりというのもある。
彼女達はうちの高校の学年トップに君臨する美少女で、いつも藍か凛で学校のファン達はどっちが学年一なのかを争うほどだ。
藍は成績優秀で、凛は総体に行くほどスポーツ万能。
外見はほとんどそっくりで目はぱっちりして鼻はすっと伸びている。簡単な見分け方として藍は髪が背中まであり、凛はショートヘアーである。
髪を逆にされると見た目では素人にはもう分からない。僕はその微妙に違うのがなんとなく分かる。誤差の範囲だが凛の方が少し丸顔である。
そして内面は全然違う。好きな物はよく似ているが、藍は優しく、お淑やかだが、細かいところを気にする。凛は快活で、ムードメーカだが、結構雑である。
この二人を幼馴染みとして好きだと思っていたが、中学2年の時から藍の方だけ異性として意識してしまった。
だから僕は藍の方を好きになっていたのだ。
しかし……。
(僕と藍ではつり合わないな)
と心の中で思う。
子供の頃は思わなかったが、中高と集団行動すれば分かる。
やはりスクールカーストは存在する。
先輩後輩とはまた違った上下関係があるのだ。
そして僕はスクールカーストでいうところの中の下。つまり地味系だ。勉強並、スポーツも並。顔も並。
一方、藍はスクールカースト上位にいる。スポーツは少し苦手そうであるが……。
スクールカースト内の集合体で人々は関わり合う。なかなかその外、集団外では関わるのは稀である。
日本の集団行動の闇だな。
そして藍のグループは勉強出来る男女グループ、凛のグループはスポーツが出来、明るくてイケメン、美女のグループだ。
僕? 僕は地味系、いや素朴系同士のグループだ。今席に座って考え事をしている。
友達? 勿論居るよ。居るけど、今は一人で居たいので近くには居ない。
まず彼女達とはグループ構成が違うのだ。
だから僕は普通の恋愛をしようと思う。そして普通に働き、普通に結婚する。
社会もトップに行かなくて良い。普通が一番。普通さいこー。
僕は自分の席に座って、そう一人で考え事をしていると、藍と凛と目が合う。
二人は小さく僕に手を振る。だから僕も小さく両手でそれぞれ振る。
そして授業が終わり、部活が終わると3人で集まる場所がある。
そう伊坂家だ。今日も藍の部屋で集まってお菓子とジュースを飲む。
「あー、疲れる~」
「本当にね」
「……」
「学校も楽しいんだけどさぁ、やっぱり他人じゃん。気を遣うのよねー」
「本当そうよね。話し相手がいて楽しんだけどねぇ」
「……」
「何黙ってるのよ、連!?」
「そうよ、連ちゃん。何か話そうよ」
「え? あっ、うん」
「学校じゃあ、あんたと話せないからさぁ」
「そうよね~。グループ同士の空気の壁って言うの?」
「まぁな」
「そう言えばさぁ、次はサッカー部の山瀬君に告白されてさ」
「また~? けど私も宮中君に告白されて」
「よく知らない奴と付き合う訳ねーべ」
「ちゃんと丁重にお断りした?」
「当たり前よ。それよりねーさんはどうなの? もしかして付き合うの??」
凛はニヤニヤして藍の方を見る。僕はドキドキしながら藍を見る。
「まさかっ。断ったわよ」
「なんで二人とも付き合わないんだ?」
そしてつい僕は素朴な疑問を二人にぶつけてしまった。ギクッとした風に見えて、
「あ、あんたには関係ないわ」
凛は目を反らしながらしどろもどろに言い、
「連ちゃん。あんまり大人の世界に入っちゃダメよ」
と藍には子供扱いされる。凛はどうでも良いが、藍に好きな人がいたらどうしようと思う。
「まっ、あんたには気を遣わなくていいから気が楽なんだけどね」
「うん。連ちゃんといるとホッとするよねー」
そう言ってくれるのは嬉しいが、男として見られてなさそうで辛い。
「僕も素で落ち着けて、静かにいられるのは女子では二人くらいだよ」
そして二人は赤面して俯いた。
「それよりさー、久しぶりに3人でこの土曜日に昼ご飯食べに行かない?」
「いいよ~。連は?」
「僕? 僕はいいよ。外に食べに行くの」
「連ちゃん。外に行くのいつも断るね」
「そうだよ。どうしたのさーっ?」
広い市内とは言え、知り合いに会う可能性がある。二人と一緒に歩いて、学校で噂されたら、二人は学校でどうなる? それに僕が変な形で目立つのは嫌だ。また中学みたいに……。
ブルブルと顔を横に振り、
「藍ちゃんの部屋でいるのが、一番落ち着けるからそれでいいよ」
「本当~?」
「……」
藍は満更でもなさそうに反応した。凛は拗ねているように見えた。
そして色々話をして、僕は自宅に帰った。
「お帰り~。今日も優ちゃんところ?」
「うん」
優ちゃんとは藍、凛姉妹のお母さん。つまり僕の母の友達だ。
「そっ。夕ご飯出来てるからね~」
「は~い」
といつもの一日を迎えた。今日までは……。
次の日。
僕の靴箱に手紙が入っていた。
何だろうと思い見ると、ハートマークのシールだからラブレターと思った。
僕はドキドキした。トイレに隠れて見ると、
『好きです。昼休み。体育館裏に来られたし。』
と書いていた。ラブレターだった。
僕は心の中で、
(藍かな? 藍からかな?)
無いとは思いながらも、淡い期待を胸を躍らせた。
そして昼休み。体育館裏に待っていると、一人の少女が立っていた。
同じクラスの女子。峰岸さんだった。
(藍じゃなかった~……)
少しショックだった。
峰岸さんは地味というか、いわゆる素朴女子で、いつも本を読んでいる印象だった。
そして改めて顔を見てみると二人ほどではないが、
(可愛い顔立ちだな)
と思った。
「ど、どうしたの? 峰岸さん」
「あ、私のこと知っているんですね。ありがとうございます」
「まぁ、同じクラスだから」
「あの、阿坂君」
「はい」
「貴方のことが好きです。付き合って下さい」
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