表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

夢の先にあったもの

作者: 長瀬 俊

僕は小学校の時にお婆ちゃんの家にあったフォークギターを見つけた。

「ねぇお婆ちゃん、このギターってなんでこんな良い音がするの?」

「木が良いからだよ。欲しかったらあげようか?」

「え、いいの?」

僕は飛び上がって喜んだ。それから毎日毎日ギターの練習に明け暮れた。とにかくただただ楽しかった。

小学校の文化祭で1日限りのバンドを組んで舞台の上で歌ったんだけど、正直言って下手くそだった。母が録画してくれたけど、恥ずかしくて見れなかった。


高校生になって、周りにギターやバンドをやってる人がいなかった。だから一人でよくバラードの曲を弾いてたっけな。


大学に入るとさすがにバンドサークルみたいなものがあって、何の迷いも無く入った。そこでは、みんな僕と同じように音楽が好きな奴らばかりで、毎日毎日歌を歌ってギターを弾いて時間を潰した。


卒業の時、すっごい迷った。就職するか、このまま音楽で食べていくか。

「音楽で食べていける程、この世の中は甘くないよ!就職しなさい」

と、毎日母に言われてた。それでも歌が好きだった。

「3年。お願い3年だけ音楽やらせて?それで結果が出なかったら普通の仕事につくから」

母と3年間の約束でなんとか音楽を続けられた。


毎日歌を作って、ライブハウスで演奏した。なんて気持ち良いんだろうと思っていたが、インディーズバンドで名も売れてないバンドマンには給料なんてなくて、皆バイトで忙しかった。


約束の3年が経とうとしていたその時、インディーズレーベルから声がかかった。

「君たち、CD出してみないか?」

僕たちは飛び上がって喜んだ。

「俺たち、歌手になれる!みんな宴会だー!」

なんて言いながら最高の瞬間だった。


インディーズレーベルでCDを出し、売れ行きはそこそこだった。こんなんじゃ食べていけない。そんなこんなで、年齢は30歳になろうとしていた。


周りの目が冷たくて、それでも好きだから続けられた。


「なぁ、俺30歳になったらバンドやめるわ」

一人のメンバーが言い出した。

「俺たちまだ夢の途中なんだぞ?今諦めたら一生後悔すんだぞ?」

「わかってる、そんなことわかってる。けどこのまま続けてメジャーデビューして食っていけると思うか?ここまでやってきて、どれだけ厳しいかわかっただろ?」

「それでも、俺たちじゃなきゃ作れない音楽があるだろ?一人もかけちゃダメなんだって!」

「、、、。」

一人が辞めた。

そして、次々と辞めていった。

「もう、解散しよう。。」

ばっかじゃねーの。何のために今までやってきたんだよ。

僕にはこれしかなかった。

好きなこと、やりたいことが音楽しかなかった。


「じゃあ最後にお願いがある。20代最後にみんなで解散ライブしよう!それで全て終わりにする!家族とか友達とかみんな呼んで楽しく思いっきりやろう!」


解散ライブが開催された。

それは本当に音楽が好きな奴らが奏でる最後のライブ。

全ての曲に震えた。

涙が止まらなかった。


本当に好きなことをやって、

大好きな奴らと歌を歌って、

解散した。


ばかだなー。結局なーんにも手に入らなかった。

何にも。

母さん、ごめん。

でもね、すっげー幸せだった。

皆ありがとう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ